デザインができること【内田 繁】

デザインは、人間と社会を結びつける重要な役割をもっている。日本を代表するデザイナーである内田繁氏は、今後の日本再生のため、デザインの果たす役割を再考すべき時に来ていると考える。

デザインは、人間と社会を結びつける重要な役割をもっている。日本を代表するデザイナーである内田繁氏は、今後の日本再生のため、デザインの果たす役割を再考すべき時に来ていると考える。

新たなプログラムを立てるとき

今回の災害は二つあります。地震、津波による自然災害。もう一つは原発における人的災害です。これらをどう処理していくのか、おそらく想像を絶する大変なことが待ち構えているでしょう。

しかし、それ以前に考えなくてはいけないことがあります。「人間の暮らしは本当にこれでいいのか」という大きなテーマです。これは、震災が起きる前から浮上しつつあった問題です。

日本が新たなプログラムを立てなければならなかったのは、バブル経済が崩壊した後ではなく、あえて言うなら70年代半ば、オイルショック前後の頃だったように思います。急激に工業化社会へと変貌した60年代に対し、日常性を回帰させようというのが70年代だったのですが、経済発展とともに、問題意識のないまま時代は過ぎていってしまいました。

奇しくも、再び震災においてそれを見つめざるを得ない状況が来ています。これは日本だけのテーマではありません。中国を含めた新興国がこのまま成長を続けて、地球はもつのか、世界の人たちが幸せに生きていけるのか、ということです。

日本の可能性という面から考えると、この問題に対して、実践的なプログラムを立てることができれば、日本は世界を引っ張っていく存在になり得るでしょう。

デザインの役割

付け加えるなら、だからこそ、デザインというものも重要な役割を担っていくことになります。

デザインとは色やかたちなど感覚的な領域だけのもの、と思われがちです。それらも大切なことですが、デザインとは人間と自然と社会を結びつけて、そこに実際性をつくっていくことなんです。

生産者や製造者も含めて、デザイナーがかたちにしない限り、 概念だけではものは出来ない。それだけに、デザインをするという行為はいろいろな責任を背負うことになります。

また、価値のあるいいものをつくる、「かたち化」していけるのが日本の特質です。クラフトやものづくりの力は世界でも非常にいいところにあります。

ただ、今までは元になる概念がなかった、つくられていなかった。これから日本をしっかりとしたものにしていくためには、背景にデザインというものがなくてはなりません。既に日本にはデザインはたくさんあります。それをまとめていくための概念を、ビジョンを打ち出せるかということが大事になります。

被災された方々には申し訳ないですが、デザインにとっては好機ととらえるべきだと思います。

(3月30日 談)

内田 繁

内田 繁
Uchida Shigeru

インテリアデザイナー。桑沢デザイン研究所所長。日本を代表するデザイナーとして高い国際的評価を得ている。各国での講演、国際コンペティションの審査、展覧会のディレクションなど、その活動は常に新しい時代の潮流を刺激し続けている。