侍ジャパンが3連覇へ始動

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日本独自の野球スタイルを生かせるか

国際大会では日本独自の野球スタイルをどれだけ生かして勝つかが最大の目標。日本球界の著名人、指導者たちからよく聞かれる言葉だ。

日本代表チームの山本浩二監督も、2013年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開幕に先立って同じ言葉を繰り返してきた。2013年の代表チームは日本のプロ野球でプレーする選手だけで構成されているから、山本監督にとっては目標を実践する絶好のチャンスといえそうだ。

侍ジャパンは3連覇に向けて3月2日から戦いを開始した。今回は大リーグでプレーする日本人スター選手たちが参加を辞退したため、大リーグ経験を持つメンバーは、以前ニューヨーク・メッツ、コロラド・ロッキーズ、ヒューストン・アストロズに在籍したことのある東北楽天ゴールデンイーグルスの松井稼頭央内野手しかいない。

大リーグでプレーする選手たちを見たいというファンもいれば、国内の新しい人材の台頭に期待するファンもいるが、今回のようなチームづくりは国内の若手選手にチャンスを与えることになる、と日本野球機構の加藤良三コミッショナーは語る。

2013WBC 第1ラウンドでブラジル、中国に連勝し、順調な滑り出しをみせる日本代表。(写真提供:AP/アフロ)

糸井外野手や若手成長株に注目

山本監督はまさにその期待に応えるかのように、若手の成長株中心の陣容に少数のベテラン選手を配するチームづくりを行った。

攻撃陣の主力のひとりはオリックス・バッファローズの糸井嘉男選手。才能に富むバッターであると同時に強肩の優れた外野手であり、日本最高のオールラウンドプレーヤーという評価もある。31歳の糸井選手は大リーグ移籍を視野に入れており、日本のプロ野球界における6シーズンの通算成績は打率3割2厘、ホームラン55本、245打点、117盗塁となっている。

読売ジャイアンツのキャプテンでセントラルリーグの昨季のMVPだった阿部慎之助や、同じくジャイアンツの長野久義、坂本勇人、福岡ソフトバンクホークスの内川聖一も頼りがいのあるプレーヤーだ。北海道日本ハムファイターズの主砲である中田翔も、パワーを買われて代表入りを勝ち取った。

オーストラリア代表チームのジョン・ディーブル監督は、日本代表との壮行試合の後にこう語っている。「糸井は非常にすばらしい選手。稲葉篤紀(ファイターズ)も、首位打者に輝いたこともある、抜群の巧打者だ。日本はきわめてバランスの取れたチームをつくり上げており、投手陣も優れている」

打撃よりも投手力が鍵

ただし、日本は打撃戦向きのチームではないから、スピードと頭脳的な走塁を生かして得点していく必要があるだろう。

「それは特徴というか、足を使った野球はこれからもやっていかないと。『この状況ならこうしないと』と各選手がわかっているので、動きやすい」と山本監督は語る。

投手陣を率いるのは楽天の剛速球投手、田中将大である。24歳、右投げの田中投手は、今回はダルビッシュ有を欠く日本チームのエースとして認められている。田中投手は150キロ近い速球を持つ一方、多種多様な変化球を投げることができる。プロ入り後6シーズンで通算75勝35敗、防御率2.50、1055奪三振の記録を持つ田中投手は、すでに大リーグからも注目される存在だ。

2011年に沢村賞を受賞した田中選手とともに投手陣を担うのは、やはり沢村賞受賞者のジャイアンツの杉内俊哉(2005年受賞、以下同)、西武ライオンズの涌井秀章(2009年)、広島カープの前田健太(2010年)、ソフトバンクの攝津正(2012年)などの精鋭たちだ。

不利なカウントでもひるまず変化球勝負

この大会は日本人投手に有利と考えられる。日本人投手はカウントが不利でもひるまずに変化球を投げ込んでくるため、日本のプロ野球に慣れたバッターでも時として手こずることがあるのだ。

「我々は2ストライク3ボールから10回くらい三振を取られたと思うが、決め球にストレートはひとつとして来なかった」とディーブル監督は2月23日の壮行試合で日本に敗れた後に語った。「打者に有利なカウントでストレートが投げられたことは一度もないと思う。田中の場合、0ストライク1ボールからのボールは必ずスライダーだったし、2ストライク3ボールからはスライダーかスプリットだった。能見篤史(阪神タイガース)も同じだし、杉内も同様。投手に不利なカウントでもストレートを投げた投手はひとりもいなかった」

2013年ワールド・ベースボール・クラシックの1次ラウンドは3月2日に福岡で開幕。日本はブラジル、中国、キューバと同じA組に入っている。日本は、東京で開催される2次ラウンド(3月8日~)、サンフランシスコで行われる準決勝、決勝(3月17日~)進出の有力候補とみなされており、3連覇に期待がかけられている。

(2013年3月5日、原文英語掲載)

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