「美味しい」は「楽しい」

ラー博探訪

社会 文化

日本全国の有名な“ご当地ラーメン”を一か所で堪能できるフードアミューズメントパーク「新横浜ラーメン博物館」、通称「ラー博」。北海道から九州まで全国の名店9店舗が、自慢の“ご当地ラーメン”を振る舞ってくれる。ここでラーメンの代表的な3つの味である味噌、醤油、とんこつの3杯のラーメンを食べてみた。

懐かしき昭和30年代の街並みで味わうラーメン

ラー博」のラーメンと並ぶ売りは場内の内装で、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』にでてくるような昭和30年代の街並みのセットで、夕方のイメージを基調とした空間、紙芝居屋さん、駄菓子屋さん、そして、うらさびしいネオン横丁は安くて美味いラーメンをすするのにぴったり。あの時代を知っている世代にとっては懐かしく童心に帰ることができる。あの時代を知らない世代にはすべてが新しく、不思議な空間。そんな「ラー博」には毎日、自分にとっての最高の一杯を求めて、世界中から観光客がおしかける。今回、「ラー博」で味噌、醤油、とんこつというラーメンの代表的な3つの味を試してみた。いずれも絶品。あくまでも個人的な感想に基づく評価ではあるが、紹介しておこう。

醤油ラーメンと気仙沼「かもめ食堂」(店主 千葉憲二)

中国から伝わったラーメンを日本風に改良を重ねた結果、スープは醤油ベースのものにたどり着いたという説がある。日本人に最もポピュラーな味のラーメンは何かと聞いて、醤油ラーメンを挙げる人が多いのは、そんな経緯があったからかもしれない。特に東北地方のラーメンは醤油ラーメンが主流でもある。

宮城県気仙沼市の「かもめ食堂」も醤油ラーメンを提供していたが、残念ながら、先の東日本大震災で店は全壊してしまった。そんな、故郷のシンボルを再興しようと動き出したのが東京・葛西で「ちばき屋」を営む千葉憲二氏だ。同氏の情熱と復興への強い思いは、最終的に「かもめ食堂」を「ラー博」に再現させるに至った。

それでは「かもめ食堂」のラーメンを食べてみよう。魚介類を丁寧に煮込んだスープが特徴で、「港町気仙沼の海を表現している」そうで、どんぶり全体から磯の香りが広がっていた。メンマの歯ごたえと新鮮なネギが本当に美味しく、中太麺がスープとともによく絡む。店の自慢は焼き豚風のチャーシューと煮玉子。特に、昆布ダシに付け込んでひと手間かけた煮玉子は、かもめの玉子を表現しようと真っ二つに切って盛り付けてあり、気分を一層盛り上げる。

とんこつラーメンと熊本「こむらさき」(店主 山中禅)

九州を中心に発展したとんこつラーメンは、以前は、とんこつ特有の風味から、好みが分かれるラーメンだった。しかし改良を重ねた結果、昨今のとんこつラーメンは、独特の風味がほどよく抑えられ、日本全国の老若男女はもちろん、外国人の間でも好まれる日本のラーメンとなった。

そんな中、世界に向けて、熊本のとんこつラーメンを広めようとしているのが「こむらさき」だ。「ラー博」では開業以来、唯一出店し続けているという。お客さんが世界中からやって来る中で、いろいろな要望を受け入れ改良しようとしている。かつて精進料理を希望したベジタリアンの外国人客がいたことから、スープも含め、全素材で肉を使用しない特製とんこつラーメンも用意しているそうだ。

それでは、「こむらさき」のラーメンを食べてみよう。クリーミーなとんこつスープは、こまめなアクとり処理を施した証拠だろう。海外含め、多数あるとんこつラーメンとの違いを、食材のキクラゲと香ばしいにんにくチップを使用することで出している。とんこつラーメンが好きな人ほど違いに驚き、このラーメンに感動しそうだ。

味噌ラーメンと札幌「すみれ」(店主 村中伸宜)

極寒の北海道で、温かい食べ物が恋しくなるのは昔も今も変わらない。味噌ラーメンは、もともと“サッチョン族”(札幌の単身赴任者)の「豚汁に麺を入れて欲しい」という要望に応え、少しずつ開発されたものだという説がある。かつては味噌も各家庭で作られ、日本人にとって味噌汁は「おふくろの味」の代表だった。味噌ラーメンはそんなおふくろの味を意識したラーメンだろう。さまざまな改良を重ね、昭和36年ごろに現在の形になったという。

「すみれ」も、お客さんと二人三脚で改良し、時代に合った味噌ラーメンを作ってきた歴史がある。「ラー博」が開業する3年前から100回以上にわたり口説き、開業5カ月前に出店が決定した。2004年に一度卒業し、2009年には、「すみれ」の創業者のお店「らーめんの駅」が入店(2012年卒業)、2012年8月からは新しい「すみれ」として再出店を果たした。

それでは「すみれ」の味噌ラーメンを食べてみよう。副菜が多様化する昨今のラーメンの中で、しっかりと歯ごたえがあって、自己主張する麺だ。スープを口に含むだけで、何種類もの味噌の風味が味わえ、歯ごたえ十分の太麺が、口から胃袋まで十分な満足感を与えてくれる。シャキシャキとしたもやしと特製メンマが食感にアレンジを加え、食べ終わった頃には、大食漢でも間違いなくお腹がいっぱいになるだろう。

バナー写真:新横浜ラーメン博物館

取材協力:株式会社新横浜ラーメン博物館
写真撮影:加藤 タケ美















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