日経による英FT買収の波紋
[2015.08.11] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 |

日本経済新聞が英国の有力経済紙、『フィナンシャル・タイムズ』(FT)買収を発表した。日本企業が海外メディアを傘下に収めるのは初めてのことだ。デジタル時代に生き残りをめざす欧米メディアの買収・再編の動きに、日本の大手メディアも参戦した格好だ。

日本メディアによる過去最大の買収額

ロンドンの金融街シティに127年間君臨してきた、サーモンピンク色の紙面が特徴のFT紙。この老舗経済紙を日経が買収するとのニュースは、国内外に大きな波紋を投げかけた。日本のメディア企業が海外の主要メディアを買収するのは初めてのこと。しかも買収額は1600億円と近年の世界のメディア買収劇の中でも高額である。ただ、この中にはFTグループのロンドン本社ビルやグループが50%の株式を保有する週刊誌『エコノミスト』は含まれていないという。

FTの買収合意発表は7月24日、日経の喜多恒雄会長、岡田直敏社長らが東京で行われた。日経は両社の記者、編集者をはじめとする人的資源や、報道機関として連携し合うことで、世界に向けて日経のデジタル戦略を強化できる。経済・ビジネス情報はデジタル時代に高い成長が見込める分野である。FTと日経の顧客基盤を活用すれば、さまざまなデジタル事業を展開することが可能というわけだ。

米WSJと並ぶ有力な経済紙

FTの2014年の売上高は5億1900万ドル(642億円)。紙面と電子版を合わせた発行部数は73万7000部で、うち7割の約50万人が電子版の購読者。新聞の発行部自体は日本の地方紙ほどだが、世界有数の経済メディアとしての影響力は大きい。そのブランド力は、米『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)と並ぶ高い評価を得ている。FTはデジタル化の流れにもいち早く対応し、新聞事業のデジタル転換に成功した経済紙としても評価されている。
こうした評価とは別に、FTの親会社である英ピアソンの経営戦略の主眼は別のところにあった。複合メディア企業であるピアソンは、英語の能力試験や参考書の出版などを手がけるが、最近の業績は低迷し、2年間のリストラ計画を完了したばかり。その一環としてFTを売却し、収益の4分の3を占める教育事業に集中する選択をした。
ピアソンのジョン・ファロン最高経営責任者(CEO)は、売却理由について「メディアは変革期にあり、事業の焦点をジャーナリズムに置く組織に入ることがFTにとって必要」と説明したという。一連の買収手続きが年内に完了すれ、FTはピアソンとの58年間の歴史に幕を下ろすことになる。

  • [2015.08.11]
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