野田首相 民主党代表再選後の課題

政治・外交

9月21日、民主党代表選挙で野田佳彦首相が再選された。代表選後、野田首相は総選挙の時機をうかがいながら内外の政策課題に取り組まなくてはならない。

今回のコラムでは内政に焦点をあて、衆議院の解散時期と特例公債法案の成立の問題について述べる。

衆議院早期解散にブレーキをかける2つの理由

民主、自民、公明3党の党首は、8月8日の3党首会談において、社会保障と税の一体改革関連法案の成立後「近いうちに国民に信を問うこと」で合意、法律は8月10日に成立した。

だが、野田首相は早期の解散に消極的であろう。2つの理由がある。まず、内閣支持率と民主党支持率の低迷だ。9月1日、2日両日に共同通信が行った世論調査によれば、内閣支持率は26.3%にすぎない。民主党支持率は12.9%。一方、自民党は19.3%である。第2に現在の衆議院議員の定数配分が違憲状態にあること。民主、自民両党は定数是正のため衆議院の選挙制度改革案を提案しているが、議論は進んでいない。今後召集される臨時国会で直ちに改革法が成立しても、その後、新たな区割りを検討し、区割り法案を準備する必要がある。周知期間も考えると年内に解散することは難しい。

もっとも自民党は早期解散を求めており、9月26日の新総裁選出後もその要求は続くはずだ。ここで問題となるのは特例公債法案である。

本年度一般会計予算の歳入総額90兆3339億円のうち、38兆3350億円は特例公債(赤字国債)により賄われる予定である。特例公債発行のためには法律が必要である。しかし、自民党を中心とする野党の反対のため法案はこれまで成立していない。このため野田内閣は予算執行の抑制を始めた。だが、11月末までに特例公債が発行できなければ財源が枯渇する見込みである。

自民党は特例公債法の成立と引き換えに解散を求めるはずである。昨年も同法案は政権を揺さぶる材料として使われ、菅内閣はその成立を交換条件の1つとして退陣せざるを得なかった。

特例公債法案を政権攻撃の材料にするな

しかしながら、特例公債法案を政権攻撃の材料とすることは今後やめるべきだ。与野党は特例公債法案を安定的に成立させる方策をまとめるべきである。今後自民党が政権に復帰したとしても、国会の「ねじれ」は続く可能性が高い。特例公債法案の取り扱いに関する解決策で合意できなければ、今の政権と同じ立場に立たされることになる。

当面の解決策として与野党は補正予算の共同編成で合意すべきである。野党が特例公債法案に賛成しないのは、特例公債が財源となっている本年度予算案を支持していないからである。とするならば、野田内閣は予算案で野党、特に自民党がどうしても支持できないものについてあらためて意見を求めるべきであろう。その上で、執行していない分について補正予算を編成し本年度予算を修正するのと引き換えに特例公債法案の成立を図るべきである。

特例公債法案の成立が政治的に問題となる根本的な要因は、これまでわれわれが慣れ親しんできた予算審議のあり方がいびつなことにある。問題を解決するためには予算審議のコペルニクス的転回が必要で、これが恒久的解決策になるはずである。これについては次回のコラムで議論したい。

(2012年9月21日 記)

国会 民主党 自由民主党