「いざ、日本の祭りへ」(2) 博多祇園山笠と博多ガイド

博多の名物グルメ探訪

文化 暮らし

博多(福岡市)のグルメ散歩。知って得する博多の食にまつわる話題を、今回は厳選して3つ紹介する。中国人翻訳者Gの体験記も一緒にどうぞ!

屋台で味わう食と人情

訪れた屋台「なかちゃん」(福岡市・渡辺通りの三越前)。中央が大将の中川陽一さん。普段は女性客が多い。

博多・福岡は、規模、知名度ともに日本有数の屋台エリア。行かずにはおれないでしょう!ということで、夜の街に繰り出した。通りに連なるのれんから、鉄板で調理する香ばしい香りと、にぎやかなおしゃべりがもれてくる。これこそ、アジア共通の食の活気だ。ただ、訪れた晩はあいにくの雨で、席を埋めていたのは、悪天候でも通ってくるコアな常連客。到着早々、手練れの彼らに挟まれることに…。→詳しくは、Gの屋台体験記で。

作ってうれしい“マイ辛子明太子”

辛子明太子道場(福岡市博多区の福岡観光会館はかた内)の“師範”友納敦史さん

博多の名物はと問うと、必ず出てくる品の一つに辛子明太子(からしめんたいこ)がある。Gも大ファンと聞き、自分で漬けて土産にできる「辛子明太子道場」に行ってみた。これまでの“入門者”は修学旅行生からTVタレントまで幅広いとのこと。オリジナルの味を楽しめることから、結婚予定のカップルがやってきて、結婚式の引き出物用に作る―なんてケースもあったそうだ。どんな味に仕上がるか…。→詳しくは、Gの辛子明太子漬け込み体験記で。

もつ鍋はキャベツとニラの山が沈没したら出来上がり

もつ鍋の“成長”記録。

Gに食べられないものはないか尋ねると、「中国人は何でも食べるよ」と元気な返事。「空を飛ぶものは飛行機以外、海にいるものは軍艦以外、何でも食べる」のだという。それじゃあ!と、博多名物のもつ鍋を食べることに。もつとは動物の内臓のこと。何でも食べる中国人Gもさすがに食べたことがないというが…。博多の総鎮守・櫛田(くしだ)神社の斜向かいにある博多あかちょこべ(福岡市博多区)で、どーんと目の前に出されたのは、あふれんばかりに盛られたキャベツとニラ。火を入れるとみるみる鍋の中に沈んでいった。にんにくをトッピングしてさらにグツグツ。食べごろと言われてお玉を持ち上げると、主役のもつが初めて姿を現した。さて、お味は? 「おいしい。意外とあっさりしているんだ」(G)。

Gの屋台体験記

キャベツと豚の炒め物。

あいにく雨の日だったので、あわただしく店の前に行き、のれんをくぐって入りました。すでに3、4人のサラリーマン風の男性が中で飲みながら談笑していました。大将は料理を作りながらお客さんにお酒を注ぎ、たまには一言、二言、口を挟んで楽しそうな雰囲気でした。

辛子明太子が入っているのは博多ならでは。

入口の近くに座り、食べ物と飲み物を注文しました。この時、また2、3人が入り、常連客のようで、気軽に大将とほかの客と挨拶してから、席に座りました。まだ10人足らずでしたが、もう詰めなければ座れない状態でした。初めてこのようなところに来たせいもあって、見知らぬ男の人の中にポツンといる自分が急に心細くなり、何をすればいいかわからず、黙々と食べるしかありませんでした。

大将によると、メニューの数は、百種類以上! お客さんの好みとリクエストで作ったオリジナルの料理も多いそうだ。

こんな時、コの字型になっているカウンターの向こうに座っていた方が、大将の作り立ての明太子の卵巻を「試してみて」と半分に切って親切に差し出してきました。断ろうとしたら、大将が、「屋台はこんなところだよ、みんなで一緒に分かち合うんだ」とアドバイスしてくださいました。さらに思いがけないことに、ずっと何かを書いていた隣の年輩の男性が、私に一枚の紙を見せて、「合っているかどうか見てくれないか」と言いました。

李白の漢詩を書いた日本人にびっくり

それには、李白の詩「早発白帝城」が書かれていました。「朝辞白帝彩雲間,千里江陵一日還。両岸猿声啼不住,軽舟已過万重山」、何と一字の間違いもありませんでした。近くに座っていた若い男性も驚いて、「なんで知っているの」と聞き、「一昔前の人間はみな教養として漢詩を読んだよ」と老紳士は自慢気な表情を浮かべながら話しました。すると、店内の話題は中国語に変わり、「呉越同舟」や「走為上」(勝ち目が全くないなら全軍をあげて敵を避け逃げるのが最善の策である、の意)などで話が盛り上がりました。知らないうちに私の不安も消え、自然とみんなの会話に溶け込み、あっという間に一時間余りが過ぎてしまいました。

博多・福岡の屋台メニューの代名詞、ラーメン。

短い時間の体験でしたが、なんだか屋台の魅力が少しは分かったような気がしました。屋台がみんなに愛され、毎晩のように賑わいを見せているのは、美味しい料理を堪能できるだけでなく、ここでしか体験できない風情があるのではないかと感じました。どこから来たか、どんな身分かは関係なく、ここで一緒に座れば、見知らぬ人でも友達のようにわだかまりなく気軽に接し、飲んで食べて、またおしゃべりして、笑いながら一日の疲れを癒します。このような小さなスペースの中で、温かい人情が息づいて、人々にとってストレスの発散やリラックスのための最高の場所となっているに違いありません。

Gの辛子明太子漬け込み体験記

工房到着後、この日の指導責任者・友納敦史さんから、まず辛子明太子のルーツや、実際の漬け込み方について説明を受けました。辛子明太子は朝鮮から最初に博多に伝わり、それからだんだんと日本各地に広がったそうです。

いよいよ作業開始です。食品の衛生と安全のため、作業する前に手袋、マスク、キャップを装着。明太子を専用の容器に入れ、自分の好みで、入れるトウガラシの量を調整し、昆布か柚子(ゆず)をトッピングしました。それから、白ワイン、ブランデー、焼酎、日本酒、泡盛のどれかを入れると教わりました。私はトウガラシを多めにし、ゆずと白ワインを選びました。本当の製造過程でもこれらのアルコールは入れるそうですが、ブランデーだけは実際には使われていないとのこと。そこで、一緒に行ったもう一人の女性編集者は、ブランデーを手にしていました。

調味液は企業秘密

赤い調味液を入れてから、容器のふたを閉じ、密閉しました。調味液の中身に興味を持ちましたが、企業秘密だそうです。「私も知らされていません」と友納さんが笑顔で教えてくれました。なお、自分が選んだ材料のレシピは道場に保管され、注文すれば、後日またその通りに作って送ってくださるそうです。最後にラベルに漬け込み日、調味料の種類などを記入。ふたに貼りつけ、約40分の作業が終わりました。

この体験の最後に、工房から自分の名前が入った認定証が授与されました。熟成させる必要があるため5日後が食べごろと聞き、待ちきれない気持ちでした。

撮影=草野 清一郎

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