消費増税決定、2014年4月から8%へ

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安倍晋三首相は10月1日、消費税率を2014年4月に現行5%から8%に引き上げることを表明した。同日発表された日銀企業短期経済観測調査(日銀短観)で企業の景況感が改善しているうえ、9月9日に発表された2013年4~6月期の国内総生産(GDP)第2次改定値が上方修正されるなど、経済指標が好転していることから、増税を最終決断した。

安倍首相は、消費税引き上げを表明した1日午後の政府・与党政策懇談会で「国の信任を維持し、持続可能な社会保障制度を次世代に引き渡すため判断した」と述べた。また、同日夕の記者会見では「経済再生と財政健全化は両立しうる。この2つを達成するにはこの道しかない」と語った。

安倍内閣が目指すデフレ脱却や経済再生に向けて、今回の消費税増税により、回復し始めた景気の腰折れを招く事態を回避するため、総額5兆円規模の経済対策の実施も表明した。対策には設備投資減税を含む1兆円規模の減税措置も盛り込む。

消費増税は橋本内閣以来、17年ぶり

わが国の消費税は、1989年4月、竹下登内閣で消費税法(税率3%)が施行されスタートした。1997年4月、橋本龍太郎内閣時に3%→5%へ引き上げられた。2014年4月から8%への引き上げは、それ以来17年ぶりとなる。

1997年の消費増税は、1990年代初頭のバブル崩壊後、国内景気が徐々に回復を見せていた時期に実施された。しかし、大手銀行や証券会社の経営破たんなども重なって景気が再び減速した。それだけに、来春の消費税率引き上げが、景気の腰折れをもたらさずに国の税収増につながるかどうかが注目される。

今回の消費税率の引き上げ決定は、野田佳彦内閣時代の2012年8月、「社会保障・税一体改革」関連法案が成立し、消費増税のスケジュールが決まったことに基づくもので、民主・自民・公明三党合意を踏まえたものだ。2014年4月に5%→8%へ3%引き上げた後、1年半後の2015年10月にさらに2%引き上げ8%→10%とする予定である。

実施の副作用より先延ばしのリスクを懸念

消費税増税法には、法律制定にあたって第18条の附則で「景気条項」が盛り込まれた。消費税増を判断する時点で、景気が目標の成長水準に達していない場合や増税により景気の腰折れが懸念される場合には増税を先送りできる――という主旨の条文だ。今年夏以降、同法第18条の附則に沿って「予定通り実施するか、先延ばしするか」の是非が問われた。

わが国の現状は、少子高齢化時代を迎え社会保障財源の確保や財政再建が喫緊の課題だ。特に、今年6月末で政府債務残高(国の借金)が1000兆円を超え、日本の財政赤字は危機的状態にある。消費増税の先延ばしを決めた場合、日本への失望感が海外で高まり、“日本売り”などが強まり、国債の暴落(金利上昇)などを招く恐れも指摘されていた。

景気回復がどの程度力強いのか、消費税引き上げで景気の腰折れはないのか。消費増税を先送りによるリスクはどうなのか――。この間、消費増税をめぐるさまざまな議論が展開された。有識者ら60人の意見を聞き取り調査では、「予定通り実施すべきだ」の声が多かった。他方、安倍首相の政策ブレーンである内閣官房参与の浜田宏一氏や本田悦朗氏らは「デフレ脱却の途上である現在、消費増税を実施すれば景気腰折れの懸念がある」として慎重論を述べた。

安倍首相は今回の経済対策で、低所得者への現金給付や中小企業への投資補助金などの諸対策を盛り込む。アベノミクスの推進で経済成長を図り、賃金上昇→消費拡大につなげようという一連の経済政策に、消費税増税がどう影響するのかという点が注目される。

(2013年10月1日 編集部記)

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