日台交流の深化——地方議会レベルの横断組織、一方では課題も

政治・外交

日本と台湾では、地方の官民によるさまざまな交流が増えている。鉄道や温泉の姉妹提携をはじめ、高齢者団体、住民組織同士の交流もある。

これは、主に台湾側が仕掛けたものだ。2004年に台湾人の日本への観光ビザの免除以降、それまで東京、関西、北海道が主な立ち回り先であったのが、農村部を含む日本の各地が訪問対象となった。

筆者自身も10年前に台湾人の友人から、鳥取の三朝温泉がどのようなところかを聞かれて、困ったことがある。また、この6月にフェイスブックで北海道の釧路湿原を通過したときのことをアップしたところ、台湾人の友人から「そこへ行ったが、何もなかった」というコメントをもらった。

その後、11年の東日本大震災に対する台湾からの多額の義援金によって、日本社会でも台湾の「親日」と友情が強い印象を与えることになった。全国各地の自治体観光課を回ると、多くの自治体がインバウンドの筆頭対象として台湾人を挙げてくる。

日本の国土は実はかなり広く、日本人自身も津々浦々に行っているわけではない。だが、台湾人は普通の日本人が足を運ばないような所まで訪れていて、舌を巻くことが度々ある。

知人から聞いた話で、徳島県三好市の大歩危峡では、ある日本人商店主が、台湾人客があまりにも多いため、台湾語をマスターして接客しているとのことである。今や都会から遠く、鉄道もないような過疎地であっても、台湾人は最高のお客さんになっている。

日台交流サミット

こうした中、台湾との交流に取り組む地方議員が、横の連携と日台関係の深まりを目的として「日台交流サミット in 熊本」を、熊本市で8月23日に開いた。

同サミットは、1回目が「in 金沢」と題して2015年に金沢市、2回目が「in 和歌山」として16年に和歌山市で開催された。今回は16年4月の熊本地震の復興支援も兼ねて開かれた。参加者は、日台双方の地方議員をはじめ、開催地の行政、経済団体関係者らで、人数は3回とも350~400人で推移している。

今大会では、日台間で経済、観光、文化などの分野における官民交流を促進し、台湾の国際機関への貢献を支持する「熊本宣言」が採択され、4回目となる次回の開催都市は、台湾の高雄市に決まった。

大会の冒頭、謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表(駐日大使に相当)があいさつした。昨年、着任した翌日に、震災のつめ跡が生々しい熊本を訪問したことに触れ、今回、活力に満ちた熊本の市街地を目にして、県民の不屈の精神に尊敬の念を感じたと述べた。

サミット実行委員会委員長で熊本市の原口亮志市議は甲冑(かっちゅう)姿であいさつに立ち、地震発生時に台湾から慰問のメッセージや多額の義援金が寄せられたことに対して、台湾の人々の思いやりに感謝を示した。次回開催地となる高雄市の康裕成市議会議長は、日本側関係者の来訪を歓迎すると、日本語で述べた。

会場には、熊本県のPRキャラクターで、台湾でも人気がある「くまモン」も登場し、得意の体操を披露した。

観光にとどまらない幅広い交流

類似の日台地方交流の場として「日台観光サミット」がある。

全国および地方レベルの観光行政担当者の他、旅行、運輸、宿泊業関係者が集まって、08年から日本と台湾で毎年交互に開催されているもので、10回目の今年は6月に香川県と愛媛県の主催により四国各地で開かれている。

しかし、両者には違いがある。「観光サミット」は、観光誘致が唯一の目的であるのに対し、「交流サミット」のインバウンド促進はあくまでも数ある目的の一部であり、経済・文化も含めた幅広い都市間交流や相互理解・友好の深化が狙いだ。

主要構成員が地方議員であることにも、意味がある。地方議員は地方におけるさまざまな利害や意見を吸い上げ、調整する役割がある。それはまた、さまざまな階層、職業、地区の人たちと人脈があることでもある。現在のような情報化社会において、人と人とのつながりは、ますます重要になっている。

これまで地方議員の日台交流は、それぞれが住んでいる自治体や地方で完結したものが多かった。それでは視野が狭くなりがちで、他地域の例や知恵や情報を知ることは交流の幅や深度を広げることができる。

参加に地域差がある

とはいえ、「日台交流サミット」は3回目になって多くの課題を残したと言える。

第一に、次回開催地は今回の開催前に決めておく必要があったが、開催中に決まったことである。これは参加する議会の数が思ったほど増えないことを示している。今年出席した議員は、東は名古屋市止まりであった。前2回の開催でも参加者は関東が東限であり、東北や北海道からの参加はほとんどなく、西高東低となっている。

特に北海道の参加がないのがネックだ。年間50万人の台湾人観光客が訪れ、道内の経済の底支えをしていることから、道内21市町村に「日台親善協会」が設立され、台湾との関係を重視している地域である。しかし、筆者が6月に道内を回って日台親善協会関係者に接触したところ、日台交流サミットについてあまり情報が伝わっていないようだった。

第二に、日本にとって台湾は外交関係がない相手であるだけに、台湾との交流は議員にとって正式の業務にしにくいところも多い。

第三に、今回参加した議員の中にも、開催の意義が伝わっているとは言い難く、数多くある懇親会と考えている人もいた。

第四に、大会宣言に具体性がなかったことである。2回目の和歌山大会では、台湾の国際民間航空機関(ICAO)等の国際機関への有意義な参加を支持する宣言が発表されたように、具体的な国際機関の名前を挙げていた。しかし、今回は具体的な機関名を挙げず、「国際機関への貢献を支持」という概括的な宣言にとどまった。これは台湾側としては不満であろう。

もちろん外交問題は国の専権事項であり、地方議会レベルが容喙(ようかい)することが妥当かどうかの疑念が出たようである。とはいえ、国際的に承認された主権国家が加盟資格となる国連ならともかく、ICAOやWHO(世界保健機関)のように地方の民生にも直結する国際機関については主権問題とは関係なく、地方レベルで声を上げることは不思議でも何でもないはずである。

日台対等関係の交流を

この会に限らず、日台交流そのものに大きな課題がある。

筆者は1980年代から台湾研究を志してきた。そのころ台湾に関心を持つ日本人は一握りでしかなかった。それを考えれば、このような会が開催されること自体が大きな進歩であり、まさに隔世の感がある。

しかし、台湾人が日本を知っているほどには日本人は台湾を知らない(もちろん、台湾人も日本のことを大いに誤解している部分はあるのだが)。特に言語に関しては一方通行であり、日本語が使える台湾側の人材に頼り切っている観が否めない。そして日本は単一言語国家であることもあって、言語に対する感覚が鈍感なように思える。

例えば、台湾で事実上公用語となっている中国語は、中華人民共和国のそれとは発音や語彙(ごい)が違う。今回のサミットでも日本語と中国語の通訳や翻訳には中華人民共和国出身者がおり、語彙や表現などで違和感を覚えた。

しかも、台湾は多言語社会である。公用語は中国語ではあるが、中国語だけで事足りるわけではない。民間では台湾語が多く使われている。日本側議員のあいさつでは、中国語を数フレーズだけ織り交ぜる人はいたが、台湾語を使う人はいなかった。多くの台湾人にとって、台湾語をあいさつに使った方が反応は大きいはずである。

もちろん、日本と台湾では人口規模や国力の面で差があることは否定できない。それでも、日本側が台湾側の好意だけに甘えるのは、いかがなものだろうか?

少なくとも台湾側が用意する日本語や日本通の人材の10分の1でも、日本も用意するくらいの努力は必要だろう。

異文化社会どうしの交流は、なるべく対等、対称的に行われるのが望ましい。台湾が「親日的」なのは事実であるが、あまりにも台湾側の好意と用意だけに頼り切っていては、真の交流や信頼関係は育まれないのではないか、と危惧する。

バナー写真=日台交流サミットin熊本実行委員会提供

台湾 国際交流