特集 日本のウイスキー
世界が認めた「ジャパニーズ・ウイスキー」
蒸留所の舞台裏を訪ねて
[2014.08.19] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | Русский |

ヨーロッパで生まれ、スコットランドで「世界の酒」に発展したウイスキー。90年前に製造が始まったジャパニーズ・ウイスキーは、いまや品質で本場と肩を並べ、愛好家の注目を集める存在になった。

ウイスキーは大人の酒だ。 最上級銘柄のボトルの栓を抜き、小ぶりで先細のグラスにわずかな量を注いでみてほしい。しばらくすると原料の麦芽に由来する豊かな香り、熟成による甘くて華やかな香り、森の中にいるような落ち着いた香りや少し焦げたような木の香り…。それらが混然と混ざり合い、人の感性の奥を揺さぶってくる。 大麦と水だけでつくる酒が、なぜこんな複雑な味と香りを醸し出せるのか。答えは蒸留後10年、20年以上にも及ぶ樽熟成と、その樽が置かれる周囲の自然環境、そして長期熟成に耐える原酒をつくる人間の英知と技術にあるという。

ジャパニーズ・ウイスキーが1、2位を独占した驚き

英国の専門誌『ウイスキーマガジン』が2001年に初めて行ったコンテスト「ベスト・オブ・ザ・ベスト」の結果に、世界の愛好家たちは目を見張った。ニッカウヰスキーの『シングルカスク余市10年』が総合第1位、サントリーの『響21年』が2位と、日本勢がトップを独占したからだ。

コンテストは同誌が世界各地から選んだ47のウイスキーを英国、米国、日本の専門家62人がブラインドで評価した。本場スコットランドの名だたるスコッチウイスキーを抑え、「ジャパニーズ・ウイスキー」が初めて“世界最高峰”と認められた瞬間だった。

1924(大正13)年に京都郊外・山崎の地で、寿屋(現サントリー)が初めて国産のモルト原酒を蒸留してから今年で90年。下の表でも明らかなように、今や日本のウイスキーは味わい・品質ともに、スコッチと完全に肩を並べる。その秘密の一端を、ものづくりの現場を訪ねて探ってみた。

「スコッチを超えた」日本ウイスキーの主な受賞歴

2001 WM ベスト・オブ・ザ・ベスト   総合第1位 ニッカ シングルカスク余市10年
総合第2位 サントリー 響21年
2007 WWAワールド ベスト ブレンデッド サントリー 響30年
WWAワールド ベスト ブレンデッドモルト ニッカ 竹鶴21年
2008 WWAワールド ベスト ブレンデッド サントリー 響30年
WWAワールド ベスト シングルモルト ニッカ シングルモルト余市1987
2009 WWAワールド ベスト ブレンデッドモルト ニッカ 竹鶴21年
2010 WWAワールド ベスト ブレンデッド サントリー 響21年
WWAワールド ベスト ブレンデッドモルト ニッカ 竹鶴21年
2011 WWAワールド ベスト ブレンデッド サントリー 響21年
WWAワールド ベスト シングルモルト サントリー 山崎1984
WWAワールド ベスト ブレンデッドモルト ニッカ 竹鶴21年
2012 WWAワールド ベスト シングルモルト サントリー 山崎25年
WWAワールド ベスト ブレンデッドモルト ニッカ 竹鶴17年
2013 WWAワールド ベスト ブレンデッド サントリー 響21年
WWAワールド ベスト ブレンデッドモルト マルス モルテージ3プラス25 28年
2014 WWAワールド ベスト ブレンデッドモルト ニッカ 竹鶴17年

(※)WMは英専門誌ウイスキーマガジン、WWAはワールド・ウイスキー・アワード

(左)ニッカ シングルカスク余市10年(中)サントリー 響21年(右)ニッカ 竹鶴21年

80年前のたたずまい守る余市蒸留所

札幌から鉄道を乗り継いで1時間。北海道・積丹半島の付け根にある余市はリンゴ、サクランボなど果樹園芸が盛んな人口2万人の町だ。以前はニシン漁でにぎわったが、いまは見る影もない。世界一のモルトを生んだニッカの蒸留所は駅前近くに石造りの門を構え、80年前の創業以来のたたずまいを守っている。

(左)ニッカ・余市蒸留所の正門(右)正門2階から見た製造施設棟

 

余市蒸留所の杉本淳一工場長

「(2001年に世界一になった)シングルカスク10年は、貯蔵・熟成に新樽を使ったものです。重厚でコクがあるタイプの原酒ができたので、あえて挑戦した。3、4年たって調べてみたら『これはいい』と。樽とのマッチングがうまくいった」。工場長の杉本淳一は当時をこう振り返る。

モルト原酒の貯蔵はバーボンウイスキーの貯蔵に使われた空き樽や、シェリー酒の空き樽を使うのが一般的。木の香りが強い新樽は原酒の持つ繊細なフレーバーを壊してしまうこともあり、「使いこなすのは難しい」というのが定説だった。

「リスクもあったが、樽の(内面の)焼き方なども工夫してやってみた」。この成功を見て、スコットランドの蒸留所でも貯蔵に新樽を使うケースが出てきたという。

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  • [2014.08.19]
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