特集 コーポレート・ガバナンス:日本の企業は変われるか?
議決権行使助言会社から見る日本企業の姿
ISS Japan 石田猛行氏に聞く

竹中 治堅【Profile】

[2015.11.13] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 |

上場会社の株式総会議案を分析し、あるべきコーポレート・ガバナンスの視点からその是非を機関投資家にアドバイスする議決権行使助言会社。その視点から、日本企業の現状はどう見えるのか。米最大手Institutional Shareholder Services(ISS)日本法人の石田猛行代表取締役にインタビューした。

石田 猛行

石田 猛行ISHIDA TakeyukiInstitutional Shareholder Services (ISS) 日本法人代表取締役。1968年石川県生まれ。米ジョンズホプキンズ大学高等国際問題研究大学院で修士号を取得。1999年からワシントンDCのInvestor Responsibility Research Center (IRRC) に勤務し、日本企業の株主総会の議案分析やコーポレート・ガバナンスの調査を担当。2005年のISSによるIRRC買収に伴い、同年からISS日本法人に勤務。2008年から日本企業の株主総会調査を総括。「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」メンバーとして、コードの策定に関わった。

“株主の利益重視”:以前は語らなかった日本の経営者

——ISSはどのような会社か、日本でどのような活動をされているのか。

機関投資家を顧客とし、議決権行使に関するアドバイスやサポートを行っている。株を買った機関投資家がその企業の株主総会に臨む際、議案にどういう投票判断をすれば長期的な株主の利益になるかを考えて議案の賛否推奨をする。個々の企業の株主総会議案について賛否の推奨レポートを出している。日本に拠点を置いて、活動を始めたのは2003年ごろ。調査業務の現地化や顧客サービスの充実が目的だ。

——2014年6月に会社法改正案が成立するまでの日本のコーポレート・ガバナンスを、どのように評価していたか。

会社法改正と時期を一にして、コーポレート・ガバナンスに対する認識はかなり変わったと感じる。以前はコンプライアンス(法令順守)に近い意味で語られていたが、今はより投資家が興味を持てる文脈でコーポレート・ガバナンスのあり方が語られるようになってきた。ただし、これは会社法改正が理由というよりも、環境の変化が会社法改正の時期と重なった結果といえる。

「株主の利益を重視する」という論点について、以前とは異なり、現在の企業経営者はもっと自然に話すようになった。ROE(自己資本利益率)も同じだ。米国では経営者が「株主を重視する」のはあたりまえというか、あえてわざわざ意識するようなことではないと思う。それに比べればまだまだだが、日本企業において、少なくとも以前ほどの否定的な姿勢、というか抵抗感はなくなってきた。海外の日本企業に対する見方、評価も変わっていると感じる。

——なぜ、これまで日本の企業は株主の存在を意識しないで済んできたと考えるか。

やはり、銀行が非常に強かったということ。加えて株の持ち合いや安定株主の存在だろう。私たちは各社の社外取締役の候補者を何千人もチェックしているが、銀行(出身)の人が多い。対照的に証券会社の人はずっと少ない。日本はデット(負債)文化であり、エクイティ(株式)文化ではないことを象徴している。銀行に“優秀な人がいる”という企業側の意識は、薄れたとはいってもまだまだ強いものがある。

株の持ち合いは、純投資を目的とした株主として持ち合いをするのではなく、ビジネスの関係にある結果として持ち合いをするわけで、順序が逆。そういう状況では「株主利益を高める」という発想は出にくいだろう。安定株主さえいれば、他の株主が何を言っても従前通りのやり方で経営できることになる。

——会社法改正で、実質的に上場会社には社外取締役の設置が義務づけられた。どのような感想を持たれているか。

私たちの調査でも9割程度の企業が最低1人の社外取締役を置くようになり、変化を実感している。特筆したいのは、この変化に至る過程で、日本の企業の人々が社外取締役を置く本質的な意味をじっくりと考える時間があったことだ。規制であれば、有無を言わさず社外取締役が一気に増えるだろうが、それは形式的な変化に過ぎない。取締役会を経営会議と位置付けている会社に無理に規制で社外取締役を強制しても、日々の業務が議論される場所に、その業務を知らない社外取締役が来ても意味のある貢献は難しい。

その点、今日の変化の意味は大きい。どうすれば社外取締役が機能するかを個社がじっくり考えた上で、社外取締役を設置するからだ。取締役会の議題の内容から、開催頻度のような運営上の課題まで、最適解を求めて企業が自主的に取り組むだろう。規制で社外取締役は強制できても、例えば、開催頻度、議題の内容は強制できない。もっと言えば、スピリットは強制できない。

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  • [2015.11.13]

nippon.com 編集企画委員。1971年東京都生まれ。1993年東大法卒、大蔵省(現財務省)入省。1998年スタンフォード大政治学部博士課程修了。1999年政策研究大学院大助教授、2007年准教授を経て現在、教授。主な著書に『参議院とは何か 1947~2010』(中央公論新社/2010年/大佛次郎論壇賞受賞)など。

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