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変貌する観光地・原宿

平野 久美子【Profile】

[2018.10.28]

間もなく姿を消すレトロ駅舎

秋の日差しに包まれた原宿には、今日も内外から大勢の人々が繰り出し、まるで縁日のようなにぎわいを見せている。この街は浅草や築地や渋谷と並んでトーキョー観光の人気スポットであり、トレンドの発信地だ。インスタ映えする写真を撮ろうと多くの人がスマートフォンのシャッターを押す中で、被写体として人気なのが最先端ファッションの街にたたずむ懐古調の駅舎である。

JR原宿駅。都内最古の木造駅は、1924年の竣工(しゅんこう)以来、その優雅な姿をとどめながら、変わりゆく街並みを長い間見つめてきた。明治神宮の緑を背に立つ2階立ての駅舎は、切り妻造りながら青灰色の銅板でふいた屋根と鐘楼のようなタワーを持ち、黒い梁(はり)や柱を白壁と半々に使うハーフ・ティンバー工法(注:ヨーロッパの建築技法。半木骨造)を用いている。そのため、駅舎はドイツやイギリスの古風な建物に見えて、道行く若者との対比が見事だ。インターネット交流サイト(SNS)のおかげで各国の観光客にも知れ渡り、原宿の名物になっている。

原宿駅(中村雪乃氏撮影)

ところが残念なことに、駅舎の解体が目の前に迫っている。保存を望む声が多く寄せられているけれど、どこへ、誰の費用負担で……ということについては、名案が出ないまま期限が迫ってきている。

1906年開業の原宿駅は、もともとは静かな小さな駅だった。09年に山手線の駅になり、20年に明治神宮が創建されると、参拝のための駅となる。そのため代々木寄りにあった駅舎を現在の位置に移し、しゃれた洋風の木造駅舎を建てたのだ。設計は、鎌倉駅のハーフ・ティンバー工法の施工監督も務めた、鉄道省技士の長谷川馨。若手を登用したのは、大正時代の自由な気風と理想主義が、鉄道省にも満ち満ちていたためと言われている。

ほぼ1世紀が経った現在の乗客数は1日平均7万人強。しかも、その7割が定期券を持たない利用者だというから、原宿の魅力がどれだけ多くの人を吸引しているか分かろうというものだ。

混雑を緩和するために、JR東日本はホームと線路をまたいで新たに駅舎を増設し、初詣の時だけ使う臨時ホームを山手線の外回り専用ホームとして改修、ここから竹下口へもアクセスできるようにした。さらに明治神宮側にも新たに改札口を設け、トイレの数を増やし、エレベーターも新設する。現在進行中のこの工事は、2020年の東京オリンピックを見据えたもので、付近の千駄ヶ谷駅、信濃町駅も、競技会場への最寄り駅として使われるために、大規模改修が進んでいる。

モダンな駅舎が完成すれば、格段に便利になり混雑は緩和されるだろうが、木造駅舎の風情は消え去ってしまう。東京駅のように、新旧両方の表情を上手にブレンドする案がなぜ採用されなかったのだろう。

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  • [2018.10.28]

ノンフィクション作家。出版社勤務を経て文筆活動開始。アジアンティー愛好家。2000年、『淡淡有情』で小学館ノンフィクション大賞受賞。アジア各国から題材を選ぶと共に、台湾の日本統治時代についても関心が高い。著書に『テレサ・テンが見た夢 華人歌星伝説』(筑摩書房)、『中国茶 風雅の裏側』(文春新書)、『トオサンの桜・散りゆく台湾の中の日本』(小学館)、『水の奇跡を呼んだ男』(産経新聞出版、農業農村工学会著作賞)など。

website:http://www.hilanokumiko.jp/

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