特集 怖いは楽しい—ようこそ、日本の怪異の世界へ
この夏、日本の化け物たちと最高の恐怖を—五味弘文のお化け屋敷
[2016.07.14] 他の言語で読む : ENGLISH | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |

4半世紀にわたり、日本各地でお化け屋敷を企画・演出してきた五味弘文氏。さまざまな恐怖の物語を編み出す五味氏に、とびきり怖いのに最高に楽しいお化け屋敷の舞台裏を聞いた。

五味 弘文

五味 弘文GOMI Hirofumiお化け屋敷プロデューサー。(株)オフィスバーン代表取締役。1957年、長野県生まれ。立教大学法学部卒。1992年、後楽園ゆうえんち(現 東京ドームシティ アトラクションズ)において、『麿赤児のパノラマ怪奇館』を開催、驚異的な動員を記録。その後、それまでのお化け屋敷にはなかった“ストーリー”の概念を持ち込む。1996年、赤ん坊を抱いて歩くお化け屋敷『パノラマ怪奇館〜赤ん坊地獄』を開催。ストーリーにお客様を参加させて、登場人物のように役割を担わせる方法を生み出す。以後、日本各地で精力的にお化け屋敷をプロデュースしている。著書に小説『憑き歯〜密七号の家』(幻冬舎文庫、2013年)、『人はなぜ恐怖するのか?』(メディアファクトリー)などがある。

スイカ、花火、かき氷、蚊取り線香……。夏と聞いて日本人が連想するものはたくさんある。お化け屋敷も日本の夏の風物詩の一つだ。

古くは江戸時代の「見世物小屋」のお化け屋敷に始まり、今では日本全国の遊園地に必ずと言っていいほど常設のお化け屋敷がある。だが、お化け屋敷が盛り上がるのは何と言っても夏。趣向を凝らして怖さもレベルアップした夏期限定のお化け屋敷が、各地にオープンする。

五味弘文氏は、4半世紀にわたり、お化け屋敷の企画、演出を手掛け、「お化け屋敷プロデューサー」という肩書きを日本で最初に名乗ったパイオニアだ。「子どもだまし」の見世物というイメージの強かったお化け屋敷を、大人も楽しめるエンタテインメントとして脱皮させた。

その五味氏にインタビューしたのは、5月末、夏に向けた企画準備の忙しさがピークを迎える直前の時期。「この夏は、9つのプロジェクトにかかわっています」五味氏は、指を折って数えてみせた。そのほとんどが期間限定のお化け屋敷だ。一つはすでに開催中の『ざくろ女の家』で、広島東洋カープのホームグラウンド、広島マツダスタジアムの屋内練習デッキに開設している。野球シーズンが終わる9月までの開催だ。千葉県館山市では、近くオープンする常設のお化け屋敷をプロデュース。今夏も日本各地のお化け屋敷プロジェクトに奔走している。

東京ドームシティ アトラクションズの常設のお化け屋敷『魔界からの恋文』も五味弘文氏のプロデュース。7月から9月まで夏期限定のお化け屋敷に変身する。

「お化け屋敷プロデューサー」誕生のきっかけ

五味氏の演出の最大の特徴は、観客に “ミッション” を与え、「物語」に参加させること。そして、最大の恐怖の源はお化けを演じる「キャスト」たちだ。

“五味流” お化け屋敷が最初に生まれたのは、現在の東京ドームシティ アトラクションズの前身、後楽園ゆうえんち。1992年、後楽園の夏の特別企画「ルナパーク」の企画運営チームの一員として遊園地の仕事に関わり、世界的に著名な舞踏集団「大駱駝艦」を率いる麿赤皃(当時は赤児)氏の協力を得て企画、開催したのが『麿赤児のパノラマ怪奇館』。全身白塗りの異形のダンサーたちが闇に潜み、突如姿を現してうごめくように観客を襲う、という趣向だ。

当時、遊園地の常設のお化け屋敷の多くは、人気も落ち目で設備も古びており、大抵は簡単な乗り物に乗せられて、機械仕掛けの人形を眺めて屋敷内を一周するというものだった。実際に人を使って怖がらせるお化け屋敷はほとんどなかった。『パノラマ怪奇館』は、大人も楽しめる夜の遊園地の目玉アトラクションとして大きな話題を呼び、入場は時に3時間待ちという大ヒットを記録した。

待ちに待った20年ぶりの「続編」

1992年以来、五味氏は毎年、“本拠地” の東京ドームシティ アトラクションズで夏期限定のお化け屋敷をプロデュースしている。お客に “ミッション” を課して、物語の登場人物にしてしまう趣向を考案したのは1996年『パノラマ怪奇館 ’96~赤ん坊地獄』だった。

お客は入口で赤ちゃんの人形を渡される。そして、暗闇に潜む魔物たちから赤ちゃんを守りながら、出口にいる母親にその赤ちゃんを届けなければならない。

「毎年同じ場所で25年やっていますから、それだけ高まる期待に応えるハードルは高くなっています。でも、今年は、去年の夏の『呪い指輪の家』の企画を(ドームシティに)プレゼンするときに、すでにこの夏やりたい企画が決まっていました」と五味氏。「5年ほど前から、『赤ん坊地獄』の赤ん坊が成長して20歳になるのを待っていた。やっとその時が来ました。この夏は、その子が成人して赤ちゃんが生まれる―『赤ん坊地獄』の続編をやります」

霊界にさらわれた赤ちゃんをそのお母さんに届けるというミッションは同じ。「とはいえ、それなりに僕も進化しているから、新しい仕掛けはあります」と五味氏は不敵な笑みを浮かべる。

恐怖を楽しさに変えるための演出

夏期限定の『赤ん坊地獄』は7月15日オープン。実際、お化け屋敷が完成するまでの作業は、どんな手順で進むのだろうか。「設定・ストーリー、ミッションが出来たら、演出プランを考えます。お客様がどんな怖い体験をするか、こういう経路で、この順番で、こんな体験をしていく、というふうに図面化していきます。図面化できたら、美術、造形(人形)、メカ、制御技術、音響、照明、衣装などの専門家と打ち合わせをして、自分のイメージを伝え、制作に入ってもらいます」

お化け屋敷の内部のセッティングでも細かい指示を出し、施工が済むと、運営スタッフとキャストへのレクチャーとトレーニングが始まる。キャストへの演技指導など、すべての面で五味氏の演出は実にきめ細かい。「お化け屋敷なんて、そんなに細かい演出をしたり、入念な細工はしないだろうとみられるからです。暗くして通路を迷路にすればそれなりに怖くなるから誰でも作れるからと。だからこそ、学園祭で人気の出し物なんです」

「でも、恐怖を楽しさに変えて、お化け屋敷をエンタメの領域に持っていくには、意図的に入念な演出をしないといけない。作り手が意図した通りにお客が楽しめるようにするのが真のエンタメなのですから」

入念な演出をするからこそ、大人も楽しめるエンタテインメントになると五味氏は語る。

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