増税は避けられず【石 弘光・一橋大学名誉教授】

元税調会長の石弘光・一橋大名誉教授は国民の「旺盛な連帯感」を糧にすれば復興への財源は見えてくると説く。3つの手段を提言する。

元税調会長の石弘光・一橋大名誉教授は国民の「旺盛な連帯感」を糧にすれば復興への財源は見えてくると説く。3つの手段を提言する。

発生以来2カ月が経過したものの、東日本大震災からの復興のめどがまだ立っていない。地震、津波の自然災害に追い打ちをかけた原発災害も、それ自体の収束が定かでなく、国民の多くは神経を苛立たせている。自然災害の被害額だけでも16~25兆円と政府は試算しているが、震災復興のために10兆円規模の予算措置が必要とされている。

何かしたい。国民にはそういう気持ちが

ここで問題になるのが、復興財源をどう確保するかである。4兆円を超える本年度の第1次補正予算が成立したが、このうち2・5兆円は年金財源から一時的に流用したものである。新たに国債発行しなかったと菅内閣は強調しているが、これは一時逃れの弥縫策に過ぎない。早晩、第2次、第3次の、より規模の大きい補正予算編成による復興財源は不可欠である。

幸いなことに、今回の災害支援に対し国民の関心は非常に高い。義援金の集まり具合をみても、東北各地に集結したボランティアの数にしても、国民として何かしたいという気持ちが現れている。災害復興にあたり、まさに国民は旺盛な連帯感を持っているのだ。1990年に東西ドイツ統合が見せた「連帯税」のように、日本でも復興財源の確保にこの国民の連帯こそがカギだと思う。次の3つの手段が重要となる。

増税分は民間還元され、デフレ効果は限定的

第1に、予算の組み替えにより復興財源を調達すべきだ。具体的には子ども手当てなど、バラマキ政策の廃止や公共事業の地域間配分の変更などがあるが、国民も納得してくれよう。第2に、当面かなりの規模の震災国債に依存せねばならぬが、多少条件が悪くても国民の連帯感に訴えれば市場で消化できよう。

そして第3に、時期は少し遅れようが増税はやはり不可避で、国民も納税者としてある程度覚悟していると思う。所得税・法人税の付加税や消費税率の引き上げなどあるが、税収はそのまま復興費として民間に還元されるだけに、デフレ効果をそんなに心配する必要はあるまい。

(5月1日 記す)

石 弘光

石 弘光
Ishi Hiromitsu

1937年東京生まれ。一橋大学経済学部卒業。一橋大講師、助教授、教授を経て98年~2004年学長、専攻は財政学。2000~06年政府税制調査会会長、07~11年放送大学学長、現在、一橋大学および中国人民大学名誉教授。