【Photos】八重山諸島:その神話的な時間

山下 恒夫 (撮影)【Profile】

[2016.08.17] 他の言語で読む : ENGLISH | ESPAÑOL | العربية | Русский |
沖縄県の八重山諸島は、日本の最南西端の島々だ。ここでは、日本の本土や沖縄島とは異なるゆったりとした時間が流れている。その独特な風土に魅せられて島々の営みを見つめてきた写真家が捉えたその神話的な瞬間を紹介する。

八重山諸島は沖縄本島から南西に約400km離れたところにある島々で、10の有人島と多数の無人島からなる。最西端の与那国島からは天気がよいと台湾が見えるといえばだいたいの位置が分かるだろうか。

本土や那覇と結ぶ空港のある石垣島は全域が石垣市で人口は約4万8000人。与那国島は与那国町で人口約1700人。その他の8つの島は竹富町に属し人口約4200人。隣り合っている島々だが、それぞれに違った個性がある。

独特な祭祀がいきづく

竹富島を歩くと、赤い琉球瓦の民家が数多く残され、ハイビスカスやブーゲンビレアの花が咲き乱れ、亜熱帯の海洋性気候に属するのを実感する。島の大部分を亜熱帯林に覆われた西表島にはイリオモテヤマネコ、カンムリワシなどの特別天然記念物が生息している。

八重山の島々では豊年祭や結願祭(きつがんさい)、節祭(シチ)など多くの神事、祭祀(さいし)が今も行われている。その多くは農業に関するもので豊作を祈願し、収穫に感謝するためのものである。毎年海の彼方からミルク神がやってきて豊穣(ほうじょう)や幸福をもたらすというニライカナイの信仰がその基にあり、何百年もの間受け継がれてきた。

聖なる島々

祭祀は司(つかさ)という女性の神職が御嶽(うたき)という聖地で執り行う。御嶽は集落近くの森などにあり、男子禁制で大きな社やご神体などはなく白い砂と自然石だけの空間である。その多くは村建ての始祖などの人格神や集落の守護神を祀(まつ)っている。そこにニライカナイからの神様もやってくるというところに島の人の包容力を感じる。島のコミュニティはもともとこの御嶽と司が中心になっていて、現在でも集落の精神的中心であることに変わりはない。そのため観光客が立ち入ることは固く禁じられている。祭祀の後には奉納芸能があり、普段は家庭の主婦や高校生たちが鮮やかな琉球衣装を着て見事な舞踊や棒術を披露する。演じる者も見守る者も真剣なまなざしで、琉球国の島に生まれた者の誇りを感じさせる時だ。

古からの時間が流れる

島の人たちは常に風向きと潮の満ち引きを意識して生活をしている。潮の周期を決めるのは月の動きで、沖縄の年中行事は旧暦にのっとって行われる。島には会社や学校、普段の生活に使う新暦の時間と、古(いにしえ)より脈々と続く琉球の時間が流れており、時折それが交差する瞬間に出会うことができる。

写真・文=山下 恒夫

バナー写真:西表島祖内で行われた節祭(シチ)。中央にいるのは、豊穣を島にもたらすミルク神だ

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  • [2016.08.17]

1961年、東京都生まれ。84年日本大学芸術学部写真学科卒。沖縄を撮り始めたのは大学時代の82年頃から。写真集に『島の時間』(クレオ)『もうひとつの島の時間』(冬青社)『島想い』(リバーサイドブックス)がある。「The LPV Show」に紹介された。

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