日本の防災体制

日本の地震研究・対策はもともと地震予知を目標としており、地震計にしても大地震が予想される東海地域など偏った地域にしか設置されていなかった。ところが1995年、阪神淡路大震災が発生。まったく想定外だった兵庫県で大地震が起きたことで方針を転換し、予知の前にまず地震のメカニズムを解明した上で災害対策を整備することとなった。

日本が誇る高密度な地震観測網

政府はまず統一仕様による全国観測網の整備を推進。国土地理院はGPSを使って全国約1000カ所の地面の動きを調査、防災科学研究所は全国1800カ所以上の地点に地震計測機を設置し、継続的な地震観測をスタートさせた。現在では、マグニチュード0.3〜1.2という小さな地震までもれなく観測できる。観測データは全てインターネット上に公開され、全国の研究者が利用できるようになり、地震研究・対策が一挙に加速した。

こうして得られた詳細な地震データや海溝型地震・活断層による地震の研究をもとに、大地震の発生する可能性を予測。さらに日本全国くまなくカバーした地盤調査も活用し、地震が発生した際の各地域の震度を推定。政府は「今後30年以内に震度6以上の揺れに見舞われる確率を示した地図」を公表している。

【今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率】

今後30年以内に震度6強以上の揺れに見舞われる確率

地震ハザードステーション(J-SHIS)
独立行政法人防災科学技術研究所の研究成果を基に作成された地震動予測地図データ。全国の特定の場所を拡大してみることもできる。

被害想定をもとに防災体制を構築

各地域の予想震度をもとに実施されているのが被害想定だ。地盤の液状化・がけ崩れなどの地盤被害や建物倒壊など揺れによって直接生じる一次被害、一次被害によって引き起こされる死傷者などの人的被害、地震による火災や停電・断水などの生活支障といった二次被害、さらにこうした被害にともなう都市機能まひ、経済活動停止などの三次被害を推定している。

被害想定の精度を高める際に、阪神淡路大震災における緻密な実態調査が重要な役割を果たしている。従来の被害推定は構造物の推定強度など工学的見地に基づいて理論的に行われてきたが、実際の被害に関する詳細なデータが蓄積されたことにより経験値に基づく被害想定が可能になった。

政府は、「東海地震」「首都直下地震」など5つの大規模地震に対して被害想定を実施。被害想定データをもとに、今後10年間でどのくらい被害を減らすのかという具体的な目標と、それを実現するための戦略を作成している。

地震発災時の応急対応に関しても、被害想定をもとに救援物資の量や救助部隊のルートなどを決定し、マニュアルを作成している。こうした戦略は3年ごとにフォローアップされ、対策の進捗状況に応じて想定されていた被害がどれだけ軽減されたのかが算出されている。

日本の建築物の耐震基準

日本の建築物の耐震基準は、大地震が発生するたびに新基準の制定や改正が繰り返されてきた。特に重要なのが1981年に行われた建築基準法の改正(新耐震基準)。1978年に発生した宮城県沖地震はマグニチュード7.4、最大震度5を記録。死者28名、負傷者1万名余りという人的被害のほか、全半壊家屋が7400戸、部分壊家屋も8万6010戸に上った。この被害を教訓に建築基準法が改正され、住宅やマンション、ビルなどの建築物に関して、「中規模地震(震度5強程度)では軽微な損傷に抑え、大規模地震(震度6強~震度7程度)でも倒壊は免れる強さにすること」が義務づけられた。

1995年の阪神淡路大震災では、死者6434名のうち8割弱が家屋の倒壊や家具などの転倒により即死状態とされているが、1981年以降に建てられた建物については約80%が軽微な被害や被害なしにとどまり、倒壊した建物はわずか1%だった。

1995年12月には、「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」が施行され、新耐震基準を満たさない建築物の耐震診断や耐震補強が推進されている。さらに、2006年には耐震化制度の充実などをポイントとする改正耐震改修促進法が施行され、耐震改修支援センターによる債務保証や情報提供などを充実させるとともに、耐震改修促進税制が創設され、改修工事費用の税額控除など耐震化の支援が充実した。

緊急地震速報

2007年より、緊急地震速報が正式運用された。地震波には、初期微動を起こすP波(秒速5〜7km)と主要動と呼ばれる大きな揺れを起こすS波(秒速3〜4km)があるが、緊急地震速報は震源近くでP波をキャッチし、震源や規模、予想される震度などを自動計算。推定最大震度3以上または推定マグニチュード3.5以上を予想した場合には、集客施設、工場、交通機関などに向けて発表。震度5弱以上を予想した場合には家庭など一般利用者に向けて発表する。主要動が到着する前に避難行動を取ってもらうのが目的だ。

震源地に近い場所ではS波とP波の時間差が少ないため、緊急地震速報が間に合わなくなるなど技術的な限界も指摘されているが、警報の発表から主要動の到達まで10秒以上の時間があったケースもあり、その間に頭部を保護するなど身の安全を守るための行動を取ることができる。