「花を通じて異文化交流を深めたい」華道家・假屋崎省吾
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日本人には難しい「個性の発揮」を常に意識
——日本の伝統的な華道とはまた趣向の異なる、ユニークな作品の数々を国内外で発表されています。自分のスタイルをどのように説明していらっしゃいますか。
「基本は日本の伝統文化であるいけ花であるということです。私の場合は、基本を踏まえたうえで、現代に通じるもの、なおかつオリジナリティーのあるものを意識しています。日本人の多くは、やはり個性のアピールが苦手なんですが、海外の方はどんどんどんどん自分をアピールします。だから私は、花を通してですけれども、自分らしさというものを出していけたらいいなと思っています」
日本伝統のいけ花は「究極のエコ」
——日本伝統のいけ花は、簡素に花を切って飾るというもの。海外の人から、どのように見られているでしょうか。
「究極のエコ、とよく言われます。なぜかというと、本当に一本の枝と一輪の花で表現するからです。日本の空間は、障子ですとか、薄い明かりですとか、そこはかとない美を醸しています。そういう中では、たった一輪の花だけでも、非常に力強く、存在力のある表現ができるわけですね。これが、脈々と受け継がれてきた日本の美。これ以上、そぎ落とすことができないというような、そういうお花のいけ方。一方で、海外の方は、いつもドッサリと、これでもかこれでもかというぐらいお花をいけたり、飾ったりいたしますでしょ。ですから、日本のいけ花は、海外ではかえって新しい、非常に新鮮な世界だなというふうに、ご覧いただけると思うんです」
花はコミュニケーションの大切なツール
——日本の存在を世界にアピールする役割も担われています。花を通じた国際理解、異文化理解というのをどのように感じていらっしゃいますか。
「海外の方は、お花をとても大事に、たくさん使われます。お家の中でいけたり、あるいはプレゼントに使ったり。その点では、日本はまだまだ遅れているなとすごく思います。このように、もっと頑張らなくてはいけないなというところが日本にもいっぱいあるんですが、海外の皆様が、日本の文化を面白いなと思ってくださるので、それを私はどんどんご紹介しています。それから、花を通してコミュニケーションさせていただくことは、非常に大切だなと思います。もちろん、花は見ればわかるのですが、やはり言葉で説明をすることで、『ああ、こんなことを考えているんだな』ということを感じ合えます。日本は海に囲まれた島国ということで、割と孤立していると感じます。しかし、花を通じたコミュニケ―ションで、海外と近くなるような環境を作られたらいいなと思っています」
——作品を紹介した時、ヨーロッパとアジアの間で受け取り方に違いはありますか。
「違いはすごく感じます。色使いは特にそうですね。アジア系の方には黄色や赤が好まれます。すごく運気がいいということで、こうした色の花をいけますと、皆さん大喜びしてくださるんです。ヨーロッパ系の方は、美しいピンク色ですとか紫ですとか、エレガントな雰囲気の色の花をいけますと、『すごく味がある』と『奥が深い』というようなことで喜んでいただけます」
美に対価を支払う仕組み作りで貢献を
——ビジネスとしても大成功を収めておられます。そういう自分のもう一つの側面をどのように感じていますか。
「本当にまだまだです。イベントのお客様には楽しんでいただきたいです。その対価としてポケットマネーを出していただくという考えが大切だと思います。美術館に行くのも、音楽会に行くのも、映画館に行くのもそう。美味しいものに対してもそうですね。今、時代は不景気と言われていますが、嘆き悲しんでいても何も変わりません。美しいものに対して、皆様が目を見張ってくださって、それに対してポケットマネーを出していただける、そんな工夫や仕組みを探り、見つけられれば、日本はどんどん元気になります。そうした努力は、皆がそれぞれ頑張ってやらなければいけないことですが、そうしたことの一つを私はやらせていただいているのかなと思います」
聞き手=原野 城治(一般財団法人ニッポンドットコム代表理事)
11月18日(日)まで開催中の個展の様子を動画で公開。是非ご覧ください。