特集 ニッポンの“水”
安全性とおいしさを追求する—日本の水道水
[2016.10.28] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | ESPAÑOL | العربية | Русский |

蛇口から出てくる水道水。この身近な必需品にも、細部にまで質にこだわる日本人の個性が発揮されている。目指すのは、安全・安心で、しかもおいしい水。それを担う水道局では目標達成に向けて、努力が続けられている。

日本で気の利いたホテルに泊まると、部屋にミネラルウォーターのボトルが用意されていることが多い。移動で疲れた体を癒すのに、水分補給は大切だ。しかし、そのボトルに手を伸ばす前に、もう一つ、別の水について考えてほしい。水道水だ。

ボトルの水の方が水道水より安全。そう結論づけるのは早計だ。事実、水質に詳しい専門家に、「日本でなら市販の水は買わない。水道水を飲む」という人は多い。

水質管理の決め手は51項目の検査

彼らが水道水に信頼を寄せる理由は、徹底した水質管理だ。蛇口まで届く水は、厚生労働省が規定した51に上る水質基準項目の検査をクリアしている。項目は、発がん性や慢性毒性、急性毒性の面から、人の健康に影響が生じないよう安全性を十分考慮して定められた基準(31項目)と、色や濁り、匂いといった不快感を与える生活利用上の問題が起きないように考えられた基準(20項目)で構成されている。これは、食品衛生法が定めるミネラルウォーター類の検査項目よりも多い。
東京都水道局は、より一層水道水の安全性を確保するため、約200項目についても検査をしている。

「私も買ってまでボトルの水は飲みません。身近にある水道水が安全でおいしいと知っているから」
そう話すのは、人口1300万の東京都の水道を支える東京都水道局職員で現在、板橋区にある三園浄水場の場長を務める橋本貴(はしもと・たかし)さん。言葉には水道水を供給する側の矜持(きょうじ)もにじむが、都民でもあり、消費する側の実感もこもる。

左が三園浄水場場長の橋本さん。右は浄水施設担当・小笠原篤(おがさはら・あつし)さん

三園浄水場は30万m3/日の施設能力を持つ。都水道局が運営する主要な浄水場のうち、5つしかない高度浄水処理を行う浄水場の1つだ。
「高度浄水処理とは、通常の浄水処理に、オゾン処理と生物活性炭吸着処理の2つを加えたものです。これらの工程を加えることにより、通常の浄水処理では取り除けなかった微量の有機物などをほぼ除去できます」(橋本さん)。

首都東京が誇る、最も高性能な浄水処理システムだ。

最先端の技術に支えられた浄水処理システム

オゾン処理の現場であるオゾン接触池と呼ばれる区画を訪れると、ガラス越しに池の中が見えた。直径10センチほどの横たわった筒から細かい空気の泡がブクブクと上昇している。

「この泡がオゾンの入った空気です。これで水とオゾンを接触させます。多くの細かい泡を作っているのは、空気の総表面積を増やすことで接触している時間を長くし、処理効果を高めるためです」と橋本さん。接触時間は約20分という。

オゾンは強い酸化力で、この段階でまだ水に残っている取り除きたい物質を分解してくれる。発がん性物質と言われるトリハロメタンの元となる物質や、カビ臭の原因になる物質だ。一方で、それだけ強い酸性を持つオゾンは、取り扱いに注意が必要。
「一般的な鉄の配管だとすぐにさびてしまう。そこで、ここでは特別にステンレス素材が使われています」(小笠原さん)

左)大人の背丈以上あるオゾン発生器、右)ガラス越しに見たオゾン接触池の内部

生物活性炭吸着池の底部の側面

通常の過程に加えてオゾンによっても処理された水。さらに、高度浄水処理では念押しのようにもう一工程、浄化を施す。その現場が、12ある生物活性炭吸着池だ。こちらもガラス越しに底の部分の側面を見ることができた。それぞれの池に敷き詰められた活性炭の層の厚さは2.5メートル。この活性炭はオゾンで分解された不純物を吸着するだけでなく、活性炭に繁殖した微生物の働きで、なお残っている細かな不純物を分解する。材質は家庭用の浄水器と似ているが、浄水場として大量の水を処理するには、広いろ過面積が必要で、三園では1つの池がおよそ100平方メートルとなっている。
「活性炭は4、5年すると、吸着の機能が次第に落ちてきます。そのため、水道局では4年に1回入れ替え作業を行っています」(小笠原さん)

現在、東京都の水源は、利根川水系及び荒川水系が8割、多摩川水系が2割を占める。しかし、高度浄水処理が活用されているのは、そのうち前者の処理のみだ。後者に関しては、通常の浄水処理で対応している。こちらの水質は大丈夫なのか。

「例えばですが、多摩川水系の上流部の原水の水質は、現在のところ、高度浄水処理を必要としないレベルを保っています。浄水処理のレベルは、どのような原水を処理するかで決まってきます。原水がきれいなところでは、高度浄水する必要はありません。逆に、利根川水系及び荒川水系のように多摩川系と比較して、水質が若干良くない原水も、高度浄水を行うことで、より高いレベルに持っていくことができるのです」(橋本さん)

左上)原水の濁りを効率よく沈殿させる傾斜板沈殿池 右上)ろ過池など高度浄水処理後の水を扱う施設には、太陽光発電を設置した屋根が付いている 下)工業用水のための施設・高速沈殿池

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  • [2016.10.28]
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