特集 禅の世界へ
禅の言葉① 一期一会

モクタン・アンジェロ【Profile】

[2017.03.22] 他の言語で読む : ENGLISH | ESPAÑOL | العربية |

禅語とは、短い一句の中に禅の心や悟りの境地を込めた言葉。難解な禅の教えを理解するための手助けになる。ブラジル人漫画家が、禅語の意味を紙芝居のように仕立てた。第1回目は、「一期一会」。

【一期一会】

「一期(いちご)」とは一生、「一会(いちえ)」とは唯一の出会いという意味。つまり「一生涯で一度だけの出会い」ということ。この言葉は、茶道から生まれた。

茶席で何度も同じ主客(お茶をたてる人と飲む人)が会するにしても、今日の茶会はただ一度限りの茶会―そう思って、主客は全身全霊を傾けて茶会に臨めということ。人と接する時、一生でただ一度の出会いだと思うと、そうした機会がとても貴重なものに思えてくる。

身近にいる両親や兄弟、友人や同僚と会う時にも、一生に一度の出会いだと思えば、彼らのことをもっと大切にしようと思うようになる。それは人間だけでない、イヌやネコといった動物、樹木など、この世に存在する全ての出会いも「一期一会」と考えると、自分と他者との新しい関係性が生まれてくるはずだ。

登場人物

典子:わがままな中学生
:パン屋職人
青年:パン工房の見習い

「ふぁー!」わがままな中学生の典子ちゃんが自宅で朝ごはんを食べるところだった。 「ふぁー!」わがままな中学生の典子ちゃんが自宅で朝ごはんを食べるところだった。

「朝はつらいわ…」 「朝はつらいわ…」

「え?!」 「え?!」

「今日も同じパンか…」 「今日も同じパンか…」

「毎朝だと飽きるわ」 「毎朝だと飽きるわ」

「ちょっと、お父さん!」典子はパンを持って、ダイニングからパン工房に向かった。 「ちょっと、お父さん!」典子はパンを持って、ダイニングからパン工房に向かった。

「工房にいるかしら?」と、のれんの間からのぞいたら、父親はパン工房の見習い職人に話し掛けていた。 「工房にいるかしら?」と、のれんの間からのぞいたら、父親はパン工房の見習い職人に話し掛けていた。

「…注意してほしいことがある。パンは見た目が同じだけど、作り方は毎日違うよ」 「…注意してほしいことがある。パンは見た目が同じだけど、作り方は毎日違うよ」

「え?」典子はそんなこと初耳だった。 「え?」典子はそんなこと初耳だった。

父親は続けて言った。「その日の温度によってレシピを調整せんといかんからな。要はパンは毎日違うんだ。いいかい?」 父親は続けて言った。「その日の温度によってレシピを調整せんといかんからな。要はパンは毎日違うんだ。いいかい?」

「パンも人も毎日違うよ。人だって毎分、赤血球1億個分が置き換わっているんだよ」 「パンも人も毎日違うよ。人だって毎分、赤血球1億個分が置き換わっているんだよ」

「毎日来店するお客さんもいるけど、その日のパンも人も同じじゃないから大切にしよう」 「毎日来店するお客さんもいるけど、その日のパンも人も同じじゃないから大切にしよう」

それを聞いた典子は… それを聞いた典子は…

「父ちゃん、ごめんね!」と、もぐもぐパンを食べたのだった。 「父ちゃん、ごめんね!」と、もぐもぐパンを食べたのだった。

おわり

漫画:モクタン・アンジェロ

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  • [2017.03.22]

ブラジル出身。14歳のとき日本の漫画に感銘を受け漫画家を志す。漫画と日本語を勉強し、2007年、東京造形大学大学院に留学。卒業後、IT企業に5年間勤務。2015年度「東京国際ブックフェア」開会式で漫画家代表を務める。ビジネス誌「President Next」 で「マイ禅ダイアリー」を連載するなど、禅に熱心な漫画家としても活躍中。

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