千葉で日本初のエアレース、史上最大12万人の有料観客を動員
アジア初の日本人パイロットは最速タイムで健闘
[2015.06.22] 他の言語で読む : ENGLISH |

「レッドブル・エアレース」、日本上陸

「飛行機は美しく呪われた夢だ。」——スタジオ・ジブリの宮崎駿監督は引退作「風立ちぬ」の中で戦争に翻弄される航空機設計者にこう語らせた。5月中旬、そんな飛行機好きたちの屈折した思いを豪快に吹き飛ばす最高時速350kmの民間機による航空レースが初めて日本で開催された。

「空のF1」とも、「最速のモーターエンジンスポーツ」とも言われるプロペラ機による3次元スピードレース「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ2015千葉大会」は5月16、17の両日、千葉市の幕張海浜公園で行われ、11カ国14人のパイロットが出場。アジア人レースパイロット第1号として初の自国開催大会に出場した室屋義秀(Muroya Yoshihide)は第1戦で大会最速タイム50秒779を出すなど健闘したが決勝進出はならず、英国のポール・ボノム (Paul Bonhomme)がチャンピオンシップ第1戦のアブダビ大会(アラブ首長国連邦=UAE)に続き連勝した。

日本民間航空発祥の地

「空の妙技、6万人魅了」(朝日新聞)、「迫力満点」(毎日新聞)、「世界最高の飛行技術を持つレースパイロットたちが、最高時速370km・最大重力加速度10Gの中、操縦技術の高さをタイムで競う」(NHK)

国際航空連盟公認の同大会に2日間で動員された有料観客数は延べ12万人と同レース史上最大、取材に詰め掛けた内外報道陣は約300人に及び、日本の新聞、雑誌、テレビからインターネットの情報サイトまでが大々的に報道した。会場では室屋選手をはじめ世界一流のパイロットたちを声援する歓声が響き渡り、大きな盛り上がりをみせた。興業、パブリシティの両面で大きな成功を収めたため、エアレース運営側からは「会場として千葉は最適だった。来年もぜひこちらで開催したい」と早々にラブコール。主催した現地実行委も「開催に向けて調整中」(関係者)と継続開催に前向きな姿勢を示している。

2日間で延べ12万人を動員し盛り上がった千葉市幕張海浜公園の観客たち(提供・Red Bull Japan)

同エアレースは飲料メーカーのレッドブルが米ラスベガス、英アスコットなど世界各地で展開している単発機によるスピードレースで2003年に前身となるワールドシリーズがスタート。安全性向上のため2011~13年は中断したが、今年で10回を数える。チャンピオンシップは年間に行われる全大会(今年は8戦)の総合成績で覇者が決まる。

エアレース運営側によると、①千葉市は日本の民間航空の発祥地であり歴史がある、②長い人工海浜に面した千葉会場の地形、③首都に近く集客できる――などが千葉開催のメリットという。

開催地は「水上、地上や地形を問わず世界有数の美しい風景が背景」とされるが、パイロットたちは「高温や強風、嵐などさまざまな気候との戦い」が強いられ、今回の千葉でも台風の接近でトレーニングセッションが2日間中止となるハプニングがあった。

1000分の1秒の勝負

競技はスタート地点からゴールまで約4kmのコースを高さわずか25mの「パイロン」と呼ばれるチェックポイントを通過しながら高度、ポイント通過時の飛行姿勢などを守りながら最速で飛行する技を競う。搭乗する機体には安全確保のため指定機種を使用し重量などの制限を守ることが求められ、その枠内で改造・調整を施した愛機を操縦するパイロットには1000分の1秒台での反応を競い合うテクニックが要求される。

室屋選手は決勝第1戦で、予選6位のマルティン・ソンカ(Martin Sonka)選手(チェコ)に勝利した。続く第2戦のボノムが第1回大会の優勝者という強敵だったこともあり、今大会で初めて搭乗する新型機「EDGE 540 V3」のパワーを抑えきれずG(重力加速度)オーバーで失格となった。しかし、決勝第1戦のタイムは予選を1秒半縮め優勝者をも上回る50秒779と千葉大会最速記録だった。

同大会アジア人パイロット第1号として母国開催のエアレースに出場した室屋選手(提供・Red Bull Japan)

室屋選手は参戦4年目だがこれまでのところ最高年間総合順位は9位とパッとしなかった。3位以内の表彰台も1回のみにとどまってきたが、千葉大会に続く3戦目のロヴィニ大会(クロアチア)でも予選2位の好タイムを記録、今後の飛躍が期待されている。

アジアに広がりゆく裾野

エアレースの選手は多くが空軍出身者や曲技飛行のプロたち。室屋に続くアジア系パイロットとして「マレーシア空軍のトップガン」とされるハリム・オスマン(Halim Othman)がチャンピオンシップの育成大会に当たるチャレンジャーカップに参戦し、アジアの裾野が広がりつつある。

アジア開催は2014年5月のマレーシア・プトラジャヤ(Putrajaya)が皮切りで、同年には中国上海での開催も公表されたが直前にストップがかかり流れた経緯がある。今回の千葉は日本最長の人工ビーチ幕張海浜公園と千葉マリンスタジアム、海岸周辺に広がる高層マンションという首都圏の都会的な景色を背景として熱戦が繰り広げられた。

執筆=nippon.com編集部・三木 孝治郎

カバー写真=海岸沿いに建ち並ぶマンションをバックにスモークを出しながら飛行する室屋選手の単発機(提供・Red Bull Japan)

  • [2015.06.22]
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