特集 ポップカルチャーは世界をめぐる
北京が萌える「日本動漫」
北京の動漫イベントとキャンパス内「メイド喫茶」を訪ねて

小林 さゆり【Profile】

[2012.07.06] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL |

日本のサブカルチャーが中国でも人気だ。中国語にはアニメとマンガを総称した「動漫」(ドンマン)というユニークな造語がある。北京の有名大学で開かれた「日本動漫」のイベントなどを通じて、根強いブームの秘密に迫った。

中国最大の大学内アニメ・マンガ同人誌即売会

北京の名門大学の1つ、中国人民大学で年に1度の同人誌即売会「臨界動漫文化節・同人交流会」(中国語の正式名称は「2012年帝都第五届臨界動漫文化節曁同人交流会」)が2012年5月13日開催された。同大学のサークル「臨界動漫協会」が主催し、今年で通算9回目。大学サークルが主催する同人誌即売会では中国最大規模といわれ、学内サークルから、遠くは香港、台湾まで、100以上の団体が出展、約1万人(主催者発表)が訪れた。

臨界動漫文化節・同人交流会の来場者たち

来場者のお目当ては、ここでしか手に入らないマニアックな作品やグッズ類。その多くが日本のアニメやマンガ、ゲームのキャラクターを使った二次創作物で、原作と見間違うほど美しいポスターやカレンダー、イラスト集が飛ぶように売れる。著作権問題は残るが、東京で毎年2回開催される世界最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」と同じように、権利サイドが販促のためにあえて黙認している感がある。

「日本動漫」と中国への愛国心は別レベル

なぜ日本のアニメやマンガにひかれるのか? 来場者に聞いてみた。

「日本動漫は先進的。スキルもストーリー性も声優のレベルも高くて、引き込まれる」

「日本ではマンガからテレビアニメ、映画、出版、キャラクターグッズまで、一連の産業チェーンができ上がっているところがすごい。中国ではまだまだ」

「コンテンツから真面目さや思いやり、団結心など、日本人の良さを知った」

「国産アニメはほとんどが幼児向け。主人公が小さい子どもでストーリーも単調なので、若者は興味が持てない」

「中国アニメは教育的・道徳的でないと当局の審査に通らず、テレビ放送できないことが多い。そのため無難な古典をテーマにしたものが多く、伝統に縛られ創意工夫に欠ける」

来場者たちがコアなファン層というのはあるが、称賛の声がほとんどだった。学校で抗日戦争の歴史や愛国主義を学んでいるのになぜ?と質問すると、「歴史は歴史で認めるけれど、文化は文化と割り切っている」「愛国心はもちろんあるが、個人の趣味は別」という答えが返ってきた。

日本のアニメで育った「80後~90後」がマニアに

中国のアニメブームの歴史を見ると、先駆けとなったのが改革・開放後の1980年代にテレビ放送された手塚治虫のアニメ「鉄腕アトム」だ。その後2000年代初めにかけて「ドラえもん」「一休さん」「名探偵コナン」「クレヨンしんちゃん」「ちびまる子ちゃん」といった日本アニメが次々と放送されて、子どもたちを魅了した。

この時代に生まれたのが、中国で「80後」(バーリンホウ、80年代生まれ)、「90後」(ジュウリンホウ、90年代生まれ)といわれる若者たちだ。「小皇帝、小公主(姫)」として過保護に育てられた一人っ子世代で、購買力や自己主張の強い新世代でもある。中国13億人口のざっと3、4億人(20~30%)に上るとされ、そのうちの少なくない数の若者が、日本動漫の熱狂的マニアになったと見られている。

しかし、中国当局は06年、子どもたちへの“悪影響”を危惧するとともに国内産業の振興を図るため、ゴールデンタイムに海外アニメの放送を禁止する措置を取った。

それでも「上に政策あれば、下に対策あり」といわれる中国。日本動漫は海賊版やインターネットの違法視聴を通じて急速に広まっていった。今や「宅男」「宅女」(オタク)、「Cosplay」(コスプレ)、「萌」(萌え、少女キャラクターなどに対する好意)といった日本発のアニメ用語は、中国でもよく使われている。

  • [2012.07.06]

北京在住のライター、翻訳者。2000年9月から5年間、中国国営の雑誌社に勤務したのち、フリーランスに。中国の社会や文化、暮らしなどについて、日本の各種メディアに執筆している。訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)、著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社、日中英3カ国語版)など。

website:個人ブログ『北京メディアウオッチ』http://pekin-media.jugem.jp/

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