ニッポンドットコム「メディア塾」第3回:悩み、考えながら戦争の姿を伝える

社会

若いメディア志望者を育てる「メディア塾」(公益財団法人「ニッポンドットコム」主催)の第3回講座「戦争取材―イラク戦争に従軍して」が、10月23日に行われた。講師は元朝日新聞記者でジャーナリストの野嶋剛氏。講座終了の直後に、「内戦中のシリアで3年間、行方不明となっていたジャーナリストの安田純平さんが解放か」との情報が飛び込み、戦場における生々しい取材の模様を語る野嶋氏の講演は受講者にとって忘れられないものになった。

2001年のアフガン戦争と03年のイラク戦争を、新聞社の特派員として最前線で経験した野嶋氏。イラク戦争では米海兵隊に従軍した。講座は、大きな反響があった朝日新聞の記事「従軍取材、自問の日々」をもとに進められた。その一部を引用すると――。

従軍取材は行動を共にする軍に、自分の生死まで委ねる中で行われる。そこが、通常の取材と決定的に違う。(従軍から3週間たち)米軍は頼もしい味方だと感じ、困難な環境で、寝食を共にする兵士たちとの友情も芽生えている。日々、目の前で起きたことを、米軍に肩入れしていないか気にしながら日本に伝えるのが精いっぱいだ。でも、従軍取材に参加すべきでなかったとは全く思わない。

一生に一度あるかないかの従軍の現場で、私は悩み、考えながら、手探りでこの戦争の姿を伝えるしかない。(一部修整)

従軍記者は公平、客観報道のために必要であったが、最近はIS(イスラム国)などによる記者殺害の続発で報道各社が派遣を控えるようになり、その結果として「戦場報道のない、戦争報道」が行われている――。野嶋氏はこう解説した。

12月まで開講、受講料は無料

メディア塾は今後も半月ごとに、12月まで続く。今後のテーマは検察特捜事件(11月9日)、昭和最後の日の皇室取材(11月30日)、雑誌ジャーナリズム(12月14日)。

いずれも午後6時~8時まで。受講対象者は30歳代前半まで。無料。会場は東京・虎ノ門の「ニッポンドットコム」オフィス。

応募先、問い合わせは、mediajuku@nippon.com

バナー写真:ニッポンドットコム「メディア塾」で講義する野嶋剛氏=2018年10月23日、東京・虎ノ門

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