国家安全保障会議(日本版NSC)が発足

政治・外交

日本の外交や安全保障に関する政策や国家戦略の司令塔となる国家安全保障会議の創設関連法が2013年11月27日、国会で成立した。同会議は、米国の国家安全保障会議(NSC: National Security Council)をモデルにしていることから、「日本版NSC」と呼ばれる。今後は、NSCが設置される首相官邸を中心に外交・安全保障に関する迅速な情報収集や重要な政策決定が行われることになり、日本の平和と安全を確保する上で大きな転換点となる。

同法の成立により、NSCが12月4日に発足するとともに、2014年1月には内閣官房にNSCの事務局である「国家安全保障局」が設置される。またNSCの発足を受け、政府は日本初となる「国家安全保障戦略」と新たな「防衛計画の大綱(防衛大綱)」の年内策定を目指している。

NSC創設は、安倍晋三首相が第1次内閣(2006年9月~2007年9月)で目指した課題だったが、同内閣では実現しなかった。2012年12月に第2次安倍内閣が発足すると、直後の2013年1月にアルジェリアで人質事件が発生し、邦人救出のための情報収集に手間取るなど、政府部内に機動的に対処方法を決定し、実行する体制がないことが浮き彫りになった。このため、安倍内閣は2月に「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」を立ち上げ、NSC設置のための作業を進めていた。

中核は「4大臣会合」、国家安全保障局は60人体制

NSCの中核となるのは首相、官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」で、副総理も交えて、原則として2週間に1回開催される。また、国民の生命、財産に関する事項では「緊急事態大臣会合」が開催され、基本的な対処方針を決定する。一方、自衛隊派遣が必要な場合には、文民統制を確保するために、4大臣のほか総務相、国土交通相らを交えた「9大臣会合」を開催し、対応策を決定する。

また、官邸主導による情報分析、情報収集管理などの能力を高めるために設置される「国家安全保障局」は、外務、防衛、警察など各省庁から派遣される約60人で構成され、「総括」「戦略」「情報」「同盟・友好国」「中国・北朝鮮」「その他地域」の6班態勢で運営される。初代局長には、元外務事務次官である谷内正太郎内閣官房参与が就任する見通しだ。

一方、首相のスタッフとして、国家安全保障担当の首相補佐官も設置され、磯崎陽輔首相補佐官が起用される見込み。

日本版NSCが十分機能するかどうかは、関係省庁の縦割り行政を排除して、首相官邸がいかに機動的に政策の方向性を決定できるかにかかっている。このため、国家安全保障局の情報収集・分析能力の向上が不可欠であり、設置法では、関係省庁によるNSCへの情報提供義務を明記した。

ただ、日本は米中央情報局(CIA)のように他省庁から独立した対外情報機関を持っていない。今回のNSC設置に向けた有識者会議では、対外情報機関設置を求める声があったが、見送られた。

他方で安倍内閣は、外国との情報交換は極めて重要で、そうした情報を国家安全保障局が一元管理することから、国会で審議中の「特定秘密保護法案」はNSC創設と一体の関係にあるとしている。

安倍晋三