歴史問題に決着をつける最後のチャンスの年を迎えて
2015年のアジェンダ・セッティング

原野 城治 (聞き手)【Profile】

[2015.01.01] 他の言語で読む : 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS |

戦後70年の節目を迎えた。世界に、そして日本に待ち構えるものは何か。多言語発信サイトnippon.comの今年のテーマを編集長が解説する。

川島 真

川島 真KAWASHIMA Shinnippon.com編集長。東京大学総合文化研究科准教授。専門はアジア政治外交史、中国外交史。1968年東京都生まれ。92年東京外国語大学中国語学科卒業。97年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学後、博士(文学)。北海道大学法学部助教授を経て現職。著書に『中国近代外交の形成』(名古屋大学出版会/2004年)、『近代国家への模索 1894-1925』(岩波新書 シリーズ中国近現代史2/2010年)など。

アメリカの制約、中国の転換点

原野 新年を迎えて、この2015年の重要課題についてお考えを。

川島 この2015年、アメリカのオバマ政権は、さらに厳しい環境におかれることになります。財政の問題、議会との関係など、制約条件を考えると、思い切った政策を打てないでしょう。アメリカは国際政治上のさまざまな問題でリーダーシップを発揮することがさらに難しくなってきています。とはいえ、グローバルに見れば、ウクライナ問題であるとか、シリア・イラクのイスラム国といった世界秩序への大きな挑戦や変動が起きているので、思い切った政策・行動がとれないなかでも、それらへの対処はしなければなりません。

また経済の面でも、グローバルな新しい秩序を構築するということで、環太平洋経済連携(TPP)のような地域的枠組みへのルールづくりが、太平洋、大西洋の双方で進んでおり、これがまとまっていくかどうかが新しい年の注目点です。が、やはりここでも、アメリカ自身の国内における諸産業、議会、政権の関係がどうなるのかが大きな問題となります。

アメリカがこのような問題を抱えている中で、アジア太平洋を考えると、相当厄介な状況にあるといえます。いうまでもなく中国がとても大きな問題です。

中国という国は、現在、19世紀的な砲艦外交に近いことをやってみたり、あるいは20世紀前半のイメージで主権・国境を重視する外交を唱えてみたり、あるいはグローバルガバナンスといった最近の課題に対応したりと、いろいろと手を変え品を変え、国益の伸長を図ってきています。この中国にどう向き合うのかということがアジア太平洋地域の一番の課題であることはいうまでもありません。

中国が、とりわけ東アジアなど「周辺」において、主権や安全保障を強く主張していくことに対し、財政難のアメリカは、日本を含む西太平洋の安全保障体制を組み替えて、同盟国の力を借り、かつ、同盟国同士の横の連絡を保ちながら、アメリカの優位性を保ったままネットワーク型の安全保障網を作りたいと考えているようです。

アメリカがこの体制を上手に作れるのかどうか。アメリカが「リバランス」と言った時、何も対中包囲網の構築を目指したものではありません。アジア太平洋地域の安定を図ったうえで、発展が続くこの地域から富を引き出したいというのが狙いです。しかし、富を引き出していくためには安定している方がいい、安定するためにはアメリカと同盟国が軍事力を強化すべき、というロジックです。

しかし、このアメリカの理屈は、同盟国から見れば、もっと中国に厳しく当たるという予見を与えながら、現実にはそうではない、ということで頼り切ることができないものにみえる。もちろん中国から見れば対中包囲網に見え、より反発を呼ぶものになっています。アジア太平洋地域で、そして世界で、アメリカが自らの国益に即した論理を用いて政策を説明したときに、それが個々の地域でどのように認識されるのかということについて想像力を働かせながら、世界の信頼を勝ち得ていくことができるのか、ということが課題となるでしょう。

中国自身も、とても大きな問題を抱えています。習近平政権が2012年に発足して、最大2期10年となっている任期の前半の5年の終わりがそろそろ見えてくる時期になります。今の体制の総決算が見え始める時期であり、同時に政権後半期を見据えた新しいスタイルを打ち出してくる時期になります。これは経済でいえば「新常態」といわれるもので、これまでのように年率10%を超える経済成長を目指すのではなく、6%、7%の成長が当たり前で低いとは言わないというイメージを作っていくことになります。ある種の成長戦略の切り替えですね。あるいは地方等への資金の分配を行って、国内全体を落ち着かせようとしています。そして人民解放軍の合理化や直接掌握を進めていて、これが習近平自身の権力基盤形成に深く関わるのですが、これらがうまくいくのかどうか。2015年におよその方向性が決まってきます。

加えて、香港と台湾の民主化の動きがあり、とてもチャレンジングな1年間になるでしょう。民主主義、経済の自由化、法の支配という現在の我々の世界を支えている根源的なルールが中国ではどうなっていくのか、長期的に見て2015年が大事な年になると思います。

最大の課題である歴史問題

原野 日本にとってみれば、戦後70年という節目の年であり、昨年12月の総選挙の結果、安倍政権の長期政権化が確定的になり、さまざまな面で今後を見据えたアジェンダセッティングが必要になると思います。何が重要でしょうか。

川島 真

川島 安倍政権は財政、経済などさまざまな問題を抱えています。まずは、経済や財政面でアベノミクスが機能することを示さないといけないでしょう。これは必須です。しかし、2015年にとりわけ重いのが歴史を巡る問題です。第2次世界大戦終結70年だけではなく、日清戦争終結120年、日露戦争終結110年、対華21か条要求100年と節目を迎えます。歴史問題では、日本は世界から非常に厳しい目線を向けられているわけですが、逆に日本がこの問題にある種の決着をつける、もしくは、世界に対し、決着をつけようとしているという姿を見せる、とても大きなチャンスであるとも思います。あるいは最後のチャンスであるかもしれません。10年後になると中国が強くなり過ぎているはずで、世界で日本の声がより響きにくくなるからです。今ならまだ、日本の論理というものを押し出すことができる。だから、ここでやる必要があると考えます。

ただし、対中、対韓は、難易度がかなり高い。もちろんやるべきだとは思うが、歴史共同研究のような形で、対話を継続することが現実的な対応でしょう。むしろ、重要なのは、対米、対豪、対東南アジアでしっかりした歴史をめぐる「和解」の像を内外にしっかりと示すことです。この70年の間に、対米、対豪、対東南アジアではさまざまな形の和解を行ってきました。その成果というものを象徴的な形で示すべきです。戦争を巡って日本は侵略も行っているし、戦争犯罪も行った。これに対し、日本は、戦後、何もしなかったわけではない。賠償、平和友好交流事業、そしてアジア女性基金と取り組みなど、さまざまな取り組みをしてきたわけです。まずはこれまでちゃんとやってきたことの成果を踏まえて、安倍首相が、これらの国の首脳とで何らかの談話を出すなり、歴史にかかわる重要な場所に行って、そこで宣言をしてみるなり、何らかの行為をするなどのことがあっていいと思います。

原野 安倍首相に対するアメリカの評価の低さは何に起因しているのでしょう。歴史認識の問題なのでしょうか、それとも、今回の総選挙で大勝したことで憲法改正など「タカ派」政策に進むことへの警戒感なのでしょうか。

川島 アメリカでの評価は動いているように思います。2013年末の靖国参拝の後は厳しいものがありましたが、しだいに評価も回復したような印象があります。ただ、リベラルな向きからの目線が厳しいのは確かですね。今回の総選挙の運動が始まる段階で、安倍首相は「過半数」という目標を掲げました。「低すぎる」という批評がもっぱらでしたが、私はあれは「改憲を目指すわけではない」というメッセージとしても受け止められると解釈しています。こういう日本国内ではある程度わかるメッセージは海外には伝わりにくい。まずは日本全体が右傾化しているという認識であるとか、「タカ派」的な憲法改正をするのではという疑念とか、軍国主義化とか言われている話とかをまずは修正していかなければいけません。

世界で、とりわけ関心が集まっているのは、「民主」「自由」「人権」そして「歴史」といったテーマです。「歴史」の問題では中国とか韓国が主張しているものもありますが、やはり慰安婦の問題が最も重い。人権問題が絡んでいるので適切な対処が必要です。靖国参拝問題も、アメリカにおいてもかなりの批判があるのが事実なので、歴史認識問題は、中韓をにらんで考えるというよりも、アメリカやグローバルな社会全体を見据えて、かれらにどうやって日本の姿を見せるのかということから考えたほうがいいと思います。つまり、日本は、既存の重要な普遍的価値の擁護者である、ということを示すように、歴史認識問題について適切に対処していく必要があります。

韓国との関係改善は可能か

原野 韓国との関係も、日韓基本条約締結50年という大きな節目の年を迎えることになります。中韓には、ある種の跛行性があるのかと思えます。中国は前向きに関係改善に向かっている兆しが見えますが、韓国は国内的な事情もあってもたついています。

川島 韓国の場合、朴槿恵大統領の個性、朴政権が持っている特質が最大の原因となっているようです。それでも大分、機が熟しつつあり、関係改善に向けての色々な動きがあるなどといったメッセージも伝わってきています。

歴史認識問題に韓国側がこだわるのは分かりますが、まずは対話を行うという姿勢を特に青瓦台に持っていただくことが肝要です。また、歴史認識問題の中の慰安婦の問題とそれ以外の話を分離できるかどうかがポイントなように思います。歴史認識問題全体を十把ひとからげに扱うのではなくて、個別に腑分けしていくという作業、これがないと日本側は対応できないのではないでしょうか。

日本は過去にアジア女性基金を作り元慰安婦に対する援助を行いました。十分でないなどの不満があるかもしれませんが、このことを適切に評価するなど、日本側の取り組みについても見て戴かないと話し合いの素地がないわけではありません。難しいこととは思いますが、韓国側に、こうしたことへの理解を求めながら対話を進めていくしかないでしょう。

日韓双方とも民主化した国、民主化した社会同士です。首脳同士の交流が止まっていても市民レベルの交流は自由に行われています。韓国側もそこは分かっていて、日中関係のようにトップの関係が止まれば、すべて止まるというわけではありません。そうした意味では、日韓関係は日中と同じに考える必要はありません。

原野 この30年ほどを見ていると、日本が謝罪をする、その片方で慰安婦の問題や歴史認識問題を指弾するという、2面を使い分け、同時並行で行う外交を中国も韓国もやってきました。それをそろそろ断ち切らないといけないとすれば、やはり慰安婦問題や歴史認識問題で強いメッセージを出す必要があるのでは。

川島 ご存知のように1980年代から90年代までは、歴史を巡る問題というのは経済とセットとなって取り上げられてきました。日本の経済が強かったときだったので、経済面での日本側の譲歩を引き出すことが、歴史問題で抗議をすることと半分セットになっていました。逆に言うと歴史認識問題にも歯止めがきいていたことになります。しかし、中国は2010年にはGDPで日本を抜いてしまいましたし、韓国も規模は日本より小さいものの、韓国人の認識としては韓国企業の方が日本企業よりグローバルに展開しているということになっていて自信を深めています。日本から経済で何か勝ち取ろうという部分がだいぶ落ちてしまっています。経済を取引材料にして歴史認識問題に対処するということはできなくなった、日本としてもそういう認識を持つべきです。

さらに日本は、2006、07年に最高裁判所が戦後賠償について、それまでの判断を変更しました。日本は戦後、各国と講和条約、平和条約を結んだ際に国家賠償を行うか、国家賠償請求権の放棄をされてきたが、個人賠償については別というのが従来の判断でした。しかし、最高裁はこのとき個人賠償レベルでも請求権は放棄されているという判断を下しました。それまでは個人の賠償請求はありえるとしていたのでさまざまな賠償が日本の司法の場にきて、司法による決着がありました。しかし、それが出来なくなりました。経済だけでなく司法の場も歴史認識問題で機能しないわけです。そうなりますと、市民レベルの交流で底上げしていくとか、政治決断で決着を図るしかない、歴史認識を巡る処理の方法もだいぶ変わってきていることを認識する必要があります。

平和構築の論理と日本

原野 城治

原野 歴史の和解というと、いつも例に出されるのはドイツ・フランスの関係です。エリゼ条約を結んで市民レベルの交流で和解を進めて行きました。必ずしもドイツの方式が日本で通用するとは思いませんが、一つの参考にはなります。また、ネルソン・マンデラがアパルトヘイトを廃止して民主主義国としての南アフリカ共和国を作り直す時に、「真実和解委員会」をつくり、ここで歴史認識をしっかり行いました。「許すけど、しかし忘れない」というルールです。日本はこのような論理的、弁証法的なやり方というのをこの15年ぐらいの間、必ずしもできていなかったのではないかと思いますが。

川島 たしかに平和構築という発想が生まれてからの和解は、そのようなやり方が出来ています。例えばアフリカなどで紛争を収めていく過程の中で、紛争が終わった後に子供たちの将来を見据えてどうやって教育をしていくかが大きな課題になった。歴史を巡る話もそこに入ってきていて、「許すし忘れる」「許すが忘れない」「許さないし忘れない」のパターンがあります。中国、韓国は「許さないし忘れない」ですね。日本はずいぶん謝ってはいますが、最低でも「許すが忘れない」、多くの場合は「許さないし忘れない」という反応です。

第二次世界大戦終結当時には、平和構築として両国国民が和解していって平和な環境を作っていくにはどうすればいいか、という発想が十分ではなかったでしょう。独仏のエリゼ条約も、戦争の和解を目指した条約かというと必ずしもそうではなくて、結果論として和解のツールとして機能していった、というものです。

日本の場合、第二次世界大戦を終え、植民地支配を終える時、敗戦国だったわけで、自分の方から主導的に和解を言い出しにくかった、という事情があります。ですが、もう一度、この段階に立ち戻って、今からでもできることをやっていく、平和構築的な発想を遡及適用でもいいのでやっていく、そういう考え方があってもいいと思います。

ドイツ・フランスの例から学ぶことというのは、もちろんありますが、これを「成功例」として東アジアにそのままもってくるのには無理があります。戦後西ヨーロッパような、EC、NATOといった経済協力も成し遂げ安全保障もいっしょだという環境の中でやった和解の話だからです。東アジアでは、日中間で安全保障面の問題を抱えていましたし、韓国や台湾との間にもNATOに相当するような地域安全保障体はありませんでした。ただ日韓は、お互いに民主化していますし、安全保障が地域的になっていく可能性もありますので、むしろこれから、と考えたほうがいいでしょう。

最大の焦点「安倍談話」

原野 今年、新しい首相談話、つまり「安倍談話」で慰安婦問題がどう扱われるかが、重大な問題と言えますが、ハンドリングを一つ間違えると、さらに深刻な事態になるかもしれません。

川島 特に慰安婦問題は、歴史をめぐる問題というだけでなく、人権問題を含んでいて、世界の普遍的な価値に反する問題として捉えられがちです。つまり、中韓に絞った問題ではなくて、欧米全体を敵に回しかねない案件ですので、この問題については特別な意味があるとして、日本として主張すべきことを主張して、対応、処理をすべきだと思っています。まずその大原則を認識すべきです。無論、多くの誤解や事実誤認があるので、それはおおいに正すべきです。

安倍談話は、もしあるとすれば村山談話と河野談話を否定せず、それを継承することを前提にして、新たに出すことになるだろうと思います。この2つの談話の継承は、すでに政府も明言しているので、それは変えられないでしょう。ただ、危惧するのは、その時、村山談話や河野談話の上にラップするような新しい談話をつくって、それらの談話と矛盾があるような印象を内外に与える可能性です。談話を継承すると言っておきながら、それとは異なる印象を与えるものを出せば、さまざまな解釈の余地を与えてしまうわけです。繰り返しですけれど、あくまでも中韓に対抗するのではなく、世界の普遍的な価値に反さないようにやらないと、中韓への反論になっているが、ワシントン、ヨーロッパその他敵に回すという事態を引き起こす可能性があります。

無論、この際、欧米における誤解を背景にした、過度にリベラルな言説におもねる必要はありません。歴史としての「事実」を究明し、発信することと同時に、現在の人権問題の側面から対応するということの二面対策が必要なのです。

あくまでも普遍的な価値観においては、アメリカ、ヨーロッパを含めてちゃんと、日本は和解をしてきた、こうした問題を適切に処理している、という姿を示すような談話であって、その上で、中国や韓国の言っている話にもちゃんと反論になっているというものであることが望ましいです。また、日本は中韓に対して、ずっと敵対したわけではなくて、ご存じのように金大中氏や温家宝氏は、日本の取り組みに対して肯定的な評価をしてきたわけですから、そのことを踏まえながら、日本のやってきたこと、それに対して中韓からも評価を得てきたことも、ちゃんと談話の中に組み込んで、日本はずっとこの問題にとり組んできたとうことを示す談話になることが望ましいと思っています。

長期政権だからこそ目指せる戦後の終結

原野 アジア全体でみると、2015年以降、ASEANを中心として大きな経済圏が立ち上がってきます。それで、首相はかなり一生懸命アジアの歴訪をしていますけれども、十分咀嚼できているのでしょうか。

川島 まず、東南アジアをどう見るかですが、日本の東南アジア外交、あるいはASEAN+3外交の基盤となる発想は、アジアの地域統合が機能的なものであるというものです。だから、ヨーロッパと違って「ヨーロッパ人」をつくろうというような、ある種のウェットなものはあまりないわけです。経済的な関係をどんどん緊密化していって、そこにおけるさまざまなルールをちゃんとつくっていく。これが統合だと思っているのですね。

これから恐らく大事なことは、別に東アジア人をつくる必要はないにしても、これから成長していくのは東南アジア、あるいはプラスアルファの地域と、ある意味でウェットな関係をつくっていく意味で、もう一回重点的に留学生や国民の交流をやっていくべきだと思うのですね。東南アジアの人たちともう一回ちゃんと人間とフェイス・トゥ・フェイスの関係を築く、そういう時代に入ったと思います。それはもう日本が東南アジアに援助をする関係ではなくて、互いに対等に協力をするような関係です。そろそろ頭を切り換えて、東南アジアを十分なアクターと考えて、対等に交流をする。そこにちゃんと予算と手間暇をかけていくということです。その点で、昨今できた国際交流基金のアジアセンターには期待しています。

原野 アジアには日本にとって、北朝鮮や北方領土など残された問題がまだあります。

川島 今後四年間、自民党政権が続きますので、大きなチャンスだと思います。つまり、こういう領土問題というのは、時間のかかる問題で、首脳同士の信頼関係も必要となりますから、これは安倍政権だからこそできる、取り組める課題だと思います。特に北朝鮮は戦争状態、また植民地支配を終結させ、平時の関係を築くという、戦後の日本が背負ってきた外交の最後のパズルのピースなわけです。戦争をちゃんと終わらせて、植民地支配も終わらせて、通常の関係を築く。北朝鮮だけが終わっていません。これはある意味で戦後の終結でもあるわけですね。そこをちゃんとできるのは安倍政権ではないかと、私は期待をしています。

日本を伝えるということ、日本に伝えるということ

原野 われわれnippon.comも4年目を迎えます。どんなことをこれからやっていかなければいけないとお考えですか。

川島 まず第一に、格差社会が広がってきて、国内でいろいろなところでナショナリズムが強まっている、という指摘があります。多くの国々の国内の世論というのは、自分の国のことはきわめて多様に見るわりに、外国のことになるとすごくものを単一化して見るのですね。一人が全員になってしまうのです。日本もまた、海外からあまり理解されないところもあります。東アジアであれ欧米であれ、日本の中にも多様性があるということは、なかなか分かってくれないと思います。

政府の対外広報ですと「日本の正しい姿を発信する」と言いますが、私は別に日本の正しい姿でなくとも、日本の中にあるさまざまなものの見方、観点というものを出す、ということでいいのではと思っています。もちろん、極端な議論は出す必要はないと思っていますが、だいたいこのへんだなといういくつかの意見というものを、特集等々を通じて、ちゃんと世界に発信していく。複数の観点を出すことによって、私どもの議論や考え方の幅を示すことができます。私は国内問題を発信することにも意味があると思っています。そしてその背景には、日本を理解して欲しいだけではなく、日本という国がある種の課題の先進国でもあり、今どんな問題に取り組んでいて、どのような選択肢があって、どういう考えをもって何を選んだか、結果がどうだったかということを発信し、かつそれをちゃんと一つのアーカイブとして残して、海外からも、いつも引き出せるようにしておく。これはものすごく大きな意味を持つと思うのですね。

二つ目は、世界のさまざまな事象、現象、例えば東アジア地域に起きていることを、日本側がどう見ているのかということを示すことも大事な点であるということです。例えば中国で反日デモがあるなら、日本にも反中デモがあるだろうと思われるじゃないですか。現実には、そういうことではないわけで、日本側が反中デモをどうみているのか、それに仕返しをするために日本国内で反中デモをするなんてことにはならない、そのことをちゃんと発信をしていく。グローバルなこと、海外のことだから、日本は関心がないわけではなくて、こういう観点で見ているんだよということも、同時に発信をしていくことがあるだろうと思います。

三つ目ですが、これは特に2015年であれば、歴史の問題、あるいは、先ほど申した普遍的なさまざまな価値の問題で、日本に向けられる目線に対して応えていくことです。さらに、そういう問題について、世界の人たちは、日本をどういうふうに見ているのかということをnippon.comの日本語版を通じて日本側に発信する。これもとても大事だと思うので、そうした海外の日本の目も、歴史やそうしたいろいろな問題を通じて、日本に対して発信するという作業ができればいいなと感じています。

  • [2015.01.01]

政治ジャーナリスト。1972年時事通信社入社。同社政治部記者、パリ特派員、解説委員、秘書部長、編集局次長、ジャパンエコー社代表取締役を経て、2011年から16年3月までニッポンドットコム代表理事。2006年より日本国際問題研究所評議員。2008年「イタリア連帯の星」カヴァリエーレ章受章。2009年TBS番組コメンテーター。

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