特集 心躍る文房具の世界
「おもしろ消しゴム」で世界に遊び心を伝える

三田村 蕗子【Profile】

[2017.08.25] 他の言語で読む : ENGLISH | ESPAÑOL | العربية | Русский |

ランドセルや文具、乗り物、食べ物、動物ならハムスターから恐竜まで、あらゆる形の「おもしろ消しゴム」を生み出すイワコー(埼玉県八潮市)。遊び心満載の50円の消しゴムは海外でも人気を呼んでいる。

大人もほしくなるアイテム

つくばエクスプレス八潮駅から徒歩約15分。のどかな住宅街が広がる一画に24時間稼働を続ける小さな工場がある。

15台の機械から年中無休で作り出されるのは、お寿司(すし)や果物、文房具、動物たち。いや、それらを模した小さなかわいい「おもしろ消しゴム」だ。身近なモノをかたどった1個50円の消しゴムを手にすれば、誰もが「かわいい」「安い」と声を上げるに違いない。上履きや鍵盤ハーモニカ、ランドセルの形をしたキュートな消しゴムを手にして、ノスタルジーにかられる大人も多そうだ。

分解して作り直す楽しさがある点にも注目したい。一見、シンプルな作りに思えるが、お寿司ならシャリとネタ、海苔(のり)、飛行機なら胴体と主翼、尾翼といった具合に、どの消しゴムも2個から4個のパーツで構成されている。5センチメートルほどの小さな消しゴムに施された創意工夫の数々。カラフルなミニチュアサイズの消しゴムが世代や性別を超えて愛されている理由がここにある。

のり巻きと日本茶のパーツ(上)と完成品

野菜消しゴムが爆発的ヒット

「おもしろ消しゴム」の製造元は1968年創業のイワコー。創業者の岩沢善和さんは、文具問屋の “小僧”として18年間住み込みで働いた後に独立。最初に作ったのはプラスチックの筆箱だったという。

「当時は工場といっても、(千葉県)松戸で借りた二間のアパートでほそぼそと作っていた程度。ヒット作を出そうと必死でした。幸い、第2弾の鉛筆キャップは大ヒットしましたが、そのうちシャープペンが安く出回るようになって売れなくなった。なんとかしなくてはと次に作ったのが消しゴムです。いまのような『おもしろ消しゴム』を作り始めたのは1988年からですね。ただ、これで会社は大きくなるぞと、ニンジン、大根、さつまいも、キャベツ、カブの野菜シリーズを意気込んで作ったものの、どこも相手にしてくれなかった」

当初はどの問屋も「おもしろ消しゴムを相手にしてくれなかった」と語る岩沢善和さん

最初に作ったのは野菜シリーズだった

現在のラインアップは450種類におよぶ

取引をしてくれる問屋がなければ商売は成り立たない。いったん「おもしろ消しゴム」を諦めた岩沢さんだったが、5年後に「例の野菜の消しゴムをもう一度作ってくれないか。必ず売れるから」という頼もしい問屋の “援軍” が現れる。「そこまで言うなら」と野菜の消しゴムの生産を開始すると、援軍の読みはズバリ的中。爆発的なヒット商品となった。

以後、「おもしろ消しゴム」のラインアップは着実に増え、野菜はもちろん、お菓子や動物、乗り物なども加わり、その数はすでに450種類に及んでいる。

「1993年からの6年間は、1日10万個生産していました。(同様の消しゴムを作る)競合相手も2社現れてね。大変な人気でしたが、残念ながらそのうち飽きられてしまい、その2社もなくなりました」と岩沢さんは笑う。「でも、地道に作り続けていたら、また15年ほど前から売れるようになった。いまは1日20万から25万個生産しています」

パーツを組み合わせておいしそうなショートケーキの出来上がり

並べるとケーキ屋のショーケースをのぞいているような楽しさだ

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  • [2017.08.25]

フリーライター。福岡生まれ。津田塾大学学芸学部卒業。流通を皮切りにビジネスの幅広いテーマを手掛け、現在、ビジネス誌や経済誌、流通専門誌で活動中。2014年11月下旬から経済成長著しいバンコクに拠点を移し、東南アジアの取材活動にも力を入れている。移住の経緯やバンコク情報は、ホームページで発信中。著書に『夢と欲望のコスメ戦争』(新潮選書、2005年)、『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか? 』(日本実業出版社, 2015年)など。

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