特集 シニア消費から見る日本の高齢化社会
宅配食や御用聞きで「高齢者見守り」—シニア層に照準を合わせるコンビニ業界
[2015.11.26] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS |

コンビニエンスストア業界が、宅配サービスに力を入れている。セブン-イレブンのお食事お届けサービス「セブンミール」を中心に高齢化社会における“生活インフラ”としてのコンビニの役割強化を紹介する。

地域密着型の「御用聞き」サービス強化

コンビニ店舗では、日常生活に必要な雑貨や食料品、郵便切手からたばこまで販売し、店内にはセブン銀行のATMもある。地域密着型であり、自宅周辺にこうした便利な店があれば、スーパーより多少値段が高くても、ついつい利用してしまう。そのコンビニが食事の宅配サービスにも本腰を入れ始めた。かつての地元の酒屋さんなどが行っていた「御用聞き」業務の様相も見せている。

消費者の自宅まで届けるのは、日替わり弁当や総菜など日常生活に密接なものだ。食事の宅配サービスに参入している業態は少なくないが、コンビニ業界でもセブン-イレブンのほかファミリーマート、ローソンなどが参入している。

ファミリーマートでは高齢者専門の弁当宅配のフランチャイズ「宅配クック123」を展開。宅配料は無料、一食だけでも注文可能、正月三が日を除き年中無休で、ご飯とおかずをセットにした普通食から、塩分控えめ・低タンパク、やわらか食などのメニューをそろえ、一食600円~800円程度で提供している。宅配サービスにはセブン-イレブンがヤマト運輸、ローソンが佐川急便と提携している。

「生活インフラ」として“買い物難民”にも対応

青山誠一・セブン・ミールサービス社長。1981年セブン-イレブン・ジャパン入社後、ディストリクトマネジャー、マーチャンダイザーなどを経て、2010年にセブン・ミールサービス代表取締役社長に就任。

コンビニ業界最大手のセブン-イレブンは現在、国内に約1万8000のフランチャイズ店舗を持つ。未進出の県や過疎地、離島などは別として、セブン-イレブン・ジャパンの子会社で「お届けサービス」の運営を手掛けるセブン・ミールサービス(2000年設立)の青山誠一社長は、食事の宅配サービスのねらいについて次のように語る。

「高齢化社会の進行などで、最近では近くのコンビニにすら自由に行けない高齢者も多く、“買い物難民”の言葉も登場しています。社会環境の変化の中で、来店客を待つだけでなく、店舗から外に出ていく必要性が高まってきました」

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が打ち出した方針が、“近くて便利”な生活インフラとしてのコンビニの社会的役割だ。そうした認識を強める契機となったのが、2011年3月の東日本大震災だった。

「コンビニが特に被災地などでライフラインとして評価され、地域住民に利用していただいたことで、品揃えとサービスの見直しに取り組みはじめた」と青山社長は言う。「都市部であっても困っている人は在宅の1人暮らしのお年寄りや、体の不自由な人ばかりではなく、子育て中の主婦層の中にも宅配ニーズがあることが分かった」

最近全国紙に『その日、わが家の 玄関がセブン-イレブンになった。』というキャッチコピーの広告が掲載された。配達日の前日(一部の商品は当日)までに欲しい商品をネットや電話、ファクスで申し込めば、近隣のセブン-イレブンの店員が自宅まで届ける。500円以上の注文は配達料無料、年中無休のサービスだ。

それ以前に、「セブンミール」で主眼を置いていたのは健康志向に沿った「減塩」や「低カロリー」などだったが、高齢者や子育てママにまで目配りする生活インフラとしての役割を強化している。セブンミールの場合、食事の宅配サービスを受けるには、会員になる必要があるが、現在その数は全国で74万人に上るという。

人繰りの問題などフランチャイズそれぞれの事情もあるので本部からの強制はないが、現在、全国の店舗の約8割で宅配サービスを行っている。提携しているヤマト運輸の協力もあるが、その多くは店舗の従業員が顧客の自宅まで届けている。利用者の6割は60歳以上で、地域に密着したきめ細かなサービスは利用者に喜ばれている。

この宅配サービスは2013年度で売上高が前年度の倍の250億円。2015年度中には500億円を目指す計画だ。

年中無休の営業体制がコンビニの強み

順調な売り上げ拡大の背景には、社会事情の変化に加えて、セブン-イレブン側での高齢者向けの人気商品の品ぞろえや季節ごとの商品など消費者ニーズに合ったたゆまぬ商品戦略がある。特に健康志向が強い高齢者向けには、管理栄養士が監修してカロリーや塩分に配慮した日替り弁当を用意している。

「セブン・ミールサービスはあくまで、フランチャイズ店の御用聞きや品ぞろえのお手伝いをしているだけ」と青山社長は語るが、日替りの宅食サービスでも惣菜セットのカロリーや塩分の調整、要望に応じたご飯の量の増減など、高齢者に寄り添ったメニューを工夫している。

宅食業界の中には土日を休業とするところもあるが、コンビニ業界の強みは年中無休に近いサービスが可能な点だ。それだけ「生活のお手伝い」が可能という。高齢者は季節ごとの催事を大切にするので、クリスマスやお正月に照準を合わせて「プレミアム商品」を準備するなど、季節ごとに消費者ニーズに合った品ぞろえの工夫も怠らない。

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