「安全」の宣伝より具体的「再建策」を【福家 康宣・福島放送役員】

日中韓の3首脳がそろって福島の避難所を訪問し「安全」をアピールしても、地元には不安が残る。福島放送の福家氏は、地域が希望を見いだせる具体的な再建策を求める。

日中韓の3首脳がそろって福島の避難所を訪問し「安全」をアピールしても、地元には不安が残る。福島放送の福家氏は、地域が希望を見いだせる具体的な再建策を求める。

5月21日、日中韓首脳会談のため来日した温家宝・中国首相、李明博・韓国大統領が菅直人首相と福島県で合流し、東京電力福島第1原発周辺地域から追い立てられた人たちが暮らす避難所を訪問した。激励の声を掛け、3人並んで福島県産の野菜をかじって見せた。

このパフォーマンスについて同日付の朝日新聞夕刊は「(福島県の)安全を国内外にアピールし、風評被害を抑える狙いがある」と伝えていた。

佐藤雄平福島県知事も東京へ出ていくと、「福島は安全」を繰り返している。しかし、それを言葉通りに受け止めている人が果たしてどれくらいいるだろう。

全国が知っている福島の危機的状況

福島第1原発1~4号機が、病人に例えれば小康状態を保っているものの、今なお危機的状況にあることは東電の発表内容から国民みんなが分かっている。飯舘村など「計画的避難区域」に指定されたエリアの住人が、泣く泣く我が家と故郷を後にしている様子をテレビで見ている。放射性物質が多く降り積もったと見られる地区ではコメの作付けが禁止されたこと、野菜の一部は出荷が制限されていることを報道で知っている。

立ち入りが禁じられている「監視区域」から40㎞離れた福島市や郡山市などの小学校・中学校・幼稚園などで、校庭や運動場の放射線量の高さが子どもの健康に影響するのではないかということから、表土を削り取っていることも全国に知れ渡っている。

そして、これはちょっと想像すれば分かることだが、放射性物質が降るのは学校の運動場だけではない。家の屋根やビルの屋上、あるいは道路にも当然降る。それが雨に流されて集まっているのは雨どい、側溝。市民の多くは街中の放射線量の「高い」所を気にしながら生活している。

悪くはないが、夢を描くまでには至らない

日中韓3首脳そろっての野菜かじりは悪くない。しかし、やはり、ちょっと違うのではないか。「安全」を宣伝するより「どの程度のリスクなのか」を正確に伝えるべきではないか。福島県民に対しては、とりわけ原発周辺に住んでいたため家と仕事を失い、絶望の淵に立たされている人たちに対しては、生活再建の希望を見いだせる施策を提示すべきではないか。政府が5月17日に発表した「原発被災者支援の工程表」は一時帰宅、乗用車の区域外への持ち出し、被災住民の健康調査、土壌対策、東電による賠償金支払いの見通しなどが内容だ。悪くないが、生活再建の夢を描けるものではなかった。

政府は「工程表」の中で「今回の事故の被災者は(原子力政策という)国策の被害者だ」と言い切った。明快だ。枝野官房長官も記者会見で何度も「万全の」「きめ細かい」「住民本位の」対応策を「しっかりと」講じていくと約束している。頼もしい。ただ、それがなかなか具体的施策として示されない。苛立ちを覚える。

(5月21日 記す)

福家康宣
Fuke Yasunobu

1949年香川県生まれ。香川大経卒。74年朝日新聞社入社、鹿児島支局、那覇支局を経て東京本社政治部記者。大阪社会部デスクのとき阪神・淡路大震災を経験。西部本社編集局長のあと福島放送に移り、2009年6月から常務。