全国の名物料理を食べまくるマーティンが「日本の食文化」の魅力を発信!

テレビの情報番組で日本各地の朝ごはんを食べ回っているタレントのマーティンさん。男性5人グループ「アセバウンド」のリーダーとして、食文化を中心に日本の魅力を世界に発信している。

マーティン Martin

モデル。1995年4月6日、米国生まれ。米国人の父と日本人の母を持ち、4歳から神奈川県平塚市で育つ。2019年4月から『ZIP!』(日本テレビ系)で「いただきます! 日本全国朝ごはんジャーニー」を担当。日本文化の魅力を発信する男性5人グループ「ASE BOUND(アセバウンド)」のリーダーを務める。

朝の情報番組『ZIP!』で、日本各地の名物朝ごはんを紹介するコーナーにレギュラー出演しているマーティンさん(24)。2018年夏に、「僕たち、愛する日本のために汗をかきかます―」を合言葉に、日本文化を実際に体験し、その魅力を訪日観光客(インバウンド)に向けて発信する男性グループ「ASE BOUND(アセバウンド)」を結成。外国人を父母に持ち、日本でモデルや俳優として活動する5人のメンバーをまとめる彼に、魚食文化を中心に話を聞いた。

—アセバウンド結成のきっかけは?

米国人の父と日本人の母の間に生まれた僕は、4歳から神奈川県の平塚で暮らしていて、中身はほぼ日本人。英語はほとんど話せません。ただ、大人になって外国人の友達が多くなり、日本の暮らしについて話すようになったんです。

その中でも、メンバーのアレキサンダーはとても印象的な存在でした。米国とフランスの両国籍を持つ彼は、3~4年前にホームステイで滋賀県に滞在。5カ国語をしゃべることができて、まだ勉強してから日の浅い日本語もペラペラ。「日本語が一番難しい」と言っていますが、LINEでやりとりしても、ちゃんと漢字を使うんです。彼は、むしろ日本人よりも、日本に愛情を持っていると感じるくらいです。

そんな仲間たちと語り合っているうちに、僕たちの視点で日本の魅力についてSNS(インターネット交流サイト)などで伝えられたらという風に、割とフランクな感じでアセバウンドは誕生しました。

「アセバウンド」のメンバー。左からエムレ、ヴィニー、マーティン、ケヴィン、アレキサンダー
「アセバウンド」のメンバー。左からエムレ、ヴィニー、マーティン、ケヴィン、アレキサンダー

—これまでの活動を教えてください

来日する外国人が楽しみにしていることの1つに、和食をはじめとする「食」があると思うのです。そこでアセバウンドの活動の第一歩として、和食の代表とも言える魚料理のルーツ、漁業にスポットを当てました。

まずは僕の地元、平塚の知り合いを通じて、定置網漁船に乗せてもらったんです。帰港してからの網揚げでは、魚の選別を手伝いました。それが、僕たちメンバー全員の漁業初体験。作業後にはアジやサバ、カマスなど、獲れたての魚をさばいてくれて、漁港で食べさせてもらい、みんな興奮気味でしたね。いろいろな魚について漁師の方から説明を受けましたが、今は昔に比べて魚を食べる人が減っているそうで、「若い人たちに魚のおいしさなどをどんどんPRしてほしい」と言われたんです。早速、出漁から作業の模様などをSNSにアップしました。すごく貴重な体験で、これがアセバウンドの活動の原点になっています。

神奈川県平塚市で漁業体験後の1枚(2018年8月)
神奈川県平塚市で漁業体験後の1枚(2018年8月)

その後は、静岡市に協力していただいてシラス漁に出たり、清水港ではマイナス70度で保管されている冷凍マグロ倉庫を見学させてもらったり、漁業体験を続けています。他には、わさび農場に行って「わさび漬け」作りに挑戦し、高台にあるミカン畑も見学しました。短時間の場合もあるのですが、さまざまな1次産業の現場に行き、日本の食文化の源に少し触れられた気がしています。

移転前の東京・築地市場(中央区)を見学(右はケヴィンさん、2018年9月)
移転前の東京・築地市場(中央区)を見学(右はケヴィンさん、2018年9月)

—メンバーいち押しの魚料理は?

訪日観光客に人気の和食と言えば、すしや天ぷらですが、メンバーのみんなはいったい何が一番好きなのか、聞いたことがあります。

ブラジル出身のヴィニー(23)は、「サバのみそ煮」だそうです。16年間住んでいた愛知県で、小学生のころからよく食べていて「甘みとうま味がたまらない」そうです。埼玉県で暮らすフィリピン出身のケヴィン(21)のお気に入りは「サケのホイル焼き」。おいしさを逃がさず、野菜やきのこなど他の具材と一緒に味わえるところが好きなんだそうです。トルコ出身のエムレ(22)は、開口一番「サバサンド」。元々トルコの料理で大好物らしいですが、日本のサバサンドもクオリティーが高いから「とにかく食べてみたら分かる」ときっぱり。アレキサンダー(23)はビーガンなので魚は食べませんが、ワカメやコンブ、ノリなど海藻類は大好きで、サラダやタコスに入れてよく食べています。

ヴィニーさんが愛するサバのみそ煮は、和食の定番メニュー 写真:PIXTA
ヴィニーさんが愛するサバのみそ煮は、和食の定番メニュー 写真:PIXTA

僕はこの1年、「ZIP!」の「朝ごはんジャーニー」に出演させていただきました。北海道から沖縄まで地元自慢の朝ごはんを食べ回ってきましたが、中でも特に印象に残っているのが、宮城県亘理(わたり)町名物の「ホッキ飯」。ものすごく、“うまーティン”でした。

ホッキガイはこれまでほとんど食べたことがなかったので、どんな味なのか想像が付かなかったのですが、うま味いっぱいのホッキと、だしが染みたご飯に、本当にびっくりしました。もう一度食べたいし、、外国人観光客が宮城県に足を運ぶときは「ぜひ亘理町で本場のホッキ飯を食べて」とおすすめします。

マーティンさんおすすめのホッキ飯 写真:PIXTA
マーティンさんおすすめのホッキ飯 写真:PIXTA

—マーティン流の和食の楽しみ方などを伝授してください

何と言っても「ON THE RICE!」。僕は番組の中でも常に白米を持ち歩き、各地の名物料理を載せていただいています。和食、特に魚料理は、白いご飯に合うものが多いんです。例えば、僕がこれまであまり食べなかった「つくだ煮」は、その濃い色合いから「外国人は嫌うのではないか」と感じたことがあります。でも、ご飯と一緒に食べてみると、すごく合うし、とてもおいしい。お米をあまり食べない国の人にも、ぜひ試してもらいたいです。

日本らしいと言えば、ご当地ラーメンもおすすめですね。地方ごとに特色があって、特産物を使っていたり、魚介類がたっぷりだったりします。しかも、老舗の有名店や行列ができる人気店でも1000円程度で食べられるので、お財布にもやさしい。さらに、コンビニの弁当やおにぎりといった、日本ならではの手軽で質の高い食べ物も楽しんでもらえたらと思います。

黒や茶色など濃い色をしたつくだ煮は、見た目も味も白いご飯と相性抜群 写真:PIXTA
黒や茶色など濃い色をしたつくだ煮は、見た目も味も白いご飯と相性抜群 写真:PIXTA

—今後、訪日観光客や海外の人に伝えたいことは

2018年9月下旬に、話題となっていた移転直前の築地市場を見学し、移転後の豊洲新市場にも伺いました。豊洲は広くきれいな場所で、築地と同じ市場(機能)とは思えませんでした。

この時、豊洲市場長の前山琢也さんや、卸会社の丸千千代田水産の石橋利至子社長とお会いしたのですが、2人とも「市場や魚のことを若い人たちへPRしてほしい」と、平塚の漁師さんと同じようなことを言っていたのが印象に残っています。僕らも最近は、だしの繊細なうま味などが分かりやすい例ですが、肉食よりも魚料理の方が日本の食文化の魅力を伝えやすいと思っています。

東京の新たな台所、豊洲市場(江東区)で(右はヴィニーさん、2019年7月)
東京の新たな台所、豊洲市場(江東区)で(右はヴィニーさん、2019年7月)

アセバウンドの活動を本格化させ、ブログやツイッターなどに加え、YouTubeも活用して日本の食文化に関する情報発信を充実させていこうと思います。それに絡めて日本の楽しみ方を一層理解してもらうために、ふらっと足を運べる地域の朝市や商店街、そこで働く「人」にもスポットを当て、それぞれの地域の魅力も伝えたいですね。日本旅行を楽しんだ後、「また日本へ来たい」と思ってもらうように、みんなで力を合わせてがんばっていきます。

聞き手・写真提供=川本 大吾(時事通信社 水産部長)
インタビュー写真=ニッポンドットコム編集部
(取材日:2020年2月4日)

観光 和食 食文化 漁業 インバウンド 郷土料理 魚市場