特集 日本のロボットは人に寄り添う
なぜ、日本の研究者は人型ロボットを作るのか
「人間を理解する」人型ロボット研究の最前線
[2012.05.10] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية |

日本のロボットは世界トップクラスの水準を誇る。中でも「人型ロボット」は、日本が大きくリードする開発分野だ。第一人者・早稲田大学の高西淳夫教授に、人型ロボットの進化と今後の可能性について語ってもらった。


1956年、福岡県出身。工学博士。早稲田大学創造理工学部総合機械工学科教授、同大ヒューマノイド研究所所長。

——日本の人型ロボット(※1)研究の歴史は古いですね。

「私の指導教授だった故・加藤一郎先生(※2)が始めたのが、まさに人型ロボットの研究でした。人型ロボットの研究とは別に、コンピューター技術の台頭や機械の自動化といった産業の大きな流れがありました。その中で、工場の中で機能する機械として、インダストリアルロボットというカテゴリー名がついた機械が米国で販売され大成功しました。本来ロボットとは人型ロボットを指していたのですが、その大成功とともに、ロボットという言葉が広く用いられるようになる一方で、人型であるというロボットの意味合いが徐々に薄れてしまいました。世の中の理解がそういう傾向でしたから、加藤先生はあえて『人型』という言葉を形容詞のように付けて研究を始めました。

しかし、当初は研究テーマに『ロボット』と付くとSFの話といった認識から、子どものたわ言みたいな機械を作っているのではないかと思われ、研究費が付きにくかったようです。当時の資料の中には、『ロボット』ではなく、『人工の手』や『人口の足』の研究などと書いた研究費の申請書が残っています」

目標は「人」。永遠に到達できないと思うから、やめられなくなる。

——日本の研究者はなぜ人型ロボットを作るのでしょうか。

「人型ロボット研究の最大の問題、あるいは宿命というのは、『人という明確な目標がある』ということです。スタスタ歩いて、あるいは走って、さらには五輪やW杯に出るような素晴らしい運動もするし、片や言語を獲得して自在にしゃべり、文字を発明して脳に高度の機能を持つ——。こうした素晴らしい人間を目標としていることです。ロボットに人のまねをさせようとすればするほど、永遠にゴールに行きつけないと痛感します。そのために、やめられなくなってしまいます。

ただ、進化はしています。加藤先生が、WABOT-1という全身型の人型ロボットを作った時、2足歩行の部分の機能は1歩が45秒ほどかかっていました。歩幅も10cmぐらいでした。ところが今は、それこそランニングができる2足歩行ロボットもあります。高西研究室のロボットKOBIANの歩行速度は、ほぼ人と同じで1歩1秒を切ります。歩幅も最大で40cm。膝を伸ばして人と同じような形で歩けるロボットになったと言えると思います。

コンピューターの発達のおかげで、最近はロボットも画像処理などの高度な機能を持てるようになり、人とコミュニケーションを取るということも含めて、高機能になりつつあると思います」

2足歩行ヒューマノイドロボットKOBIAN-R。2足歩行のほか、複数の表情も表現できる(末尾ギャラリー参照)。写真は、驚きの表情を出した「驚きのポーズ」。

人間形サキソフォン演奏ロボット WAS-2RII。「上唇を上下させることで音圧を、下唇を上下させることで音程を変化させられます」(高西氏)

 

——宗教などの社会的影響から、日本と欧米でロボット研究の姿勢・傾向は異なりますか。

「昨年、講演などのためドイツやオランダに行きましたが、先方から、『技術の話は半分ぐらいにして、残りの半分は日本だけなぜこんなに人型ロボットが多いのかについて話してくれ』と言われました。やはり向こうでは、『人を創るといった神と同じ行為をやってはいけない』というキリスト教の影響が根底にあり、人的な形をした自動機械に対して、まだ根底的に抵抗感があるなと思いました。

欧州でも現在は、人型ロボットを使って人を解明しようと、道具としての人型ロボットであれば研究のファンドが付くようになってきています。ただ、人と同様のサイズで、人のように2足歩行できるようなロボットは、欧州ではまだ技術的に難しい状況です。そういうものについては、早稲田大学のほうに話が来て共同研究をやっています」

(※1)^ 高西氏によると、「ロボット」は、チェコ人の劇作家カレル・チャペックが1920年に発表した戯曲『ロッサム万能ロボット会社R・U・R』に出てきた言葉。チェコ語やドイツ語で「労働者」や「奴隷」のことを「ロボター」と言い、そこから生まれた。現在は、「人の外形や中の構造に似せて作られた自動機械」を特に、「人型ロボット」(英語では「ヒューマノイドロボット」)と呼ぶことが多い。日本ロボット工業会(JARA)の統計によると、2010年、日本の産業用ロボット稼働台数は約28万6000台で、世界(約103万5000台)の27%を占め一国としては世界第1位。

(※2)^ 早稲田大学教授。学科横断グループで世界初の人型ロボットWABOT-1を開発した。

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  • [2012.05.10]
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