新党勢の動向が「解散」に影響

政治・外交

くすぶる「選挙後大連立」

2012年後半、日本の政治は与野党が早期の衆院解散に備え、選挙後の政権の枠組みも意識しつつ主導権を競う展開となる。

二大政党の民主、自民両党は参院での多数確保を共通の課題としており、衆院選後の大連立も含めた協力を探る動きが底流にある。一方で橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会など新党勢が選挙で連携し対抗する可能性もある。「既成政党VS新党」の対決構図がどこまで強まるかが焦点だ。

野田佳彦首相が政治生命を懸ける消費増税関連法案は6月26日、衆院を通過した。これに反発した小沢一郎元代表らは集団離党し、国会議員49人が参加し新党「国民の生活が第一」を結成した。03年に合流した小沢氏がたもとを分かち、与党民主党は分裂した。

今国会の会期は9月8日までで、民主、自民両党はいずれも閉幕後に党首選を控えている。民主党と野党の自民、公明両党が合意した消費増税法案の審議が順調に進み参院で採決されれば可決、成立は確実だ。消費増税法が8月にも成立した場合、首相が党首選を待たずに自公両党が求める衆院解散に応じるかがポイントになる。

野党の内閣不信任案提出が分岐点

それ以前にも波乱要因はある。野党会派が手を組み51人以上となれば衆院への内閣不信任決議案提出が可能だ。決議案はすべての案件に先立ち採決され、可決されれば首相は衆院解散か退陣かの選択を迫られる。

小沢氏の新党や、みんなの党など野党勢が連携し内閣不信任決議案を増税法案成立前に衆院に提出する可能性はある。自民、公明両党が不信任に同調し、民主党議員から賛成に回る造反議員が15人程度あれば可決されかねないという際どい状況だ。首相が法案成立前に衆院解散を迫られたり、党内の造反を封じるために退陣せざるを得ないような厳しい展開すらあり得る。

こうした動向に影響を与えそうなのが新党勢だ。橋下市長率いる「大阪維新の会」は統治機構の改革などを掲げ、次期衆院選に候補を大量擁立する準備を進めている。石原慎太郎東京都知事らも新党で呼応する構えだ。

各種世論調査で維新の会は民主、自民両党を脅かす支持を得ており、小沢氏は新党勢力との連携に前向きだ。現時点で維新の会は慎重だが、仮に手を組めば小沢氏の新党や民主党の増税慎重派が勢いづくことは確実だ。

「既成政党」vs「新党」の構図も

野田首相にとって、厳しい綱渡りが続く。消費増税法を成立させ、代表再選を果たしたうえで来年1月までに衆院を解散し民意を問うのが基本戦略とみられる。だが、今年度予算の執行に必要な赤字国債を発行するための法案を今国会でまたも自民の協力を得て成立させなければならない。違憲状態にある衆院「1票の格差」是正に向けた立法措置など、難題は多い。

政権奪還を目指す自民党も9月総裁選を控え、状況は複雑だ。谷垣禎一総裁は今国会で野田内閣を衆院解散に追い込むことを目標とするが、道筋は描けていない。早期解散を主張する主戦派と長老勢を中心に秋以降の選挙を容認する意見に党内も分かれている。

いずれにしても、新党の脅威が強まるほど民主、自民両党が警戒し将来の大連立も含め接近しようとする力学が働く。次期衆院選をはさみ既成政党を巻き込んだ政界再編に波及する可能性がある。

一方で新党の勢いが限定的とみれば民主、自民両党ともそれぞれの政策の主体性を重んじる方向に回帰し、新党も含めた3極構造的な様相となる。次期衆院選は消費増税の是非はもとより、年金制度など社会保障制度の将来像、福島原発事故を受けたエネルギー政策、改憲問題も含めた統治機構のあり方などが主要争点となろう。

大阪維新の会 地方分権