危機に瀕する太平洋クロマグロ

経済・ビジネス

寿司の主役といえばやはりマグロ。なかでも最高級とされるクロマグロ(本マグロ)は味も値段も別格だ。2013年初、東京・築地卸売市場で行われた新年恒例の初競りでは、青森県大間産のクロマグロ(222㎏)が史上最高値の1億5540万円で落札され、注目された。

マグロをめぐり世界的漁業規制の動き

そんな景気のいい話とは別に、マグロ類をめぐっては世界的な漁獲規制強化の動きが加速している。消費の増大に伴う各国の過剰な漁獲が原因で、資源枯渇の危機に直面しているためだ。

日本のマグロ消費量は世界一といわれるが、今やマグロはわが国だけの食材ではない。台湾や中国でもマグロは人気がある。この10年ほどは、中国・台湾以外でもマグロの需要が高まっており、需給関係は崩れている。

マグロ類には、獲れる海域や大きさなどによりクロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロなどの種類がある。このうち、全体的に資源状態が厳しいのがクロマグロとミナミマグロである。

2013年3月のワシントン条約締約国会議では、大西洋・地中海クロマグロの国際取引について全面禁止案が提出された。採決の結果、土壇場で否決されたが、可決されれば日本への影響も避けられなかった。

持続的な資源管理で問われる日本の役割

一方、福岡市で9月2~5日に開催された「中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)北小委員会」では、日本近海を含む北太平洋海域で獲れるクロマグロの資源管理策について協議した。会議には日本のほか、韓国、中国、米国、カナダ、フィリピン、台湾など9か国・地域が参加した。

その結果、過去最低水準に落ち込んでいる太平洋クロマグロについて、2014年の未成魚(3歳以下)漁獲量を2002年~2004年の平均より15%削減することで、参加国・地域が大筋合意した。この削減案は、ほぼ日本が提案した通りの内容だった。今年12月に開催されるWCPFC本委員会に勧告され、国際的な資源回復計画が2015年から実行される見通しだ。

北太平洋海域でのクロマグロの漁獲量の8割を日本が占めるが、クロマグロとして水揚げされるうちの98%は、卵を産むようになる前の3歳以下の子ども(メジマグロ)などが占める。メジマグロは、本マグロの刺身として店頭に並ぶが、このメジマグロもここ数年、減っているという。

こうした状況を踏まえ、日本はWCPFC北小委員会の場でも、沖合での巻き網漁(魚群の周囲に網をかけ、成魚も未成魚も一網打尽に獲る漁法)を対象にしてきた漁獲制限を沿岸漁業にも広げるなど、資源保護の強化に取り組む姿勢をアピールした。太平洋クロマグロを最も多く消費している日本は、引き続き漁業・資源管理に先導的な役割を果たすことが求められている。

水産庁も「メジマグロを控えて」と呼びかけ

こうした厳しい現状認識は、消費者にも求められている。水産庁の宮原正典次長は今年8月、漁業関係者らを集めた太平洋クロマグロの資源管理に関する全国会議で、「メジマグロを食べるのを控えてほしい」と異例の呼びかけを行った。ただ、回転寿司チェーンなどでは通常、メバチマグロやキハダマグロなどを使っているため、クロマグロの漁獲削減案が実施されても「大きな影響はない」とみられる。

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