東日本大震災後の日本のエネルギー事情は着実に改善へ【豊田 正和】

国内外のエネルギー動向を分析し、政策を提言する日本エネルギー経済研究所の豊田正和所長が、東日本大震災後の石油、ガス、電力の供給の現状と今後の見通しについて解説する。

国内外のエネルギー動向を分析し、政策を提言する日本エネルギー経済研究所の豊田正和所長が、東日本大震災後の石油、ガス、電力の供給の現状と今後の見通しについて解説する。

大震災の後、東京においても、ガソリンスタンドには、長い列ができた。一方、東京電力管内である関東地方を中心に、1日に数時間、場所を変えて停電をする計画停電が実行された。これによる電車の間引き運転で通勤の足が乱れ、工場での操業にも混乱をきたした。

親戚、友人の方が関東地方におられる外国の読者の方も多いかと思うし、日本を訪問しようとしている方もいらっしゃると思う。夏場の電力事情も含め、日本の当面のエネルギー事情について整理してみたいと思う。

まず、石油事情だが、マクロ的にはほぼ問題は収束している。震災後、6か所の製油所が操業を止めたが、これまでに、3か所の製油所が稼働を再開、結果として、震災前の原油処理量とほぼ同水準の能力が確保された。加えて、政府が法律で民間石油会社に義務付けている石油備蓄(民間備蓄)の量を、1日の石油消費量の70日分から45日分へと、2回にわたり合計25日分引き下げたことなどにより、燃料不足は現時点では解消してきている。ただし、東北地方の被災地では、配送体制の改善が必要な地域が少なくない。

都市ガス供給は、震災直後、仙台市ガス局供給区域を中心に46万戸強への供給が停止していたが、4月4日時点では、宮城県、岩手県、福島県を除き復旧している。しかし、これらの3つの県においては、津波の影響による家屋や供給施設の被害が大きく、完全復旧にはまだ時間がかかるようだ。LNG基地については、仙台市ガス局の港基地を除いて正常化している。

一番の懸念は、電力需給にある。直近1週間は、各界の節電努力もあり、ほぼ計画停電のない状態が続いている。大震災の影響で、東京電力管内では福島第一原子力発電所を含め、2700万kWの発電が稼働を停止した。他の電力会社からの供給、被害の軽微な火力発電所の再稼働などにより、一時3350万kWまで低下した東京電力の供給力は、4月前半には4000万kW程度まで回復する予定だ。問題は7-9月の需要期への対応。供給は5000万kWまでの回復を目指して取り組んでいるが、最大電力需要は6000万kWまで高まる可能性がある。計画停電では電力供給が不安定になり、24時間の稼働が必要な半導体工場など、産業活動に影響があると心配されている。関東地方を中心に、重要部材を世界中に供給している工場もあり、政府内では産業界への影響を最小限にするため、予測可能性の高い電力供給の割り当てなどが検討されている。家庭や業務部門における節電努力も含め、夏場を乗り越える知恵を日本全体が官民、力を合わせて検討しているところだ。ちなみに、家庭の節電努力で夕方のピーク時に400万kW強の節電が可能と当研究所は試算している。

(4月4日 記す)

豊田 正和

豊田 正和
Toyoda Masakazu

1949年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。米プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン行政大学院修士課程修了。73年に通商産業省に入り、資源エネルギー庁や国際エネルギー機関(IEA)などでエネルギー問題に取り組む。通商政策局長、経済産業審議官、内閣官房・宇宙開発戦略本部事務局長、内閣官房参与などを歴任。現在、日本エネルギー経済研究所所長。