特集 世界のゴジラを生んだ日本の特撮
実写映画版『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の世界観—樋口真嗣監督に聞く
[2015.07.30] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |

世界的人気を誇るマンガ「進撃の巨人」の実写映画版は、日本の特撮の伝統とデジタル技術のハイブリッドで実現した。大プロジェクトを率いた樋口真嗣監督が実写版ならではの世界観構築の舞台裏を語る。

樋口 真嗣

樋口 真嗣HIGUCHI Shinji1965年東京生まれ。子ども時代から特撮映画やテレビ番組に親しんだ特撮ファン。中学時代に影響を受けたのは、1978年公開の東映映画『宇宙からのメッセージ』(深作欣二監督)。同年日本公開された『STAR WARS』よりも面白いと感じた。高校生のころからアルバイトで特撮の現場で働く。1984年『ゴジラ』の現場ではゴジラスーツの着付け担当。その後、庵野秀明(『新世紀エヴァンゲリオン』)等とアニメーション制作会社ガイナックスの立ち上げに加わり、1987年『王立宇宙軍 オネアミスの翼』では助監督を務める。1995年に『ガメラ 大怪獣空中決戦』の特技監督を務め、『ガメラ2 レギオン襲来』(96年)、『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』(99年)と続く。映画監督作品には『ローレライ』(05年)、『日本沈没』(06年)、『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(08)、『巨神兵東京に現わる』(12年)等がある。

全世界に「進撃」開始

世界累計発行部数が5000万部を超える諫山創(いさやま・はじめ)原作のマンガ「進撃の巨人」が2009年に連載を開始したとき、壁の中に閉じこもる人類が、その壁を破って侵入する謎の巨人たちによって捕食されるという不条理な設定が、読み手に斬新な恐怖を与えた。樋口真嗣監督による実写映画版は、『ゴジラ』シリーズなどで培われた日本の特撮技術に最新のCG技術を融合させることで、その恐怖をさらに生々しい、迫力ある映像として描き出す。

実写版2部作の前編『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(日本公開8月1日)は、7月14日にロサンゼルスでワールドプレミアが開催され、日本より一足先にハリウッドの観客の洗礼を受けた。

左からミカサ役の水原希子、エレン役の三浦春馬、アルミン役の本郷奏多。幼馴染の3人は壁の向こう側の世界に強くあこがれていた。しかし超大型巨人によって壁が破壊され、巨人たちの侵入が始まる。

人々を無残に食い殺す巨人たちを食い止めるため、立体機動装置によって武装した調査団が結成され、決死の外壁の修復作戦に挑む。(写真:2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 ©諫山創/講談社)

「海外でということもあるが、とにかく初めて一般のお客様に見ていただくプレッシャーは大きかった。でも、映画の “本場” (ハリウッド)の観客たちの反応はとてもよくて、(見せ場では)すぐ反応してくれる」と樋口監督は言う。「(一緒にプレミアに参加した主演俳優の)三浦春馬、水原希子もすごく興奮して、自分の出ている映画なのに観客と一緒に声を上げて喜んでいた。現場で大変な思いをさせた若い役者に貴重な体験をさせてあげられてよかった」。

東宝によれば、実写映画版はすでに北米、アジア、ドイツ語圏など世界63の国・地域での配給が決定している。

原作マンガの世界観をどう実写で表現するか

高校生のころから特撮の現場でアルバイトを続け、1984年の『ゴジラ』では特殊造形部の一員として現場を体験した樋口監督は、平成『ガメラ』シリーズなどの特撮・特技監督として実績を持つ。監督として初メガホンを取ったのは2005年の第2次世界大戦末期が舞台の『ローレライ』で、潜水艦を中心としたVFXを駆使した作品だった。数々の特撮を経験した樋口監督にとっても、今回のプロジェクトは特別な体験だった。

アニメ映画の経験はあるが、人気マンガの実写化は初めての経験だった。

「とにかく、すべてを一から構築しなければならなかった。例えば時代劇なら調べれば(必要なものが)わかるし、経験則もある。衣装が倉庫に眠っていたりもする。今回は小道具の一つに至るまで、作り出すか、吟味して選ばなければならない。マンガの実写化は初めてだったので、こんなに大変なのかとあらためて驚いた」

もう一つの難題は、脚本だった。「物語として完結しているマンガなら脚本の作業も違っただろうが、まだ連載中の作品をどう映画として終わらせるか」と試行錯誤したという。もちろん、原作のマンガの世界観を実写でどう表現するかという本質的な課題もあった。

「マンガを読んだ時、初めて経験する強烈さを覚えた。会ったこともない諫山という人が頭の中で見ている世界は、マンガを超えるもので、たまたまそれを自分で表現する手段がマンガだった、という印象だった」と樋口監督は振り返る。「実際に動き、生々しい質感を持っているモノが見たいのではないか、その思いをマンガの原稿にたたきつけている気がした」

「巨人の不気味さも独特だ。実際、マンガでは登場人物より巨人の方が、描き込み方、ペンの入れ方がすごかった。多分モデルがいるんじゃないかと思わせる。『こいつが嫌い、許しがたい』という気持ちが絵からにじみ出ていて、登場人物よりもかえって人間っぽく見えるその “バランス” の悪さをどう表現しようかと考えた」

本質的な「他者に対する恐怖」を、諫山氏のマンガから感じ取ったという。「誰でもない誰か。名前も知らない、そいつが何を考えているかわからない、他者に対する恐怖。実際に諫山さんにその印象を話したことはないが、20代の彼が(実家の九州から)東京に出てきて東京の街で感じた恐怖のメタファーでは、などと考えた」

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