国益を失う愚行をやめるとき【成相 修・麗澤大学教授】

国内外における菅総理のリーダーとしての無能ぶりは、日本の国益を損なうことになる。国民はこの非常事態を冷静に判断すべきだと、著者は問いかける。

国内外における菅総理のリーダーとしての無能ぶりは、日本の国益を損なうことになる。国民はこの非常事態を冷静に判断すべきだと、著者は問いかける。

ドービルでのG8が終わった。菅総理は「福島に関しては、最大限の透明性をもってすべての情報を国際社会に提供する」と表明した。まさにこうしたタイミングのときに、国内では福島第一原発事故における1号機の初期の処理をめぐる指揮系統に関する官邸の指示と現場の判断との非整合性と情報の公開が一切なされていなかったことが明らかになった。

さらに、菅総理がG8で表明した「自然エネルギーの割合を2020年代の早い時期に20%超に引き上げる」という発言は、政府内部での議論も全くなされないままに、対外的な公約として宣言されたことが明らかになった。

G8のテーマは原発だけではない

これは政権の空洞化を示している。菅総理が、1000万戸の住宅に太陽光パネルを設置するという、実行性を伴わない具体的数値をサミットの場で表明したことも、日本に対する信用と信頼をますます失わせている。

今回のG8は原発のみが議題ではなく、世界経済に広がる不均衡問題に対する対応、中東の民主化の動きとそのエネルギーへの影響など、世界的規模の視点から日本の立場を表明すべきであった。菅総理は自分が主役と大きく誤解した。全く逆である。日本に対する不信感は増大した。

経済でも日本政府の対応は遅れている

国内では避難民の数が10万人から一向に減らない。大災害から3カ月が経とうとするにもかかわらず、生活が破壊されたままの人々が10万人以上もいることは、政権の対応の大きな失敗を示している。菅総理の口癖は「しっかりと」である。民主党内の反菅運動に対しても、党内を「しっかりと」収めるという。これは、全く意味のない、具体性もない表現である。一国のリーダーたるものが用いるべき言葉ではない。

菅政権は内外においてポピュリスト的な振舞いによって政権の延命を図っている。他方被災地の現場では、国の復興会議の空理空論に失望した首長や住民が、自治体のアイディアをもとに新たな生活の基盤や漁業の基盤の再生を急いでいる。現場における事態に対して敏感な対応に比較すると、国家が危機に対応する能力を失っていることがよくわかる。

菅総理は、EUとのFTAに前向きである姿勢を示したが、今後2~3年という猶予期間がつけられた。韓国とEUとのFTAは7月に実効される。日本の対応は余りにも遅れている。国益を損ない続ける政権と政治に対し、国民は厳しい評価を下すべきときに来ている。それを政治の不透明な舞台で片付けることは、許されない状況に来ている。

(5月29日 記す)

成相 修

成相 修
Nariai Osamu

麗澤大学国際経済学部教授。1972年東大経済学部卒業。経済企画庁調査官、OECD(経済協力開発機構)エコノミスト、JICA(国際協力機構)専門家(ブルネイ国に派遣)等を経て現職。