特集 シニア消費から見る日本の高齢化社会
ライフスタイルにこだわるシニア層:「百貨店にできることはまだある」
大西洋・三越伊勢丹ホールディングス社長に聞く
[2015.11.19] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL |

高品質な商品の品揃えと丁寧な接客、高いブランドイメージで顧客の信頼を得てきた日本の百貨店業界。シニア層の消費動向をどう分析し、どのような手を打っているのか。業界最大手の社長に聞いた。

大西 洋

大西 洋ŌNISHI Hiroshi三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長。1955年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。1979年、伊勢丹入社。執行役員などを経て、2009年4月に伊勢丹常務執行役員と三越取締役常務執行役員を兼任。同年6月、社長就任。2012年2月より現職。著書に『三越伊勢丹 ブランド力の神髄』(PHP選書)がある。

ひとくくりにできなくなった百貨店の業態

——社会の高齢化が日本の消費構造をどう変えるのか、その変化が小売業界にどう影響を与えているかについてお伺いしたい。その前に、日本の小売業における百貨店の位置づけ、百貨店をめぐる近年の情勢について説明いただけたら

日本のGDPが現在約500兆円。うち小売業の占める割合は140兆-150兆円ぐらいだ。eコマースの売り上げが15兆円、ドラッグストアとかコンビニがいずれも10兆円ほどの規模。百貨店は、以前は10兆円規模の産業だったが、時代の変化で現在は6兆円ほどだ。小売業の売り上げの中の、わずか4%になってしまった。かつての“生活文化としての小売業の象徴”というポジショニングにはないのだろう。

ただ、三越伊勢丹は、百貨店の6兆円の売り上げのうち、20%-25%のシェアを持っている。「百貨店のあるべき姿」を目指す路線を歩んでいる。

——コンビニのように100円で商品が買えるところと、百貨店に家族やカップルで足を運ぶ場合では、消費スタイルは全く違う。今の時代、“老舗の世界”は崩れてしまったのだろうか。それとも、もともとあった百貨店の中のボリュームゾーンが落ちていって、ステイタスだけが残っているのだろうか。

その部分は店舗や企業の考え方によってさまざまだと思う。当社は“百貨店は特別なもの”という意識で、価格競争には飲み込まれないできたつもりだ。ただ、他社の場合は、業態に関係なく価格競争に挑んできたところもある。もう百貨店は、ひとくくりではない。自分たちだけでも“This is the Department store”という意識でないと、ステイタスが守れない。

高齢者にも2つのタイプ

——そこで、社会の高齢化を小売業としてどう見ておられるか。自分で稼ぐ消費者が減り、ため込んでいたものを消費する人が増えてくる時代は、これまで日本の社会になかったと思うが。

相当に危機感を持っている。65歳以上の方が、4人に1人の時代。ただ65歳以上の方でも2つのタイプがあると思っている。いわゆる団塊の世代の方たちというのは人口構成でも大きいわけで、そこともう一つはその上の方たち。団塊の世代はいろいろなことにこだわりがあり、たとえ仕事をなさっていなくてもご自分のライフスタイルがあり、百貨店として提案できることはたくさんあると考えている。

一方、団塊の世代よりも上の方たちというのは、間違いなく購買力が落ちていく。ここは、マーケットとして小さくなると思う。シニア向けとしてはモノだけではなくて、やはりライフスタイルに関わる旅行とか、財産運用とか、あらゆることに百貨店として取り組んでいかなければならない。当社はカード会社を持っているので、その中で保険や金融商品のコンサルタントを手掛けている。そこをもう少し踏み込んでやっていくことも、将来的には考えている。

旅行に対するニーズは、ものすごく高い。価格が高い商品にも人気が集まっている。ほかには、昨年「医療モール」をつくる会社を立ち上げた。これは介護施設とかではなく、ジムであったりコミュニケーションの場であったり、文化面での提案などもできるサービスだ。

一方で、モノも売れないと収益的には難しい。スーツとかビジネス関連は売れにくいが、旅行に行く時の洋服とか宝飾類とか…、モノとコトをバランスよくお客様に提案していきたい。

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