訪日外国人に人気の観光スポット

登山者数世界No.1—自然、歴史、グルメが織りなす高尾山の魅力

文化

登山者数が年間300万人と世界一を誇り、ミシュランガイドで三つ星の観光地に認定されている高尾山。599メートルと標高は低いが、登山客から高い評価を受ける魅力を紹介する。

東京都八王子市にある高尾山は、日帰りで気軽に山歩きが楽しめるため、日本では古くから人気のある行楽地だ。それが近年、外国人観光客にも注目され始め、2007年にミシュランガイドで三つ星の観光地として認定されてからは、一気に人気が爆発した。

頂上付近の登山道。舗装されているので、登山初心者でも歩きやすい

高尾山「見どころガイド」の坂本さん。薬王院御本社にある大天狗像の前で撮影

「高尾山はミシュランに認定される以前も、年間200万人の登山客がいました。それが、認定された後には300万人まで増え、世界一登山者が多い山として知られています。ただ、都心から近い上に標高が低く、気軽に登れる山だから人気なんだと考える方もいるようです。実際は、自然、歴史、グルメなど、魅力が詰まっているから多くの人に愛され、ミシュランでも評価されたのだと思います」

そう語るのは、高尾山で「見どころガイド」(運営:八王子観光協会)として活動する坂本為昭(さかもと・ためあき)さん。高尾山の人気が高まったことは喜ばしいが、「ガイドブックに載っているから、なんとなく高尾山に来た」という人も増えていることが残念だという。

「高尾山では1600種類もの植物が確認されています。これはイギリス全土で自生する植物の種類と同等で、この小さな山は自然の宝庫なのです。また、薬王院は開山から1300年近い歴史があり、素晴らしい建造物や記念碑が点在し、天狗伝説など数々の神話もあります。そして、夏には標高500メートルでビアガーデンが楽しめ、とろろそばや天狗焼きなどグルメ人気も高いです。ケーブルカーに乗って頂上まで行ってすぐ帰るのではなく、もっと高尾山の魅力をたくさん感じてもらいたい。そう思って、私はガイドのボランティアをしています」

高尾山名物「天狗焼き」を求めて長蛇の列が

今回は、そんな坂本さんのお勧めスポットを中心に、高尾山の魅力を紹介する。

交通アクセス

高尾山口駅までは、新宿駅から京王電鉄高尾線で最速47分。2015年に完成した新駅舎は、世界的建築家・隈研吾氏がデザインを手掛けた

高尾登山電鉄のケーブルカーとリフトの乗り場は、高尾山口駅から徒歩5分。ケーブルカーは、この「清滝駅」から「高尾山駅」(標高472メートル)まで片道6分。リフトは、「山麓駅」から「山上駅」(標高462メートル)まで片道12分

最急勾配31度18分は、ケーブルカーとしては日本一の急角度。車窓からは絶景が楽しめる

ケーブルカーの高尾山駅まで来れば、残りの標高はたったの130メートル。この手軽さもあって、老若男女に人気がある

リフトは2人乗りで、全長は872メートル。ケーブルカーとは違い、窓ガラスがない空中散歩なので、より景観が楽しめる

登山路・自然編

高尾山駅近くの「かすみ台展望台」から都心側を見下ろす。坂本さんいわく、天気の良い日は神奈川県の江ノ島や横浜ランドマークタワーから、千葉県の外房、茨城県の筑波山、栃木県の日光連山まで、関東平野が一望できるという

登山ルートは高尾山自然研究路が6号路まであり、それに加えて自然豊かな稲荷山コース、4つの山を縦走する高尾山〜陣馬山コースなどがある。一番利用者が多いのは、薬王院への表参道「1号路」

1号路の特徴は、道を挟む形で、谷側にはイヌブナなどの落葉樹を主体とする温帯林、山側にはカシ類などの暖帯林が広がる。高尾山の植物の多彩さが感じられる道だ

薬王院の入り口となる浄心門を抜けると、「殺生禁断(せっしょうきんだん)」の碑がある。これには、虫や草木も含まれる。この仏教思想により、高尾山の豊かな自然は守られてきた

薬王院へ向かう道は、途中で二股に分かれる。左は急な男坂で、右は緩やかな女坂。男坂の階段は、煩悩の数と同じ108段ある

高尾山の頂上。ここにも売店があり、ソフトクリームや飲み物が購入できるので、軽装備でも安心だ

山頂にある展望台は見晴らし抜群。時間帯によっては大混雑に

頂上からは南に丹沢山塊、天候の良い日には富士山や南アルプスまで見渡すことができる

もちろん自然を感じられる登山コースも人気。こちらは「森と動物」がテーマの4号路

4号路の別名は「吊り橋コース」。高尾山駅からこのコースを通って登ると、山頂までは約1時間

歴史・神話編

薬王院山門前の美しい紅葉。「高尾山薬王院」は、真言宗智山派の大本山として「成田山新勝寺」「川崎大師平間寺」と並ぶ関東三大本山として知られる

山門前に鎮座するのは、744年に薬王院を開山したと伝わる行基菩薩

薬王院御本堂。創建当初、薬師如来を本尊としたのが薬王院の由来。現在の本尊は、山岳信仰が発祥と考えられる神仏習合の神「飯縄大権現(いづなだいごんげん)」

天狗は日本各地で伝承され、神とも妖怪とも信仰される存在。高尾山では、飯縄大権現に仕える者として、神通力によって運を開き、魔除けのご利益があると考えられる

御本社(飯縄権現堂)の入り口には、神社のような大鳥居がある。ここも紅葉スポットとして有名

大変色鮮やかな御本社は、日光東照宮の修復をした宮大工が手掛けた。神社風の意匠であるため、礼拝方法を悩んでいる人を見かけたが、坂本さんは「高尾山は神仏習合の地ですから、別に柏手を打っても構わないと思いますよ」と言う

御本社前の小天狗像。高尾山は大自然の中に仏を見出す修験道の教えの場で、山を駆け回る行者(山伏)の姿が、空想上の生き物・天狗に見えたとことから神話が生まれたようだ

御本社にある見事な一木造りの龍。細部までこだわった宮大工の技を眺めていると、時間を忘れてしまう

坂本さんお勧めの紅葉スポットは仏舎利塔の一帯。この塔には、1931年にタイの国王から分贈された仏舎利(ぶっしゃり)が収められている

仏舎利塔の前には、薬王院に祀(まつ)られる飯綱大権現(中央)が、獅子慧童子(左:ししえどうじ)と阿婆羅底童子(右:あばらちどうじ)を従えている

参道には至る所にお地蔵さんがポツンと座っている。計88体あり、全てを見つけて拝むと、お遍路さんと同様の功徳が積めるといわれる

施設・グルメ編

高尾山駅前には食堂や土産屋さんが並ぶ。一番人気は、2007年の発売から累計300万個以上を売り上げる「香住売店」の天狗焼き

高尾山展望台ラウンジには、標高500メートルにあるビアガーデンとして人気の「ビアマウント」が。営業期間は毎年6月中旬から10月中旬。秋季から春季(期間限定)は、カフェ&バイキング「キッチンむささび」として営業

看板など英語対応がされており、訪日観光客に人気の「高尾山さる園・野草園」。現在、タレント性あふれるニホンザルが67頭飼育されている。飼育員の解説もユーモアたっぷりと評判

高尾山名物といえば「とろろそば」。とろろはおいしいだけでなく、ビタミンやミネラルが豊富で疲労回復効果が高く、山登りにはぴったり

山頂にも食堂があり、とろろそばなどが楽しめる。右の「高尾ビジターセンター」は、展示や解説によって高尾山の自然や歴史に関する情報を提供している

十一丁目茶屋の前の広場に八王子観光協会の「見どころガイド」受付がある。予約不要で、ボランティアガイドが無料で約40分案内してくれる。通常は土日・祝日の9時40分~13時10分の間で、30分おきに出発。紅葉シーズンなど、混雑する時期には、平日のみ開催となるので要確認

高尾山

・明治の森高尾国定公園
・標高599メートル
・東京都八王子市高尾町
・京王線高尾山口駅から山麓まで徒歩5分。高尾山口駅までは、新宿駅から京王電鉄高尾線で最速47分。
・高尾登山電鉄ケーブルカー 始発8:00-終発17:15〜18:30(曜日、季節により変更) ※年末年始、ビアマウント営業時などは特別運行あり
・高尾登山電鉄リフト 始発9:00-終発16:00〜16:30(季節、状況により変更)

取材協力=八王子観光協会
写真=三輪 憲亮

取材・文=ニッポンドットコム編集部

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