3・11後の日本だからこそ伝わる映画『寄生獣』の世界観—ヒットメーカー・山崎貴監督
[2015.04.24] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية |

連載終結後20年、人間の脳を乗っ取るパラサイトとの戦いを描いたコミック「寄生獣」をVFXの名手・山崎貴監督が実写映画化。邦画界きってのヒットメーカーが、映画化に込めた原作の世界観と魅力を語る。

山崎 貴

山崎 貴YAMAZAKI Takashi1964年生まれ。『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』に衝撃をうけて特撮を志す。阿佐ヶ谷美術専門学校卒業後、1986年(株)白組入社。93年伊丹十三監督『大病人』『静かな生活』でデジタル合成、SFX担当。2000年『ジュブナイル』で監督デビュー。以後、『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)、『続三丁目の夕日』(07年)、『BALLAD 名もなき恋のうた』(09年)、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10年)、『friends もののけ島のナキ』(11年)などの話題作を監督。『永遠の0』(13年)、3DCGアニメーション『STAND BY ME ドラえもん』(14年)では、それぞれ第38回日本アカデミー賞最優秀作品賞他7部門、最優秀アニメーション作品賞を受賞する。

ハリウッドが映画化権を握っていた「伝説」のコミック

人間の体が未知の生命体に侵略されるといえば、米国SF作家ジャック・フィニイの名作『盗まれた街』を基にハリウッドが何度も映画化した『ボディ・スナッチャーズ(The Invasion of Body Snatchers)』を思い起こす映画ファンもいるだろう。家族や友人がいつのまにか人間ではなくなっているという不気味さは、映像化への意欲をそそる素材なのかもしれない。そのハリウッドが原作権を獲得したものの、ついに映画化に至らなかったのが、人間の脳を乗っ取るパラサイトと人間たちの戦いを描いたコミック「寄生獣」だ。

岩明均原作の人気コミックは1989年から1995年にかけて連載され、単行本は累計発行部数1500万部を突破。ハリウッドが長らく原作権を保持していたが、映画化が実現しないまま権利が日本に戻った。このコミックを、VFX(特殊視覚効果)第一人者で数々のヒット作を放ってきた山崎貴監督が2部作の実写映画版『寄生獣』として完成させた。前編は2014年11月に公開され、観客動員150万人突破のヒット、4月25日には完結編が公開される。

ジェームズ・キャメロン監督『T2』に影響?

「連載当時、すでにVFXの仕事を始めていましたが、この作品は絶対誰かが映画化する、その際は仲間に入れてもらおうと、自分の顔の映像を撮って、顔がグシャッと崩れてまた元に戻る様子をデジタル化したデモフィルムまで作りました。でも、結局誰もやると言い出さなかった」と山崎監督は振り返る。

当初、映画業界人の間でウワサになっていたのは、原作コミックを知っていたジェームズ・キャメロン監督が、『ターミネーター2』を撮るがために「寄生獣」の権利を買い取ったという説だ。「一種の“都市伝説”ですよ。でも、確かにT-1000(『T2』に登場する液体金属製のボディを持つターミネーター)が、寄生獣にインスパイアされたような動きをする。影響は受けていると思います」。

実際に映画を撮る過程で、ハリウッドがなぜ実写化に踏み切らなかったのかを改めて考えてみたという。「多分善悪がはっきり分かれていないからじゃないかな。キリスト教的な考え方だと、納得できない話なんです。多神教の日本では、寄生生物たちが人間より上位の(一種の)“神”だと捉えることもできる。誰が悪で誰が善なのか判然としない、あるいは、個人の中にすべて内包しているという描き方は、アメリカではわかりにくいのかもしれない」。

主人公の泉新一を演じる染谷将太(左から2人目)は、2011年ベネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を受賞した実力派だ。(C) 2015 映画「寄生獣」製作委員会

「寄生獣」の主人公・泉新一はごく普通の高校生だ。ある日未知の生物に右手を食われ、そこに寄生したパラサイトとの共生を余儀なくされるが、やがて奇妙な友情がそのパラサイト“ミギー”との間に芽生える。新一・ミギーと人間を捕食して人間に擬態するパラサイトたちとの、種の存亡をかけた壮絶な戦いが繰り広げられる。

この主人公の在り方がまさに日本的だと、山崎監督は言う。「主人公が二つの種族の中間にいるというのは、極めて日本的です。仮面ライダーしかり、ウルトラマンしかり、デビルマンしかり…。一見ハリウッドのインベーダーもの、“乗っ取りもの”の流れをくむようにみえるが、『寄生獣』の世界観は日本独特だなと、作っている過程で実感しました」。

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