月旅行から発信したいのは「世界の平和」:前沢友作ZOZO社長が記者会見

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世界初の民間人による月周回旅行への参加が決まった株式会社ZOZO(以下ZOZO)の創業社長、前沢友作氏(42)が10月9日、日本外国特派員協会(FCCJ、東京・千代田区)で記者会見し、「旅行中に平和の大切さを世界に向けて発信したい」と語った。

会見には内外メディアから100人以上が詰めかけた。「ディア・ムーン計画」と自ら名付けた芸術家帯同プロジェクトのほかにも、インドネシア地震被害への対応といったシリアスな内容からプロ野球球団経営の構想、交際中の女優との関係まで、会見時間は1時間以上に及んだ。

月だけでなく「丸い地球」が楽しみ

2023年に実施予定の宇宙旅行で前沢氏が楽しみにしているのは、月に近づくことだけではなく、船内から丸い地球を見ることだという。「写真でなく自分の目で見たらどれほど感動するのか、今から想像するだけで涙が出そうになる」と興奮気味に話した。

また、9月の発表で明らかにされた帯同する芸術家の詳細についてはミュージシャン、画家、映画監督、デザイナーの職種を挙げたものの、「全く決まっていない」とし、交際中の女優、剛力彩芽さん(26)の同行の可能性についても「何らかの役割があれば」と述べるにとどめた。自らの夢が世界平和であることから、「世界を何らかの形で、自分のクリエーションで良くしたい」という思いが強い人を選びたいという。

宇宙飛行前の訓練については、月周回旅行を提供する米国の宇宙開発ベンチャー企業スペースXから「そんなに過酷ではない」と聞いており、旅行の安全面についても同社のカリスマ経営者イーロン・マスク氏および彼の経営する会社に対する信頼を強調した。スペースXとの約束との理由で、旅行費用は明らかにしなかった。

にこやかに記者会見する前沢友作氏

パンクバンドのドラマーから富豪に

30代にして東証第1部上場の大企業を創り上げた前沢氏。その経歴は極めてユニークだ。渡米後、高校在学中から参加していたパンクバンドのドラマーを続けながら輸入レコード・CDの通販サイトを立ち上げ、98年5月にはZOZOの前身となる有限会社スタートトゥデイを設立。2001年にバンド活動を停止して経営に専念し、07年東証マザーズ市場で株式公開、5年後に第1部上場を果たす。この結果、日本でも有数の資産家となり、16年に米経済誌の「日本の富豪ランキング」で20位以内に入った(18年は18位)。

16年にモダンアートの作品を1億1000万ドルの高額で落札するなど、国際的なアートコレクターとしても知られる。また、剛力さんとの交際を自身のツィッターで明らかにするなど、私生活をオープンにする姿勢で注目を集めている。

記者の質問に答える前沢氏

マスク氏との関係構築で事業にもプラス?

国際的な起業家イーロン・マスク氏と肩を並べて宇宙旅行を発表した今回の姿も、自己主張を控えがちな日本人のイメージを覆す派手なアピールとなり、日本のみならず海外メディアも大きく報道した。


FCCJで上映された米国での発表時の動画 「#dearMoon」Project

今回の東京での会見では、自社ブランドの新システムZOZOSUIT(ゾゾスーツ)を利用した宇宙服のアイデアや、身に着けた自社ブランドの衣装、また「6時間労働制」の導入など、事業関連の話題も惜しみなく披露した。そのゾゾスーツを利用した宇宙服作成の提案はマスク氏から軽くかわされたようだが、宇宙開発だけでなく電気自動車(EV)の分野でも世界をリードするマスク氏との関係構築はZOZOの国際的知名度を高め、今後の事業展開にも有利に働きそうだ。

取材・文=ニッポンドットコム編集部

写真=ニッポンドットコム編集部(バナー写真除く)

バナー写真:FCCJで記者会見する前沢友作氏(2018年10月9日)= Yusaku Maezawa #dearMoon Press Conference@FCCJ

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