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今こそ“剣道”を世界へ

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世界剣道選手権大会が、東京・九段下の日本武道館で5月29日から3日間の日程で行われた。16回目を迎えるこの大会は、3年に一度世界各地で行われ、前回2012年はイタリアで開催された。日本での開催は18年ぶりであるが、ここ日本武道館での開催は、第1回大会以来、実に45年ぶり。

世界各国の剣士が集結!

世界の56の国・地域から強豪剣士が集結し、日々の鍛錬の成果を競い合う世界剣道選手権大会。しかし、そうは言いながら、実際に決勝に勝ち上がる実力を持つ国は2、3カ国に限られている。

オリンピック競技の柔道を例に挙げれば、2014年8月にロシアのチェリャビンスクで開催された柔道世界選手権大会の参加国・地域は110と剣道大会の倍。剣道はオリンピック競技になったことがないことを含め、国際化はまだまだ進んでいないのが現実だ。

武道なの?スポーツなの?

相撲、柔道、空手など、日本特有の発展を遂げ国際化している競技はあるが、いずれも始まりは「武道」であった。武道は、長い歴史の中で生まれた「道」(原理)を学び、「術」(技芸)を磨くことで心身を鍛え、当時の人間形成のツールとして利用され生活に根ざしてきたものである。柔道をはじめ、これらの競技は武道の精神とスポーツマンシップを重ね「競技」となったわけで、サッカーや野球などの球技スポーツとは違った歴史を持つ。

「礼に始まり礼に終わる」―ときに激しく打ち合う勝負の場においても相手への礼節を尊ぶことを重視する。


「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である」―現代剣道においても厳しい稽古を通じ、剣の理法と、その奥にある武士の精神を培っている。

剣道の国際化に向けて

国際大会を開催するほどのスポーツ人口がありながら、剣道が今ひとつ国際的な注目を浴びないのは、勝負を決する際のルールの分かりにくさに理由がある。

技が決まることを「一本」というが、柔道の場合、国際化が進むにつれ「技あり」「有効」「効果(2009年より廃止)」を採用、カラー柔道着を採用するなど、武道としての側面を維持しながら、スポーツ競技として世界が受け入れやすい工夫があったといえる。もちろん「相手を投げ飛ばすと勝ち」という見た目の分かり易さもあろう。

剣道の場合、打突が「一本」となるには、技を出したときの「気迫」と「剣の刃筋」と「体捌き」が同時に行われていなければならない。これを「気剣体一致」という。ラッキーヒットでは決して一本にはならないのだ。剣道がスポーツ競技として国際化してゆくならば、柔軟なルール改正が必須であるが、剣道は武道であるという意識が剣道界ではまだ根強く、スポーツ競技に対する歩み寄りが足りていない。

武道として国際化してゆくためには、間違った起源を唱える説にはきちんと反論し、剣道は日本の武士の生活から生まれた独特の文化であることを大いに伝える必要があるのではないだろうか。

充実した気迫、正しい竹刀の操作、踏み込みの体勢が有効打突の条件となる。

実際にやってみよう!

千葉県勝浦市にある国際武道大学では、日本武道の指導者育成と、武道を通じた国際交流を行っている。同大学の剣道部を率いる井島先生に依頼し、熱気のこもった稽古風景を取材させてもらった。参加した学生らは250名ほど。中にはロシア、中国、スイス、ペルーなどからの留学生がおり、技の習得に意欲的に取り組んでいた。

稽古に入る前の黙想で精神統一、300畳ほどある広い空間に張り詰めた静寂が漂う。しかし、いざ稽古が始まると一転、激しく相手とぶつかる打ちこみ稽古が行われ、その真剣に取り組む動作の一つひとつに「気剣体一致」の真骨頂を見た気がした。

文・取材=ニッポンドットコム編集部
取材協力=国際武道大学、公益財団法人 日本武道館

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