ギリシャ:国民投票で緊縮策を拒否
ユーロ圏離脱に現実味
[2015.07.07] 他の言語で読む : ENGLISH |

不満爆発、「6対4」でEU財政緊縮策に「ノー」

欧州統合の象徴的存在であるユーロ体制が1999年発足以来、最大の危機を迎えている。ギリシャは7月5日に行われた国民投票で欧州連合(EU)が求める財政緊縮策への拒否を表明した。結果は反対61%、賛成39%と、予想以上の大差。5年以上にわたって厳しい緊縮策に耐えてきた国民の不満が爆発した形だ。

先行きは不透明な面もあるが、ギリシャがEUから金融支援を取り付けることは一層困難になった。国民生活はますます窮乏するとともに、債権者に「反旗を翻した」ことで、単一通貨ユーロからの離脱が現実味を帯びてきた。

ギリシャは西欧文明発祥の地であり、特に現代につながる民主主義が生まれた場所だ。1981年に欧州共同体(EC=EUの前身)に10カ国目として比較的早期に加盟できたのは、こうした背景があるからだ。

だが同国の経済は、2008年のリーマン・ショックを機に急速に悪化。2010年以降は深刻な債務危機に陥っている。発端は政府の債務隠しが表面化したことだ。景気は低迷し、失業率は20%台。特に若者の失業率は50%に近い。EUは、危機に歯止めを掛けようと同国に緊縮策を強いてきた。だが、今回の国民投票ではそれが裏目に出た。

EUの「恐喝」とギリシャの「尊厳」

EUの緊縮策を「恐喝(blackmail)」と呼び、ギリシャ国民の「尊厳」を損なうものだと批判していた急進左派連合(SYRIZA)のチプラス首相は、5日深夜に行った勝利演説で、「民主主義と正義の勝利だ。今後、EUと交渉を進めるうえで力を与えてくれた」と国民投票の意義を強調した。

しかし、EUの支援プログラムは6月30日に失効。同日が期限だった国際通貨基金(IMF)向けの15億ユーロの債務は返済されず、「滞納」状態にある。EU側はギリシャとの支援交渉再開には容易に応じそうもない。ドイツ政府の報道官は「新たな協議のための準備は整っていない」と冷淡だ。

EU/IMFは2010年と2012年の2回に分け、合計2300億ユーロの支援融資の枠組みに合意。曲折はあったものの、1年ほど前にはギリシャの財政健全化、構造改革は進展しつつあり、経済成長もプラス圏に戻りつつあった。

しかし今年1月の総選挙では、チプラス氏が「緊縮に疲れた」国民多数の支持を得て政権の座に。その後EUとの関係は変調を来し、支援枠のうち最後に残った72億ユーロの実行条件としての緊縮策をめぐって交渉が難航、支援枠は6月30日に失効した。

今回の国民投票のやり方には、様々な批判が噴出した。発表から投票日まで8日しかなく、十分な討論の期間が確保されなかったことや、賛否を問う文章が非常に分かりにくいことなどが問題視された。

国際的な金融市場に再び波乱

緊縮案拒否の投票結果を受け、週明け6日の金融市場は大荒れとなった。日経平均株価は前週末比で一時500円以上値下がりした。終値は同427円67銭安。東京外国為替市場では円は対ユーロで上昇。欧州の主要株式市場では、株価指数が前週末比1-3%も下落した。

国債市場では10年物ギリシャ国債利回りが17.3%台と、前週末取引終盤(14.8%台)比で2割近く急伸した。今後、世界の金利動向に微妙な影響を及ぼす可能性もある。

ギリシャがユーロ圏からの離脱に追い込まれるかどうかのカギを握るのは当面、欧州中央銀行(ECB)の動向だ。ECBはギリシャ中央銀行を通じて「緊急流動性支援(emergency liquidity assistance=ELA)」という枠組みの下で、これまで890億ユーロを供給。ギリシャの銀行の資金繰りを支えてきた。だが、EUが求めた緊縮策が拒否された以上、追加供給の凍結を維持せざるを得ない見通しだ。

ギリシャの一部の銀行は、追加供給がなければ手元資金が近く枯渇することが濃厚。経済にお金を回す役割を担う銀行にユーロの資金がなくなれば、国内経済全体でもユーロが枯渇し、ユーロ圏からの離脱が近づくことになる。

次の大きな節目は7月20日

ギリシャ政府はEU/IMFの金融支援の「綱」が切れている状態で、債務の返済期限を次々と迎える。7月10日に20億ユーロの短期国債の償還が予定され、13日には再びIMFに対する4億5000万ユーロの債務返済期限を迎える。

次の大きな節目となるのが20日に期限を迎える、ECBが保有する35億ユーロの国債償還だ。償還が行われなかった場合、ECBはギリシャ向け流動性支援を打ち切る可能性があり、その場合は銀行保有のユーロが枯渇しかねない。また、日本関連では、円建て外債(サムライ債)8300万ユーロが14日に償還期限を迎える

ユーロ離脱という悪夢のシナリオ

ギリシャ世論は国民投票の際、年金カットや付加価値税率(VAT)の引き上げにつながる緊縮策に反対したが、ユーロ圏離脱もやむなしとは考えていないようだ。

アテネからの報道では、ユーロ導入前のギリシャ通貨ドラクマへの回帰は経済破綻を意味するとして、国民の中に警戒する声が多い。5日公表された電話世論調査によると、ユーロ圏残留に賛成が87%、反対が9%だった。

一方、英金融大手バークレイズは5日公表した報告書で、ギリシャとEUの金融支援合意が「極めて困難になった」と分析。資金が枯渇したギリシャは独自通貨を発行せざるを得ず、ユーロ離脱が最も可能性の高いシナリオ」と断言した。

スロバキアのカジミール財務相は「改革拒否でお金をより簡単に得られることにはならない」と警告。ギリシャのユーロ離脱について「現実的なようだ」と述べた。

EU/IMFとの支援交渉を再開でき、早期に合意を達成できるのか、それとも資金繰りがさらに悪化してデフォルト(債務不履行)が連続し、ユーロをあきらめ、独自通貨を発行せざるを得ない「悪夢のシナリオ」に突き進むのか。ギリシャは重大な岐路に立っている。

文・村上 直久(編集部)

バナー写真:ギリシャの首都アテネの議会前広場で開かれた緊縮財政反対派の集会で、「OXI(ノー)」の旗を掲げる女性=2015年7月3日(時事)

  • [2015.07.07]
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