2012年、大阪からの「西風」が政治の焦点に

政治・外交

2012年の政治の焦点は税と社会保障の一体改革と与野党対決が強まる中での衆院解散の動向だ。だが、東京の動きだけ見ていても今年は日本の政治を把握できない。関西発、大阪市の橋下徹市長の動向が重要なファクターとなる。

1月20日、橋下氏自ら代表を務める地域政党、「大阪維新の会」のパーティーで行った演説は通常国会召集前夜の中央政界に波紋を広げた。

演説で「たった5%(消費税の)税金上げても、日本が再生するわけがない」と打ち上げた橋下氏は現行の都道府県を数ブロックに再編する「道州制」実現による改革を強調。自らが塾長を務める政治塾に400人程度の塾生を集める考えを示した。次期衆院選に「維新の会」候補を大量擁立し打って出る強い意欲の表明である。

「大阪都構想」と名付けた地方制度改革を掲げる橋下・大阪市長は昨年11月、構想に反対していた前市長を選挙で破り大阪府知事から転身、空席となった府知事も「維新の会」候補が制したことで勢いに乗った。

橋下氏の動き、政界再編に影響も

日本の地方制度は広域自治体である47都道府県と住民行政を行う市町村の2層体制が1890年ごろに確立し、120年以上も基本的に継続している。橋下氏の構想は大阪府を強化した「大阪都」に広域的な行政機能を一元化し、府内の大都市である大阪、堺両市を複数の基礎自治体(特別自治区)に分割再編、住民行政にあたらせることで大阪府と大都市の二重行政の解消を目指すものだ。

この構想を実現するためには国会の立法が必要であり、橋下氏は次期衆院選への対立候補擁立も辞さぬ構えを示し中央政党に同調を迫っていた。自身の国政進出は否定しているものの、一部メディアの世論調査では「リーダーにもっともふさわしい人」に約2割が橋下氏の名を上げ1位となり、その人気度は全国区だ。それだけに「維新の会」が300ある小選挙区の多くに候補を大量擁立すれば既成政党を巻きこんだ政界再編に発展する可能性をはらむ。橋下氏の言動を野田佳彦首相がテレビ番組で「若干、劇場型になっている」とけん制するなど、とりわけ民主党の警戒感は強い。

東京への政治、経済の一極集中が進む中、日本の地方は活力を失い続けてきた。都道府県と大都市も、もともと権限争いが起きやすい構造を持っている。橋下氏個人の動きと単純に捉えず、日本の地方制度が再構築を迫られている転換期の変動という視点も必要だろう。