世界に役立つLEDの応用分野はまだ広い—ノーベル物理学賞受賞の天野浩教授
[2015.01.15] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 |

青色発光ダイオード(LED)の発明と実用化で2014年度のノーベル物理学賞を共同受賞した天野浩名古屋大学大学院教授が2015年1月14日、東京・内幸町のフォーリン・プレスセンターで「LED産業の今後の可能性」をテーマに講演した。天野氏は「世界に役立つLEDの応用分野はまだまだ広い」と述べ、照明用LEDの今後の展開や、実用化が強く望まれている深紫外LEDの開発に向けた取り組み状況などを語った。

LED照明は2016年以降、世界で本格普及

スウェーデン王立科学アカデミーは受賞者決定の際、赤崎勇教授(名城大学)、中村修二教授(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)と天野氏に対し、「彼らの発明は革命的なもの。白熱電球は20世紀を灯してきたが、21世紀はLEDランプによって灯されていくだろう。少ない電力で動かせるLED技術により、世界で電気が届かない地域の人々に大きな朗報となる」と賛辞を送った。

天野浩氏

天野氏は14日の講演で、「携帯電話がフルカラー化したのは青色LED開発のおかげだった」と紹介したうえで、LED実用化の現況を民間企業の調査に基づき、「2013年のLEDパッケージの世界市場での実績は1兆5729億円だったが、2020年には2・4倍の3兆7588億円になると見込まれている」と語った。

さらに「LED照明は今後、欧米諸国や中国、日本などで従来の白熱電球が販売禁止や販売打ち切りになると考えられるため、2016年以降、本格的に普及するだろう」との見通しを述べた。

赤崎、天野、中村の3氏は1990年代前半、これまで難しかった青色光を半導体から引き出す技術を編み出した。赤と緑のLEDは既に開発されており、青色LEDの実用化で「完全な白色」を含むすべての色の光をLEDで作り出すことが可能に。工業製品としての応用範囲が劇的に拡大した。LEDは現在、携帯電話や照明、交通信号などの民生品にまで普及。輝度が上がり、エネルギー効率も蛍光灯の2倍くらいに上がった。

LEDの価格を5分の1に

天野氏はLEDの省エネ効果について、「米エネルギー省の分析予測では、2030年までに米国内でのLED照明の割合は70%を超える。米国の電力消費量は日本の約4倍だが、LED照明による省エネ効果は300テラ(テラは10の12乗倍=1兆倍)ワット時とされ、これは現在稼働停止している日本の原子力発電(48基)の総発電量と同じ規模になる」と語った。

このデータを基に、天野氏は「日本でのLED照明の普及は米国より進んでおり、2020年までに70%に達する。これは全発電量の約7%(電力料金に換算すると約1兆円)の電力消費削減が可能である」と指摘。ただ、これを実現するには、2020年までにLEDのコストを現在の5分の1以下に下げる必要があるなど多くの課題があるとした。

これまでも天野氏は次のように語っている。「LED照明を世界の人々に使ってもらうには価格がまだ高い。目標は2020年までにコストを5分の1まで下げることだ。それができれば爆発的に普及する。電気が届かない地域でも、LEDは電池3つか4つで動く。太陽電池とバッテリーと組み合わせると、そんなに高い電圧ではなく直流のままででき、家で十分に本が読めたり勉強できたりする。途上国支援にもつながる」

天野氏は講演で、LEDの低コスト化に向けて取り組んでいる研究例として、「3次元ナノワイヤーLED」を挙げた。これはLEDをナノ・スケール(1 mの10億分の1のサイズ)の窒化ガリウム(GaN)ワイヤーを周期的に多数設けた構造にし、発光効率を高めようというものだ。

それを低コスト化するポイントは、①既存の製造装置が利用できるシリコンLSIを利用する、②現在95%のLEDがサファイア基板上でできるが、これをLEDの輝度を4倍に高められる窒化ガリウム基板上での実用化をめざす――ことだ、とした。名古屋大学のチームはこうした共同研究開発を仏アレディア社との間で進めているほか、米国・スウェーデンの企業とも共同事業を行っている。

深紫外LEDが切り開く将来を視野に

天野氏は、照明やディスプレイ以外の産業用の用途として、食物工場で食物の育成に役立つLED光源や、クリーンな光だけで治療が可能となる光遺伝学へのLEDの応用に向けた研究内容を紹介した。

さらに、波長が250~350ナノミリと短い深紫外LEDの開発状況について言及。低環境負荷で高効率、長寿命の特性を持つため、その応用範囲は広く、皮膚病治療やDNA解析のほか、きれいな水に恵まれない地域の人々に役立つ水質汚染センサー、また3次元プリンター用にも使える紫外線印刷などにも適用できると指摘。深紫外LEDが切り開く未来に向けた取り組みに意欲を示した。

天野氏はこうした分野で、「名古屋大チームが商品開発に向けて準備している」と語ったが、同時に、窒化ガリウムを使った最先端技術での研究開発などについては、世界にライバルも多く、競争は大変厳しい」とも付け加えた。

実用化のイメージ強く持って研究

天野氏はLEDの実用化など研究活動を続ける心構えについて、「研究をするうえで最も大切なことは、将来の実用化、成功イメージを研究者が強く持っていること。必ずこういうものを作るのだというイメージがないと、うまくいかない。イメージを持つことができたものは、私の場合すべて実用化できている」と語った。

天野氏はニッポンドットコムの取材に対し、研究者としての自身の今後について以下のように語っている。「これができたらこのくらい世の中を変えられる…というようなビジョンはある。それは必ずできると思っているので、大学教員の定年まであと11年、それまでに全部やっちゃいたいなと思っています」。

文・写真 原田和義(ニッポンドットコム シニアエディター)

タイトル写真:講演する天野浩・名古屋大学大学院教授=2015年1月14日、東京・内幸町

  • [2015.01.15]
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