【Photos】スノーモンキーは温泉が大好き—地獄谷のニホンザル

小林 英樹 (撮影)【Profile】

[2014.10.22] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |
熱帯から亜熱帯に暮らすサルが多い中、雪の中で暮らすニホンザルは珍しい。海外では“スノーモンキー”と呼ばれ、中でも温泉に入る地獄谷のサルは訪日旅行者に大人気だ。四季を通じた彼らの暮らしを紹介しよう。

「いい湯だな~」、そんなつぶやきが聞こえてくる?

 “温泉に入るサル”で有名な地獄谷は、長野県北部、上信越高原国立公園の志賀高原から流れ出る横湯川(よこゆがわ)の渓谷にある。周囲を険しい崖に囲まれ、絶えず噴泉が噴き上がり、温泉が流出している。この地は古くからニホンザルの生息地として知られていた。1964年に2年間の餌付けを経て、「地獄谷野猿公苑」が開苑された。この公苑のモットーは、野生の暮らしを妨害しないこと。そのため、サルに触れたり、餌をやったりすることは禁じられている。

温泉ザルのきっかけは、開苑後子ザルが近くの旅館の露天風呂に入っているのが確認されたことだ。1967年には公苑内にサル専用の風呂が造られ、他のサルたちの間でも温泉に入ることが受け継がれていった。現在では、世界でも珍しいサルたちを見ようと国内外から研究者や観光客が多数訪れている。

2メートルを超える雪で覆われた地獄谷の冬の寒さは厳しく、氷点下の日が続く。寒さをしのぎ冷えた体を温めようと公苑の露天風呂にはたくさんのサルが集まってくる。頭に雪を載せて、気持ちよさそうに目をつむる老ザル。体を寄せ合う親子ザル。体が温まり居眠りをするメスザル。どのサルも、温泉に浸かったときの表情は気持ち良さそうだ。しかし中には、温泉が嫌いなのか、寒そうにしながらも決して入らないオスザルもいる。反対に、2時間ぐらい入っていて、上がったとたんにのぼせてひっくり返る温泉好きのサルもいる。

四季を通じてサルの表情を追う

草木が芽吹き、食物も豊富になる春は、サルの出産シーズンだ。サルは、通常、1年おきに1頭の赤ん坊を出産する。生まれたばかりの赤ん坊は全身に毛が生えていて、目も開いている。どこへ行くにも母親にしがみついているが、生後1週間も過ぎると、手をついて四足歩行でよろよろと歩き始める。おぼつかない足取りで母親から離れ、転んでは泣く。声を聞きつけて連れ戻しにくる母親の目は愛情に満ちていて、実にほほ笑ましい。

緑が濃くなる夏は、サルたちの毛が抜け変わり短い夏毛になる。夏の暑さが苦手な大人のサルたちは木陰でのんびり過ごすが、子ザルたちは温泉に入って泳いだり、川原で追いかけっこをしたりして元気一杯だ。

実りの季節を迎える秋になると、サルたちは厳しい冬に備えて、クリやヤマブドウなど栄養豊富な木の実や果実を求めて森を駆け巡る。周囲の山の木々が色づく頃は、サルたちの恋の季節だ。顔や尻がいっそう赤くなったオスザルが、必死になって恋の相手を探しだそうとする。

四季折々、彼らの生態を撮影していると、サルを撮りながら人間と向き合っているような気持ちになってくる。地獄谷野猿公苑が開苑して50年、これからも人間とサルが共生していける環境であり続けてほしい。

撮影と文=小林 英樹

 

 

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  • [2014.10.22]

1942年生まれ。化学会社に勤務しながら、写真を始める。1998年から地獄谷野猿公苑のサルの写真を撮り始め、2008年に写真集『LIFE 地獄谷に生きる』(風景写真出版)を出版。志賀高原ロマン美術館で開催される「スノーモンキー写真展」に出展。現在もサルたちの撮影を続けている。

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