順調な滑り出しの日ロ首脳会談

政治・外交

注目の日ロ首脳会談が始まった。予断は許さないが、筆者は「順調な滑り出し」とみる。2日間、両国トップによる膝詰めの話し合いで、どのような進展があるのだろうか。

山口県長門市で2016年12月15日18時すぎに始まった日ロ首脳会談は、約3時間の首脳会談を終えたところで、安倍晋三首相が短時間の記者会見を行った。

この記者会見の模様について、21時45分にNHKはこう伝えた。

安倍総理大臣は「プーチン大統領と3時間にわたって首脳会談を行った。地元の皆様が暖かく、よい雰囲気で首脳会談をできた。きょう行った少人数の会談では、2国間の問題、国際的な課題について、ロシアが建設的役割を果たす重要性、あるいは日本とロシアがともに取り組むことで、さまざまな問題を解決できるということについて話し合った」と述べました。その上で、安倍総理大臣は「本日は、これまでのソチ、ウラジオストク、そして、リマでの議論を踏まえて、元島民の故郷への自由訪問、そして、四島における日ロ両国の特別な制度の下での共同経済活動、そして平和条約の問題について、率直かつ非常に突っ込んだ議論を行うことができた」と述べました。安倍総理大臣は「2人だけの会談においては先般、お目にかかった元島民の皆様からお預かりした手紙を渡した。ロシア語で書かれていた手紙については、プーチン大統領はその場で読んでくれた。もう平均年齢が81歳になる。まさに時間がないという気持ちの元島民の皆様の思いを、しっかりと胸に刻んで会談を行った。議論は、きょうまた続き、あす、また東京に場を移して、引き続き議論を行っていく。そして、会談の結果については2人で明日、記者会見の場で報告したい」と述べました。

NHK NEWS WEBより

新たな突破口の可能性も

この報道から判断すると、会談は順調な滑り出しだ。なぜなら、安倍首相が述べた「元島民の故郷への自由訪問、そして、四島における日ロ両国の特別な制度の下での共同経済活動」は、いずれも日ロ双方の法的立場を毀損しない形で行われるものだからだ。

プーチン大統領としては、自由訪問、共同経済活動についてロシアの法的管轄に日本が明示的に服することを要求していない。もちろん、日本側も従来の北方四島への元島民らのビザなし訪問、北方四島周辺の安全操業協定のように、ロシアはあくまでも日本人がロシアの法令に従っているという説明が可能になるような配慮をしているということだ。今後協議で、北方領土の共同経済活動について、新たな突破口が開かれる可能性がある。

さらに興味深いのは、安倍首相がプーチン大統領に渡したロシア語で書かれた元島民からの手紙だ。この中に、元島民は、ロシアに対して強硬な態度は取らず、現実的な解決を望むことが示唆されていると筆者はみている。

安倍首相は会見終了後、プーチン大統領とのワーキング・ディナーに入った。この席でも北方領土問題の機微に触れる交渉が行われるであろう。

バナー写真:会談の冒頭に握手するロシアのウラジミール・プーチン大統領(左)と安倍晋三首相=2016年12月15日午後6時8分、山口県長門市の大谷山荘[代表撮影](時事)

安倍晋三 北方領土 日露関係 プーチン