欧州の選挙と日本の財政

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緊縮一辺倒の財政にノーを突きつける形となったフランスの大統領選挙とギリシャの総選挙の結果は、国内総生産(GDP)の200%を超す政府債務を抱えて、ようやく財政健全化に動きはじめていた日本にも微妙な影響を与えそうだ。

緊縮政策からの転換はあるのか

日本では民主党を中心とする連立政権が、現在は5%の消費税を2段階で引き上げて2015年10月に10%とする法案を国会に提出し、5月8日に審議に入った。積年の課題だった財政健全化へ野田首相の背中を押したのがギリシャをはじめとする欧州諸国の財政危機だった。

仏大統領にオランド氏=社会党から17年ぶり。サルコジ氏、再選ならず。(写真提供=AFP 時事)

しかし、フランスの大統領に当選したオランド氏は「雇用優先」を掲げてサルコジ政権の緊縮政策を批判し、ギリシャでも連立与党が過半数を割った。欧州連合(EU)も新たな成長戦略を検討する方向を打ち出して軌道を修正しつつある。

一方、民主党内では政治資金規正法違反で起訴されていた小沢一郎元代表が4月26日に一審で無罪判決を受け、停止されていた党員資格を回復した。小沢元代表は民主党内の消費増税反対派の中心人物であり、裁判の決着が控訴審に持ち込まれたとはいえ、小沢氏の復権で反対派が勢いづいている。

与党は参議院で少数派だけに法案の成立には野党の協力が欠かせない。民主党内で反対論が高まると、消費増税そのものでは意見を同じくする最大野党の自民党は政策協議に応じにくくなるとみられる。

しかも、フランスやギリシャの選挙結果を受けた債券市場や株式市場は、緊縮政策からの転換に否定的で、むしろ経済混乱の深刻化を懸念している。1990年代の日本の経験からみても、バブルがはじけてしまった経済を財政出動で成長軌道に戻すのは、成熟した先進国では容易なことではない。

EU経済混乱が導く円高

日本の輸出に占めるEUの比率は10%程度だが、日本の最大の輸出先である中国はEUへの輸出が20%を超す。落ち着きかけていた為替相場が再び円高に触れる兆しもあり、EU経済が混乱すれば、日本経済が受ける影響は大きい。

消費増税法案には、税率の引き上げは経済状況を好転させることを条件に実施するとの条項がある。「だから経済が後退する中で法案が成立しても問題がない」と冷静に言えなくもないが、政治的な感情は、景気が後退すれば法案成立に慎重になりやすい。

法案を取り巻く闇は濃さを増している。

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