再燃の兆しみせる「道州制」導入論

政治・外交

地方自治制度の抜本改革論として47都道府県を「東北」「関西」など数ブロックに再編する「道州制」構想が再燃の兆しをみせている。民主党政権の発足以来封印されてきたが、橋下徹大阪市長が率いる政党「大阪維新の会」が国政進出に向けた公約に盛り込む構えをみせているためだ。

広域自治体である都道府県は1888年に香川県が愛媛県から分離して以来、東京府の都制への移行などを除き、120年以上も変わっていない。一方で、住民行政の基礎自治体である市町村は明治、昭和、平成と3度の大合併を経て自治体数の減少と規模拡大を進めてきた。

このため、都道府県をより広域な数ブロックの「道」「州」に再編する構想がかねて経済界などで議論されてきた。自民党も基本的に前向きだったため、政府の第28次地方制度調査会は小泉政権時代の06年3月「導入が適当」と答申、全国を9、11、13道州に分ける3パターンの案を示した。「実現は難しいが万一、議論が具体化した時に備えてひな形を示しておく」(総務省幹部)狙いがあった。

だが、政権交代当時に民主党を仕切っていた小沢一郎元代表、さらに同党の有力支持団体である自治労は道州制に慎重な立場だ。そうした背景もあり民主党政権のいわゆる地域主権改革は「市町村重視」を掲げ、議論は凍結されていた。

120年続く「47都道府県体制」を改革できるか

再度脚光を浴びているのは、橋下氏が率いる「大阪維新の会」が次期衆院選に向けた公約の重要項目に挙げようとしているためだ。橋下氏は大阪府、大阪市を再編する「大阪都」構想の実現を目指すが、分権統治システムの最終目標に道州制を据える。

自民党が以前にまとめたプランも「限りなく連邦制に近い道州制」が掲げられるなど、中央集権を打破する魅力的な選択肢であることは事実だ。だが、いざ現実問題になると、これほど困難が予想される改革もない。

「県民性」という言葉に代表されるように120年以上続いた47都道府県という行政単位は今や文化、生活の単位として国民に根付いている。都道府県知事、同議会議員、さらに職員の多くも自分たちのリストラに直結しかねない構想だけに本音は反対、慎重だ。

埼玉、新潟、三重、福井、長野のようにどのブロックに帰属するか、議論が分かれそうな県もある。「今は総論賛成でも具体化に動けばハチの巣をつついたような騒ぎになるだろう」(自民党ベテラン議員)。

ブロック間の経済格差の財政調整をどう進めるかという制度設計上の根本的な課題、加えて東京都や「大阪都」が実現した場合の道州制との兼ね合いも重要な論点だ。橋下氏自身、道州制実現には極めてハードルが高いことを認めており、まず大阪都構想の実現を統治システム改革の突破口としたい考えだ。

仮に構想が具体化への道を進む場合、理念や工程を定める基本法の制定が最初の政治テーマとなる。政界の一部には、道州制を単に行政コスト削減の手段としてだけ位置づけたり、逆に国の関与を強めようとする議論もあるだけに、油断できない。

これまでの政権が持ったことのないような政治パワー、さらに現状では閉塞感を打開できないという国民の危機感の双方が具体化の大前提となることは間違いない。

大阪維新の会