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徴用工訴訟の韓国最高裁判決:日韓関係への深刻な脅威

コーリー・エバンズ【Profile】

[2019.01.14]

日本と韓国の間で、世紀をまたいで繰り広げられている元徴用工をめぐる法的争い。両国の対立激化は、米国にとっての東アジア外交・安全保障体制を危うくしている。

韓国最高裁は2018年10月30日、新日鉄住金に対する第2次世界大戦中の強制労働訴訟で下級審の判決を支持した。この決定は、米国の緊密な同盟国である日本と韓国の関係に取り返しのつかないダメージを与える恐れがある。

日本は1910年から1945年まで朝鮮を占領した。植民地時代を通じて、日本企業は朝鮮人労働者を雇用した。これら労働者は規定通りに賃金が支払われると約束された。だが、賃金の一部は支払われなかった。とりわけ、日本政府が企業に対し、支払うべき賃金を中央の基金に拠出するよう命じた後はそうだった。

日本は1945年、連合軍に無条件降伏し、米国の占領下に入った。占領は1951年のサンフランシスコ平和条約をもって終わった。日本はそれ以来、米国との同盟を維持してきた。だが、日本と韓国の外交関係正常化には時間がかかった。それは一部には日本の占領に伴う未解決の諸問題のせいであり、一部には南北分断をもたらした朝鮮戦争のせいだった。

1965年の解決

両国は、1965年にようやく日韓基本条約を結び、外交関係を正常化させた。この条約は非常に複雑で、幅広い諸問題をカバーしている。長い間議論となった一つの争点が、韓国人元徴用工の未払い賃金問題だった。

韓国人労働者絡みの諸問題を解決することの重要性から、両国は条約とは別に日韓請求権・経済協力協定で合意した。

65年の同協定で、日本は韓国に3億ドルを支払うとともに、優遇融資2億ドルを提供することに同意した。これにはさまざまな目的があった。一つは、韓国人労働者の日本企業に対する未払い賃金請求権という未解決の問題を「完全かつ最終的に解決する」(第2条第1項)ことだった。双方は請求権に関してこれ以上、「いかなる主張も行わない」ことで合意した。

日本の外交当局は当初、労働者に直接補償することを申し出たが、韓国側は公共事業などのプロジェクトに使うため、労働者ではなく同国政府に支払うよう求めた。日本は期限通りに全額を支払った。

韓国政府は当初、労働者にその資金を全く分配しなかった。ただその後、1971年と1974年に、労働者に補償金を支払うための財団を設置した。にもかかわらず、多くの労働者は依然として、十分な支払いを受けていない。

法廷闘争

韓国人の元労働者4人が2001年、現新日鉄住金に対し、未払い賃金の賠償を求めて米カリフォルニア州で裁判を起こし、いわゆる新日鉄訴訟が始まった。裁判所は同年9月の「第2次世界大戦時の日本による強制労働訴訟」判決で、訴えを棄却し、1965年協定によって、いかなる未払い賃金請求権も最終的に解決済みであり、同協定は明確に、これら原告のいかなる訴訟も排除しているとの立場をとった。

カリフォルニアの裁判所の判断に納得しなかった原告は、東京で別の訴えを起こした。東京地裁は2003年、原告の主張を退け、1965年協定によって賠償請求権は消滅していると判断した。原告は再び納得せず、ソウル地裁で裁判を起こした。同地裁も2005年、原告敗訴の判決を言い渡した。原告はソウル高裁に控訴したが、高裁も地裁判決を支持した。高裁の判断は1965年協定を直接の根拠としており、原告は同協定を憲法違反と認めるよう求めて最高裁に上告した。

韓国最高裁は2012年、未払い賃金に関する個人の賠償請求権は1965年協定によって消滅していないという予想外の判決を言い渡した。最高裁は、日本はこれら労働者に救済の手を差し伸べるつもりなど初めからなかった、なぜなら、日本は朝鮮占領の不法性を認めていないからだと判断した。つまり、日本にはそもそも、占領がもたらした損害を賠償する意図などなかったというのである。

最高裁は裁判を高裁に差し戻し、高裁はそれを受け、原告勝利の判決を言い渡した。被告は最高裁に上告、最高裁は10月30日、下級審判決を支持した。最高裁は今回の判決で、たとえ1965年協定によって未払い賃金の請求権が消滅しているとしても、原告は強制動員被害への賠償を求める訴えを起こすことができると論じた。

差し押さえの可能性

法的観点からすると、韓国最高裁が展開した議論には明らかに誤りがあるようにみえる。原告がいかなる過ちも認めないまま、裁判で和解に応じるのは非常によくあることであり、実際、新日鉄自身、1997年に過ちを認めないまま、11家族に16万3000ドルを支払うという、拘束力のある示談に応じた。

1965年協定は日本と韓国の間の一つの契約である。もし、韓国が協定締結後、個々人に十分な補償をしなかったと元労働者が考えたのなら、彼らが訴えるべきは新日鉄ではなく、韓国政府のはずだ。一方、元労働者たちが強制動員について別に賠償請求権があると考えるなら、訴えるべきは日本政府であり、個々の企業ではないはずだ。

新日鉄訴訟の今回の判決は、同国の国際協定交渉能力に対する他の国々の信頼を損ねることになろう。もし自国に有利になるからといって、韓国が他の国々との拘束力を伴う契約を破るなら、他の国々が妥協したり、政治的に難しい選択をしたりする理由はなくなる。それに加え、新日鉄訴訟が判例となり、何百もの日本と米国の企業を相手取って、何千という訴訟が起こされるかもしれない。原告は新日鉄訴訟の判例の下、企業を訴え、勝訴することが可能になる。

これら原告は勝訴を受け、支払要求が可能となった。もし支払われなければ、裁判所に強制執行を要請し、裁判所は判決を履行するため、韓国にある財産を差し押さえることができる。韓国で事業を行っている日本と米国の企業は、新日鉄訴訟がもたらした法的リスクゆえに、差し押さえの対象となり得る財産を移転せざるを得なくなるかもしれない。そうなれば、日韓の市民社会同士の根本的結び付きを決定的に損ねることになろう。

二つの国の関係の将来を決めるのは結局のところ、個々の国民および政府同士の間の経済的、文化的結び付きである。日韓の互恵的経済パートナーシップをこれほど大きく危険にさらすことによって、新日鉄訴訟は東アジアにおける米国の同盟システムを取り返しのつかないほど引き裂いてしまう恐れがある。

原文は英語で、米ウェブサイトThe Epoch Timesに掲載された。バナー写真:新日鉄住金本社へ賠償金支払いの申し入れに向かう、元徴用工側の弁護士ら=2018年11月12日、東京・丸の内(時事)

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  • [2019.01.14]

米ニューヨーク市立大学バルーク校助教授。専門は日本法と東アジアの外交・国際関係。

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