復興負担は現世代の責任で【成相 修・麗澤大学教授】

復旧・復興のための財源を、ODA(政府開発援助)削減や国債の日銀引き受けで賄おうという姿勢に、成相修氏は異を唱える。

復旧・復興のための財源を、ODA(政府開発援助)削減や国債の日銀引き受けで賄おうという姿勢に、成相修氏は異を唱える。

大震災から2カ月経つが、復旧と復興のための法律が1本も成立していない。1923年の関東大震災の1週間後、当時の内閣は素早く対応した。その際にも今日と同様、政権は崩壊寸前のように弱体化していたが、後藤新平が超党派で官民の人材を集めた「もう一つの政府」とも言うべき指揮命令系統を一元化した組織を率い、復興指針の下、予算手当てについても議会と渡り合った。

これに引き換え、今回の政権の対応はすべてに後手に回り、「対応」に追われることに精一杯である。総理はじめ政治家は「我欲」に走っている。復旧のための公共事業が急増するとみると、利権確保の魂胆から連立政権を誘導する政治家もいる。菅首相自身は、浜岡原発の停止を「政治判断」として、一切の法的根拠を無視した行為によってポピュリスト(大衆迎合)的な政権の保身に走る。避難所を5時間掛けて訪問したというが、被災者の声を誰かがメモしたのか? 多くの声にどう応えるのか? 被災者に対する応えは、「政府も精一杯やります」だけという情けないものである。

礼節の国の「大いなる恥」

復旧すら遅れている状態で、今後5年、10年にわたる復旧資金は、50兆円を超える莫大な規模が必要とみられる。関東大震災時、後藤新平は震災翌日に当時の価格で30億円(現在価格で175兆円)という膨大なマスタープランをぶち上げた。議会の議論を経て5分の1に削減されたが、国民に対し、復興に必要な資金規模を訴えた。

今回は、5月初めに4兆円余りの第1次補正予算を決めた。財源は、年金積立基金の取り崩しで歳出の半分を超える2兆円余りを賄い、ODAも500億円削減した。日本に義援金や物的な支援を行ったアフリカの最貧国に対する日本政府の応えは、ODA削減であった。国際政治を全く理解できないリーダーを頂いている礼節の国日本の「大いなる恥」である。

インフレの種まく日銀引き受け

本格的な所得補償や復興のための財政手当ては、これから本格化する。しかし、その財源をめぐる議論はお粗末である。緊急時であるからといって国債の日銀引き受けで良しとする「愚かな」議論が支持されている。日銀引き受けへの依存は、国債の格付けを大きく低下させ、インフレの種をまくことになる。

大震災がない状態であっても現世代の負担増なくしては、日本の財政の持続性を担保することは不可能であった。こうした状況に加えて、膨大な復興資金を国債発行で賄い将来世代の負担に依存すべきではない。世代間の負担を真摯に考え、税収を専ら復興資金に充てることを明確にした特別消費税や資産課税の強化などを講じることにより、現世代の責任を将来世代の負担に押し付けてはいけない。

(5月8日 記す)  

成相 修

成相 修
Nariai Osamu

麗澤大学国際経済学部教授。1972年東大経卒。経済企画庁調査官、OECD(経済協力開発機構)エコノミスト、JICA(国際協力機構)専門家(ブルネイ国に派遣)等を経て現職。