ウォシュレット4000万台突破:“清潔な”日本社会の象徴
[2015.10.13] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | ESPAÑOL | Русский |

日本の生活様式を変えた「温水洗浄便座」

温水洗浄便座の日本での普及は、不浄とされたトイレ(便所)のイメージを一変させ、今や「清潔な」日本社会の象徴として世界にも知られるようになった。その代表ともいうべきTOTO「ウォシュレット」の累計出荷数が、2015年7月に4000万台を突破した。日本人の生活を変えた大ヒット商品といわれている。

「清潔感」とは、単に衛生管理が行き届いているというだけでなく,文化観や公徳心とも結びつくもので、日本の良さとして挙げられる「治安の良さ」、「礼儀正しさ」、「マナーの順守」などと並ぶライフスタイルの重要な要素となっている。

中国人観光客にとって、「日本で買いたい商品」の上位に挙がる温水洗浄便座。日本人もこの現象に驚き、ジャーナリストの中島恵氏による『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか? 「ニッポン大好き」の秘密を解く』(中公新書ラクレ)が出版されるなど、話題となった。

原型は1960年代に米国で開発

温水洗浄便座の原型は、米国で病院や福祉施設向けに開発された「ウォッシュエアシート」やスイスの製品で、日本の衛生陶器メーカー「TOTO」(旧東洋陶器)と「LIXIL」(旧伊奈製陶)が輸入販売を行っていた。その後、両社は独自に研究を進め、製品の国産化に成功。TOTOの「ウォシュレット」は、初代の製品が1980年に発売された。

しかし、すぐにヒット商品になったわけではない。転機は1982年。人気女優を起用し、「お尻だって洗ってほしい」とキャッチコピーを付けたテレビCMが当たり、社会の認知が進んだ。

思いやり、エコ対策など重ねて「機械遺産」認定

便座に座り、用を足した後にスイッチを入れると、便器座の奥からノズルが伸び、温水シャワーがお尻を洗ってくれる。ノズルの位置やシャワーの強弱、お湯の温度なども調節可能。お尻の乾燥、トイレ内の脱臭もしてくれる。さらに最近では、除菌成分を含む水で、便器やノズルを除菌できる製品もある。

「ウォシュレット」は、トイレを快適なプライベート空間に変化させるとともに、清潔さだけでなく、便座のふたの自動開閉といった利用者への「思いやり」、 節水機能の強化によるエコロジーの徹底など様々な工夫を重ねて、年々進化を続けている。米国の人気女性歌手マドンナが2005年に来日した際、日本の暖かい便座に驚き、感動したという話は有名だ。

日本機械学会は2012年7月、初代「ウォシュレットG」を日本の機械技術で歴史的意義のある「機械遺産」と認定した。青函連絡船や新幹線0系車両、オムロンの自動改札機などと並び、“社会を変えた”製品に仲間入りした。

家庭普及率は驚異の77% 課題は海外拡販

内閣府の主要耐久消費財の普及率調査(2015年3月)によると、日本国内における温水洗浄便座の普及率は77.5%にまで達した。家庭だけでなく、日本では商業施設や空港、ホールなどの公共施設にも当たり前のように設置されている。TOTOのウォシュレットの場合、累計販売台数が1千万台を突破したのは発売から18年目の1998年だったが、その後の普及、浸透ぶりは加速し、35年目に4千万台に達した。

普及の背景には、清潔好きな国民性もあるが、水道水をトイレにも使用できる日本の恵まれた水環境がある。ウォシュレットの場合、価格は1台7万円前後からで、既存のトイレにも後付けで設置できる。一体型では30万円を超える製品もある。

今後の課題は、日本の看板商品となった「温水洗浄便座」の海外展開、販売拡充だ。海外での販売実績は、まだ国内の1割程度とみられている。

成田空港に登場した“体感型トイレ空間”

日本の空の玄関、成田空港に2015年春、外国人に向けた“ショーウィンドー”ともいえる体感型トイレ空間「GALLERY TOTO」がお目見えした。第2旅客ターミナルビルと別館を結ぶ連絡通路に設置。日本で活躍するアストリッド・クライン(イタリア)とマーク・ダイサム(英国)の2人が率いる建築事務所がデザインしたトイレ空間は、これまでのトイレのイメージとはほど遠い近未来的なものだ。

成田空港にある「GALLERY TOTO」(写真:DAICI ANO)

男性用、女性用がそれぞれ4つと授乳室、多目的トイレの合計10ブースで構成。脱臭の新機能「においきれい」など、最先端の技術が投入されている。まず、入った瞬間から「おもてなしの心」で出迎え、用を足すだけの空間ではなく、一息つく、くつろげるといった役割も果たしている。

東京・渋谷の高層複合施設「渋谷ヒカリエ」の女性用トイレもフロアごとに異なるコンセプトの展開で、極めてファッショナブルと人気が高い。そうした“審美性”を追求するようになったのも「ウォシュレット」がもたらしたトイレ革命のおかげかもしれない。

バナー写真:TOTO「ウォシュレット」の最新型モデル。「壁掛け式」で、床面の掃除がしやすいのが特徴だ(同社提供)

  • [2015.10.13]
この記事につけられたタグ:
関連記事
その他のコラム

ピックアップ動画

最新の特集

バナーエリア2
  • nippon.comコラム
  • in the news
  • シンポジウム報告