18メートルの「ガンダム」を2019年に動かす
夢の実現へアイデア第1次選考
[2015.11.10] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | ESPAÑOL | العربية | Русский |

人気ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」が誕生して40周年を迎える2019年に、高さ18メートルの“等身大”ガンダムを実際に動かす―。そんな夢のようなプロジェクトが具体化に向け動き出した。

台湾の江さんら、受賞者4人がプロジェクトチーム入り

一般社団法人ガンダムGLOBAL CHALLENGE(宮河恭夫理事長)はこのほど、公募していたアイデアの第1次選考発表会を東京都内で開催し、実際にガンダムを動かす「リアルエンターテインメント」部門で、台湾の江明勲さん(36)ら4人を受賞者に選んだ。

同プロジェクトを推進するバンダイの上野和典会長は「応募総数の4分の1は海外から。ガンダムに対する世界中の期待度の高さを感じている。プロジェクトが実現に向けて動き出すことで、世界中にさらに大きな夢を提供していきたい」と述べた。

江さんは現在、龍華科技大学非常勤助教授(工学博士)。ロボットが人間のような歩行を実現するための、ヒューマノイドロボット歩行に関連した新しいメカニズムを提案した。奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程在学中の金子裕哉さん(24)は、ガンダムとザク(別の人型兵器)に相撲をとらせて四脚にすることでより安定した自立歩行を可能にするアイデアを示した。研究用ロボットの開発企業を経営している木原由光さん(47)はガンダムの動力源を外部に配置したシステム、東京大学大学院准教授(知能機械情報学)の岡田慧さん(42)はロボットのシステム開発関連の提案が評価された。

ガンダムの動きを考えるための参考映像 ©SOTSU-SUNRISE

4人は今後、プロジェクトチームのメンバーとなり、ガンダムを実際に動かす目標の実現に向け取り組む。公募では視覚効果を利用して仮想現実(バーチャル・リアリティー)で動きを再現し、それをエンターテインメントとして成立させる具体的なアイデアや映像プランも合わせて募集されたが、この部門の受賞者はいなかった。

ロボット工学を超えた挑戦

「機動戦士ガンダム」のテレビ放送が開始されたのは1979年。全国的ブームが巻き起こってシリーズ化され、2015年10月には最新作「鉄血のオルフェルズ」の放映が始まった。同作品は、すでにインターネット経由で世界に配信されている。

放映開始30周年の2009年には、「RX-78-2ガンダム」を再現した等身大立像がつくられ、東京・お台場地区の公園に展示されて注目を集めている。

アニメで設定されているガンダムの身長は18.0メートル、重量は43.4トン。プロジェクトの技術監修を務める早稲田大学理工学術院教授(副総長)の橋本周司氏は、選考発表会での記者会見で、「18メートルというのは背の高い人間の10倍。身長が10倍になると、体重(体積)は1000倍(10の3乗)になる。また、腕を振るとか脚を組むには非常に大きな回転力を与えなければ同じように回らない。ガンダムを動かそうというのはロボット工学を超えている」と指摘。

一方で、「非常に大きなものを運ぶトレーラーや、100メートル以上のビルを揺れないようにする仕組みなどは既に動いている。だから何か解はある」と述べ、エンジニアリングを総動員して課題を突破していく意欲を示した。

また、中京大学工学部教授でプロジェクトリーダーの1人であるピトヨハルトノ氏も「18メートルのロボットを歩かせるのは6階建ての建物を歩かせることに相当する。ロボットの専門家からは『こんなのはできるわけがない』と言われた。しかし、無謀だからこそチャレンジという言葉がふさわしい。これまでは紙上のチャレンジだった。これからはそれを実現しなければならない。何とかブレークスルーを達成したい」と意気込みを語った。

政府も「ガンダム特区」で後押し

それでも、ガンダムプロジェクトに取り組むのはなぜか。アニメ製作会社サンライズの社長でもある宮河氏が頭に描いているのは月面着陸という人類未到のロマンスに向かって突き進んだアポロ計画(1961-75年)だ。「米航空宇宙局(NASA)はその結果、たくさんの技術を生み出した。ガンダムを動かすことにロボット工学的な意味は求められないかもしれないが、試行錯誤することでロボット技術の進歩が促される可能性を感じている」と強調した。

日本政府もこの一種荒唐無稽なガンダムプロジェクトを後押ししている。2015年1月に設置された「近未来技術実証特区検討会」(内閣府)で、通称「ガンダム特区」の実現に向けた議論が始まった。特区では実証実験などでの規制が緩和される。とりわけ、医療・介護やインフラ検査・保守など、サービスロボット分野で出遅れている国内ロボット産業にイノベーション(技術革新)をもたらすことを期待しているからだ。

産業界でも呼応した動きが出ている。慶應義塾大学メディアデザイン研究科が中核となって一般社団法人CiP協議会を設立。東京都港区竹芝地区に、「コンテンツを核とした国際ビジネス拠点」を形成する計画だ。ゲームやアニメ、映像・音楽などコンテンツの集積地とし、ガンダムはその象徴だ。

ガンダムの人気はアジアを中心に世界中に広がっている。ガンダムのプラモデル「ガンプラ」の年間出荷数1100万個のうち海外向けが3割も占めるとの推計も出ている。特区でガンダムが動けば、訪日観光客にも喜ばれるはずだ。

「オープンイノベーション」で追加アイデアを募集

ガンダムGLOBAL CHALLENGEでは今回選ばれた受賞アイデアに対して、さらなるアイデアを追加募集する「オープンイノベーション」を実施する。新しい設計プランも募集する。募集期間は11月2日から16年2月29日まで。16年秋をめどに基本プランをまとめ、18年には実施設計を発表し製作に入る。19年には動くガンダムをお披露目したい考えだ。

宮河理事長は「追加募集により、受賞アイデアがさらに進化し、われわれの想像を超えるプランが生まれることを期待している。難しいからこそ達成したい」と意欲を見せた。

アニメ「機動戦士ガンダム」総監督の富野由悠季氏は「人型ロボットを動かすことは工学的には大変なことだが、それを達成したときに応用技術は生まれる。プロジェクトはブレークスルーになる要因をはらんでいる。19年にガンダムが動いてくれたら、次の何かを考えてくれる子どもたちが出てくるのではないか。そのためにも、こういうことをやってみせるのは大事だ」と語った。

文=長澤 孝昭(ニッポンドットコム編集部・シニアエディター)
写真=大谷 清英(制作部)

バナー写真:台湾の江明勲さん(中央)ら受賞者の3人と、アニメ総監督の富野由悠季氏(右端)。左端はプレゼンターを務めたミュージシャンのSUGIZO氏=2015年10月26日 ©SOTSU-SUNRISE

  • [2015.11.10]
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