13年度から65歳までの雇用義務づけ

政治・外交

政府は開会中の通常国会に、13年度以降希望者全員を65歳まで雇うことを企業に義務づける高年齢者雇用安定法(高齢法)改正案を提出する。男性の厚生年金の支給開始年齢(現在60歳)が13年度から61歳に引き上げられる中、「60歳定年」の現状を放置すれば老後に無収入となる人が出てしまうからだ。

背景に厚生年金の支給開始年齢引き上げ

法改正の理由は主に2点。一つは現在、厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳へと段階的に引き上げられている途中で、男性は13年度に定額部分65歳、報酬比例部分61歳となることだ。8割強の企業は60歳定年。このままでは来年61歳となる人の中に、給与も年金もない人が生じてしまうという切迫した事情がある。

もう一つは高齢者を支える現役世代の減少だ。国の人口推計によると、2050年には65歳以上の高齢者が総人口の4割に達し、高齢者1人を支える働き手は10年の2.8人から1.3人に減る。政府は高齢者も一部は支える側に回ってもらわないと社会保障制度を維持できないと考えているのである。

本来「65歳までの雇用」は、06年施行の改正高齢法で実現するはずだった。それが想定通りに進まず、再改正を迫られている。

高齢者の雇用確保には①定年延長②定年廃止③定年後、非正規労働者などとして再雇用する「継続雇用制度」――がある。06年施行の高齢法では、いずれかの方法で希望者全員を65歳まで雇うことを義務づけた。すると8割の企業は③を選んだ。

しかし反発する企業に配慮し、継続雇用制度に、労使の合意があれば採否の判断基準を設けられるようにしたことが裏目に出た。多くの企業は「働く意欲がある」「勤務態度が良好」といったどうにでもとれる基準を作り、再雇用者を「選別」できるようにした。

その結果、基準にそぐわず不採用となる人が相次いだ。厚生労働省の11年調査によると、定年者の1.8%、約7600人に達する。大企業に限ると希望者全員の再雇用をしている社は21.6%にとどまる。そこで厚労省は再度高齢法を改正し、ようやく基準の設置規定を廃止することにしたのだ。

70歳「定年」も視野

とは言え、同法の再改正も弥縫策に過ぎない。世界最速級で進む少子高齢化を背景に、雇用、年金双方を所管する厚労省は年金支給開始年齢の68〜70歳への引き上げも視野に入れる。そのためには将来の「70歳までの雇用」が不可欠だ。それでも経済界は「年金政策の失敗を企業に押しつけるのか」(大手電機幹部)といった不満を募らせており、同省の思惑通り次のステップに進む保障はない。

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